第18話 夜の城での戦い
「勢いよく飛び出してきたけどどうするのよレイス?」
走るレイスに並んで飛びながらフレイヤが聞いてきた。
「どうもこうもありませんよ。これから城に行ってジョナサンと騎士達をぶっ飛ばします!」
「計画はあるの!?」
「何もありません!!」
「考えなしに突っ込むの!?無謀すぎない!?」
「この街で犠牲者を増やさないためには、今行動するしかありませんよ!」
そうこう言っているうちに、2人は城のすぐ近くまで来ていた。城門には当然見張りの兵士が複数いる。2人は、彼らに見つからないように物陰に隠れた。
「、、、さすがにこのまま叫びながら正面突破するつもりはありません。こっそりと城に忍び込んで、まずは最高戦力と思われるジョナサンを倒します。それから、1人ずつチートスキル持ちの騎士を無力化していくつもりです。」
レイスは見張りの目を掻い潜ると、ジャンプして城の壁に張りついた。そして、開いている窓から城の中に入る。
(よし!侵入成功!)
それからもレイスは、音をたてずに、巡回する兵士の目を掻い潜って素早く城を移動していった。我ながら、自身のあまりに無駄のない動きに惚れ惚れした。
(ひょっとしたら俺、スパイの才能があるかもな。)
そう考えながら歩いていると、レイスはいつの間にか、一際立派な扉の前に来ていた。
「、、、ここが玉座の間かしら?」
「おそらくそうでしょう、入ります。」
レイスが扉を押すと、ギイッという重たい音を立てて扉が開いた。中は暗くてよく見えなかったが、わずかに見える範囲だけでも、そこがとても広く、また、豪華な装飾がほどこされた部屋だということが分かった。
「やっぱりここが玉座の間かしら?」
「うーん。多分そうだとは思いますけど、暗くてよく分からないですね。」
レイスとフレイヤが目を凝らした時、目の前から何かが高速で迫ってくるのを感じとった。
「危ない!!」
レイスは慌ててしゃがみこむ。すると、背後から壁に何かが当たったような音が聞こえた。振り返ると、通路の壁に光輝く剣が刺さっていた。
「おっと残念。外したか。」
暗闇から男の声が聞こえてきたかと思うと、突然パッと部屋が明るくなった。なんと、玉座の間には、複数の騎士が待ち構えていた。
「な、何だと!?」
レイスは思いもよらぬ待ち伏せに驚愕した。
「クックックッ。ようこそ我が城へ。」
レイスに歓迎の言葉を告げたのは、玉座に座る、一際立派な鎧を着た騎士の男。レイスは、その男の顔に見覚えがあった。
「アイツが、、、ジョナサンか。」
大きな傷がついた好戦的そうな顔。レイスは、彼がただ者ではない歴戦の猛者であることをすぐに感じとった。何より、
「俺の完璧な侵入を見破るなんてな。」
そう。ジョナサンはレイスの侵入を見破って、奇襲をかけたのだ。この事実から、ジョナサンは間違いなく他とはレベルが違うに違いないとレイスは思った。
「完璧な侵入だと、、、?クックックッ、、、ハッハッハッ!!!」
突然、ジョナサンは大声で笑い始めた。それにつられるように、彼の周りにいる騎士達も大声で笑い始めた。
「こいつは傑作だ!お前まさか、スパイ映画の主人公のように、誰にも見つからずにこの城に入ったつもりだったのか!?クフフフッ!なんてマヌケなやつなんだ!「防犯カメラ」があるんじゃないかと少しでも思わなかったのか!?」
ジョナサンの言葉を聞いてレイスは呆然とする。
「、、、、、、」
「バカバカッ!だから考えて行動しなさいって言ったのよ!大恥かいちゃったじゃない!」
レイスの隣では、フレイヤが顔を真っ赤にしてレイスを怒鳴っている。やがて、何かを思いついた様子で、レイスが口を開いた。
