第21話 地下牢
「レイス!起きて!レイス!」
城の地下にある監獄。フレイヤが目を覚ました時には、レイスとフレイヤはすでにその監獄の牢屋の一つに収監されていた。レイスの首には巨大な金属の首輪がはめられていて、さらに、両手も壁から伸びる鎖に縛られていて、完全に身動きが取れない状態になっている。
一方でフレイヤは、力をほとんど持っていなかったために、鎖付きの首輪をはめられるだけにとどまっていたため、牢屋内はある程度自由に移動することができるが、力がほとんど残っておらず、さらに、レイスからあまり離れることはできないため、フレイヤ一人にこの状況を打開するすべはない。
「レイス!ねえ!起きてったら!」
フレイヤはレイスに駆け寄って、何度も必死に呼びかけ、彼の頬をペチペチと叩くが、アンドリューに負わされたダメージが想像以上に大きかったため、一向に目を覚まさない。
「ああん!もう!どうしたらいいのよ!」
フレイヤはもどかしくて仕方がなかった。本来のフレイヤならばこんな牢屋など簡単に壊せるのだが、今は知っての通り力の大半をレイスに渡してしまっているため、レイスが目を覚まさない限り、今のフレイヤにはどうすることもできない。
(ハァ、、、もしかして、、、人選に失敗したかしら、、、)
ルイスに力を渡してまだ数日だが、フレイヤは早くもレイスに力を与えたことを後悔し始めていた。グレッグの話を聞いて、ミア達に連絡を取ったまではよかったのだが、そのあとほとんど無策で城に突っ込んだ挙句、あっけなく敗北して現在に至る。この経験からフレイヤはレイスに対して頼りなさを感じていた。
(そもそもあんな転移者の手下に負けてるようじゃ話にならないわよ、、、まぁ、私も一人じゃどうにもできないけどね、、、ハァ、、、これからどうすればいいのかしら、、、)
フレイヤは途方に暮れ、レイスの隣に座り込む。フレイヤは、傷だらけになったレイスの顔を見て、やるせない気持ちになった。
「無茶しないでって言ったのに、、、こんなにボロボロになって、、、バカ、、、」
「、、、すみません。フレイヤさん。しくじってしまいました、、、」
「キャアッ!レイスッ!?お、起きてたの!?」
突然レイスが口を開いて、それに驚いたフレイヤが飛び上がった。
「えぇ、、、ついさっき、、、」
「ケガは大丈夫!?痛くない!?」
先程、レイスに文句を言っていたのにも関わらず、本気で心配してレイスに詰めよった。
「少し、、、痛いですが、、、大丈夫です、、、」
「よ、よかった、、、」
フレイヤはホッとしたが、今の状況を思い出してすぐに再び落ち込んだ。
「でも、、、もう終わりよ、、、負けちゃって閉じ込められて、、、そのうち私たちは殺されちゃうんだわ、、、」
「そんなことにはなりませんよ、確かにさっきは俺はヘマしましたが、それはあいつらも同じです。あいつらはとんでもないヘマをやらかしたんですよ。」
落ち込むフレイヤとは対称的に、レイスは自信満々に言いはなった。
「ど、どういうこと、、、?」
「あいつらは、、、俺たちに止めを刺さなかったんですよ。それこそが最大の命取りです。ここから出て、奴らに目にものを見せてやりますよ。」
「レイス、、、ッ!」
フレイヤは、レイスの目に炎が宿っているのが見えた。彼の表情には、諦めの文字は全くなかった。客観的に見れば絶望的な状況。にも関わらず、レイスの顔はやる気に満ち溢れている。一体この自信と闘志はどこから来るのだろうとフレイヤは疑問に思った。
「で、でも、、、まずは鎖をどうにかしないと、、、」
「こんなもの、力ずくでどうにかなりますよ。フンンッ!!」
レイスは立ち上がって、手に巻き付けられている鎖を思い切り引っ張り、壁から引っこ抜こうとした。しかし、壁も鎖もびくともしなかった。
「クソッ。思ったよりも頑丈だな、、、っ」
「壁も鎖も、どうやら普通じゃないみたいね、、、チートスキルの影響を受けているのかしら、、、?」
「、、、チートスキルですか?」
フレイヤの言葉にレイスが反応した。
「ええ。なんとなくだけど、壁や鎖から僅かにチートスキルの力を感じるわ。鎖や壁、それに檻が異常なほど頑丈になってる。私が力を失ってない状態でも、全力で殴ってヒビをいれるのがやっとかも、、、」
「なるほどなるほど、、、そうですか、、、」
レイスはニヤリと笑うと、赤いオーラを身にまとい、両腕にガントレットを装着した姿となった。
「ぬううううっっ!!俄然やる気が出てきたあああっっ!!!」
レイスが力を込めて鎖を引っ張ると、くさりが繋がれていた壁にヒビが入っていく。
「レ、レイス!?どうしたの!?」
「おおおおおっっっ!!!例え相手が鎖や壁だろうが!「チートスキル」には絶対に負けん!!うりゃぁぁぁっっ!!!」
バゴォンッッ!!
巨大な音を立てて鎖が牢屋の壁から引っこ抜かれた。
「ハァ、、、ハァ、、、」
「や、やった!でも、鎖自体はどうしたらいいのかしら?」
グシャッ ブチッ
「あ、壊せた。」
「、、、え?」
フレイヤが言い終わるよりも先に、レイスは右手で左手首にはめられた手錠を握りつぶし、そのまま指の力だけでちぎった。右手首の手錠も同じように破壊し、レイスは首輪に手を掛けた。
「フウンッ!!」
ブチィンッッ!!
首輪は手錠の3倍以上の太さがあったが、レイスが力を込めて左右に引っ張ると、頑丈な首輪がまるでこねて伸ばしたパン生地のように呆気なく千切れた。
「なっ、、、なっ、、、」
呆気にとられているフレイヤをよそに、レイスは檻の前まで移動する。そして、
「フンッ!」
バギャンッ!!
檻を思い切り殴った。すると、檻は大きな音をたててグニャリと曲がり、吹き飛ばされて向かい側の牢屋の檻に激突した。すると、その向かいの檻までもが変形して吹き飛び、その牢屋の壁に激突する。
こうして、レイスは悠々と牢屋から出た。レイスが鎖を引っ張りはじめてから牢を脱出するまでにかかった時間、約1分。
「おお!気合い入れたら何とかなりましたね!」
「え、えぇ、、、そ、そうね、、、」
(えっ、、、?レイスってこんなにパワーがあったの、、、?)
牢を出てすぐの通路で無邪気に喜ぶレイスと対称的に、フレイヤはレイスのあまりにも無茶苦茶なパワーに若干引いていた。
「な、何の音だ!」
通路の曲がり角から、ガチャガチャと鎧の音をたてて、数人の兵士が現れた。油断しきっていたのか、レイスの牢屋には見張りの兵士1人いなかったが、先程彼が牢を破壊したことにより発生した轟音によって、兵士達は駆けつけた。
「何!?脱走だとっ!?」
「バカなっ!?鎖が外れてるし、檻も破壊されている!?」
「あ、ありえない!アンドリュー様の力が込められていたんだぞ!?」
兵士達は皆信じられないものを見ているかのような目をしている。レイスはそんな、怯えている兵士達に向かって歩いていく。
「カッコつけてドジった挙句捕まったけど、これから活躍して埋め合わせてやるよ。」
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