「、、、俺たちはコソコソ侵入だなんて卑怯な真似はしないぜ。」
「ん?何だって?」
「俺たちは「逃げも隠れも」せず「真正面」からテメェらを叩きのめしに来たんだ!」
レイスはジョナサンを指さし高らかに宣言する。ジョナサンからも、兵士達からも、フレイヤからも表情が消え、なんとも言えない空気が玉座の間に流れる。
「、、、まぁ、そういうことにしておくか、、、」
ジョナサンはそう呟くと、
「「真正面」から!「正々堂々」と!よくこの城に来たな!城の主として歓迎してやろう!」
少し気の毒に思い、ジョナサンはレイスの言葉に合わせることにした。
「さて、お客人に自己紹介をするべきだな。俺は宇宙統一帝国治安維持局第35警備隊隊長、ジョナサン・ブレイド。以後、お見知りおきを。」
ジョナサンは自己紹介を終えると、玉座から立ち上がり、レイスの方へ歩いていく。
「聞くまでもないかもしれんが、ここに来た目的はなんだ?」
「あんたらを倒す。そしてこの街を解放する。」
「ふん。やはりな。ではさっさと始めるとしようか。」
そう言って、ジョナサンが右腕を挙げると、彼の周りに10本の光の剣が現れた。
「っ!」
「さぁ、、、いくぞ!」
ジョナサンが右腕を前に突き出したのと同時に、光の剣が高速でレイスに向かっていった。レイスは飛んできた10本のうち4本を避け、残りの6本を拳で叩き落とした。叩き落とした剣は、煙のように消えた。
(避けられないスピードでも、壊せない固さでもない。いける!)
光の剣が攻略可能なことが分かったレイスは、構えをとる。
「ほう、、、やはりこの程度ならばなんなく凌げるか、、、ならば、これはどうかな?」
ジョナサンは楽しげに両手を広げた。すると、50本を超える光の剣が現れて、レイスに矛先を向ける。
「おいおい、、、っ いきなり増えすぎじゃないか、、、?」
「さぁ踊れ!そらそらぁ!!」
ジョナサンが手を前に突きだし、大量の光の剣を差し向ける。
「ちっ!うおりゃぁぁぁっっ!!」
レイスは拳の連撃で剣を次々と叩き落としていく。しかし、
ブシュッ!
「ッッ!」
レイスの拳の表面が切られ、彼の手から血が吹き出る。
「、、、、、、」
「クックックッ、静かになったな。さっきの威勢はどうしたんだ?ほらっ!次々いくぞぉ!」
再びジョナサンは大量の剣を出現させ、レイスに向けて飛ばす。
「うおおおおおっっ!!」
レイスは拳を強く握りしめて、光の剣の嵐にラッシュで対抗していく。しかし、
「これで終わりだと思うなよ!」
ジョナサンはオーケストラの指揮者のように手を動かす。すると、次から次へと光の剣が生み出され、レイスに向かっていく。
「くそっ!」
剣を捌ききれないと判断したレイスは、剣を落とすのではなく避ける方にシフトした。玉座の間を駆け回り、紙一重で光の剣をかわしていく。
「くそっ!厄介なスキルだ!」
「いいえレイス。違うわ。」
レイスが逃げながらこぼした言葉をフレイヤは即座に否定した。
「違うって何がですかっ!?」
「あの光の剣はただの「魔法」。アイツのチートスキルは別にあるわ。」
「えっ!?」
レイスはてっきり光の剣がジョナサンのチートスキルの正体だと思っていたため、フレイヤの言葉に動揺してしまい、わずかに動きが鈍ってしまった。
「ヤ、ヤバイッ!」
気づいた時には光の剣がすぐそこまで迫ってきていた。レイスは体をよじってなんとか躱そうとするが、光の剣はわずかに彼の肩をかすめ、彼の肩から血が噴き出す。
「くっ!」
(大丈夫だ。傷は浅い。)
「身軽なやつだな。だが、逃げてるだけじゃどうにもならんぞ?俺のチートスキルは「長期戦」で真価を発揮するのだからな!!」
(長期戦で、、、?1体どんなチートスキルだ?)
レイスが考えていると、またしてもジョナサンの周りに大量の剣が出現し、レイスに狙いを定める。
「考えてても仕方ないか。確かに、逃げてばっかりじゃどうにもならないしな。」
そう言うと、レイスは覚悟を決めて、ジョナサンに向かって走っていった。
「向かってくるだと!?ヤケになったのか!?」
ジョナサンは嘲りの笑顔を浮かべて剣を飛ばす。レイスは反復横跳びの要領で左に跳んで剣を躱すと、
ズドドドドッ
「オラオラオラァァッッ!!」
なんと壁に足をつけてそのまま走り始めた。ジョナサンは壁に向けて光の剣を飛ばすが、レイスの足が速すぎて壁にしか当たらない
そして、ジョナサンの真横までくると、レイスは壁を蹴って一気にジョナサンに迫る。
「バカがっ!くし刺しだ!」
ジョナサンは自身に迫ってくるレイスに剣を飛ばした。しかし、
「ぬおおおおっ!」
レイスは驚異的な反射神経で、空中で身をよじって、剣の直撃を避けた。何本かは彼の体をかすめ、彼の体から血が流れたが、それだけではレイスの勢いは落ちなかった。
「な、何っ!?」
レイスの動きを見て、ジョナサンは初めて動揺した表情を見せた。
「勝った!終わりだ!」
レイスは勝利を確信し、拳をジョナサンの顔面に向けて突きだそうとした。その時、
「ぬおりゃぁぁぁっっ!!」
ドゴォッ!!
「ぐふっ!?」
巨漢の騎士が、レイスとジョナサンの間に割って入り、レイスの首に強烈なラリアットを食らわせた。レイスはなす術もなく吹き飛ばされ、壁に激突して倒れた。
「ガ、ガハッ、、、!」
「レイス!大丈夫!?しっかりして!」
レイスの体から出てきたフレイヤが慌ててレイスに声をかけるが、今のレイスにはそれに答える余裕はない。
(あ、あいつ、、、なんてパワーだ。)
レイスは巨漢の男の凄まじいパワーに驚愕した。これほどのダメージを受けたのは、かつてコウガの取り巻きのタマの攻撃を受けたとき以来であった。
「いやぁ、危なかったな。ジョナサン隊長。」
「余計なことをしてくれるな、アンドリュー。」
巨漢の男、アンドリューは指をならしながらジョナサンに軽い口調で話しかける。対して、ジョナサンは悪態をつきながらも内心安堵していた。2人が親密な関係であることは容易に想像できる。
「グッ、、、ハァ、、、ハァ、、、」
レイスは、なんとか立ち上がるが、もはや彼にはパンチを放つ体力が残っていなかった。
(し、しまった、、、油断した、、、まともに攻撃を食らってしまうとは、、、)
「アンドリューの攻撃で即死しないだなんてタフなやつだな。ちょうどよかった。」
ジョナサンは光の剣を2本飛ばすと、レイスの両肩を貫き、彼を壁に張りつけた。
「ギャァァァッッ!!!」
「レイス!」
フレイヤはレイスに刺さった剣を抜こうとするが、幽霊になってしまったフレイヤは剣に触ることができなかった。
「お前にはまだ聞きたいことがあったんだ。とりあえず、牢屋に連行することにするよ。アンドリュー。レイスくんに強めの麻酔をかけてくれ。」
「オーケー。隊長。」
アンドリューはズンズンとレイスに歩み寄る。
「か、彼に近づかないで!ファイヤボール!」
フレイヤはレイスを守るためにアンドリューに魔法を放ったが、その魔法はアンドリューに片手で握りつぶされてしまった。
「邪魔だぞ、女。」
バキッ
「キャアッ!」
フレイヤはアンドリューに殴られ、そのまま床に崩れ落ちた。そして、意識を失ったフレイヤは、自然とレイスの体内に戻った。
「フ、、、フレイヤ、、、さん、、、」
「それじゃあ、少し眠りな。」
アンドリューは大きく振りかぶって、レイスの顔面に強烈なパンチを浴びせる。そして、レイスの意識もその瞬間になくなった。
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今回は主人公の敗北イベントでした。近いうちに続きを出します。




