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第11話 ミケーアの鬼神父

レイスとフレイヤは森を移動しながら今後について話し合う。


「それにしても、仲間を探すと言ってもどうすればいいんでしょうか?」

「神には人間とは明らかに異なる「神の気」があるわ。私がそれを探るからあなたが「神の気」がある場所に行ってちょうだい。」

「ですが、いくら融合で身体能力が上がったとはいえ、このとんでもなく広い場所を徒歩で探し回るのは無理がありませんか?」


レイスの身体能力は融合によって飛躍的に上がり、新幹線以上のスピードで走ることが可能になったわけだが、それでも世界を回るのには足りない。


「当然よ。だから、まずはアルフガンドの都市の1つ、ミケーアに乗り物を調達しに行くわ。」

「乗り物、、、ですか?」

「えぇ。この帝国では、転移者の1人が作った乗り物や武具が出回っているの。「チートスキル」を使って作られただけあって、それらの性能は当然、従来のものとは比べ物にならないわ。そして、その中でも特に性能がいいものを持ってるのは当然、」

「転移者、もしくはその手下。」

「その通りよ。奴らには、互いに連絡をとるための移動手段が必要だから、多分「瞬間移動」が可能な乗り物を与えられているわ。そして、都市ミケーアを支配しているのは転移者の息のかかった者。そいつらからその移動手段を頂けば、移動は格段に楽になるって訳よ。」

「なるほど。そうすれば、神の力に目覚めた人間も探しやすいですね。」

「そういうこと、、、、、、?」


話の途中で、フレイヤは突然黙り込み、何かを考え込むような表情をする。


「どうしました?フレイヤさん。」


レイスが聞くと、フレイヤは目的地である都市ミケーアを指差した。


「あっちの方向から、、、神の気を感じる。」

「ほ、本当ですか!?」

「すぐに向かって!!」

「はい!!」


レイスはフレイヤが指差した方向に走り出した。





場面は変わり、ここは都市ミケーア。かつてアルフガンドに存在していた国の1つ、ミケーア王国の首都だった街である。しかし、転移者によるアルフガンド統一を期にミケーアの王族は王権を失い1帝国民となった。さらに王国の首都だったこの街は、「アルフガンド州」の都市の1つとなった。


このミケーアでも、転移者へ忠誠を誓うことは、住民に強制されている。もしも転移者の悪口を言って、それを巡回している兵士に聞かれようものならば、直ちに捕まり、「病院」に連行されて「治療」を受けさせられる。

また、ミケーアには巨大な教会が区画ごとに設置され、子供達はそこに通うことを義務化されている。

この教会で教わることは、神や道徳のことではない。世界の主である「転移者」についてのことだ。教会では、ひたすらに、転移者がいかに素晴らしいのかということを学ぶ。これはミケーアに限った話ではなく、「宇宙統一帝国」の一部となったあらゆる世界で、似たようなことが行われている。そうすることで転移者は、自身の信奉者を増やしていっているのである。


そんなミケーアの教会の中の1つ、南教会。そこの神父は、ミケーアの神父の中でも有名な人物であった。教会の祈りの間では、今日も神父による子供達への授業が行われていた。


「さぁ、、、もう一度、、、最初から読みなさい、、、」


神父は自身の目の前に座る怯えた表情の少年に促した。


「は、はい、、、! えっと、、、転移者様は、偉大で、麗しく、、、」

「違うっ!!!」

ビシッ


神父は激昂すると、右手に持っていたら馬をしつけるための鞭を少年の頭に振り下ろした。


「うぅっ!!」

「何度言えば分かる!!「偉大で、強く、麗しい。」だ!!教科書の一番最初のページも暗記できないなどっ、転移者様への忠誠が足りんっ!!」


神父は怒鳴りながら何度も何度も少年に鞭を振り下ろす。


ビシッ ビシッ ビシッ

「指導っ! 指導っ! 指導っ!」


神父による暴行の光景を、彼らの後ろに座る子供達は怯えた様子で見ている。

神父の名はグレッグ。この25歳の若き神父は、ミケーアで随一の、転移者の狂信者として知られていた。その忠誠心の高さから、グレッグは転移者の配下の騎士達からも高く評価されており、彼には自身の教会の周囲を始めとした、複数の区の教育権、警察権、裁判権を持つことが認められていた。

彼は、転移者に少しでも反抗的な者には一切容赦がなかった。転移者の悪口を言う、教科書の暗記に失敗する、そのような者達に対しては、グレッグの鞭が猛威をふるった。

一方で、彼は騎士達とは異なり、異端者を処刑しようとはしなかった。それは、彼には、


「人には必ず転移者様の素晴らしさに気づくことができる可能性があるのだから、処刑することで、人々が転移者様の熱心な信奉者となる可能性を閉ざすことは、転移者様のためにも避けるべきである」


という考えがあったためであった。そのため、彼はもっぱら異端者には体罰で臨んだ。その狂信ぶりを街の人達は騎士以上に恐れ、影ではグレッグを「鬼神父」と呼んでいた。


「やめろっ!」


グレッグが折檻をしていたまさにその時、教会の扉が勢いよく開けられ、1人の女性が入ってきた。女性は薄い青色の美しく長い髪と青い目をしていて、白銀の清潔感のある鎧を身にまとった、神聖さすら感じさせる見た目であり、「姫騎士」という表現が見事に当てはまる美しさであった。


「おや、、、またあなたですか、、、」


グレッグは鞭を振るう手を止め、呆れたようにため息を吐きながら呟く。女性はツカツカと歩き、子供を庇うように、グレッグと子供の間に割って入った。


「私の目が黒いうちは、このような蛮行は断じて許さんぞ!!」

「ミア、、、私の邪魔をしないでもらえますか?私は教育者。私には子供達に教えを授ける義務があります。」


ミアと呼ばれた女性は、腰に差した剣を引き抜くと、グレッグに突きつけた。


「転移者を褒め称えさせる文を無理やり読ませることの何が教育だ!!」


グレッグは両手を上げるが、その表情には驚きや恐怖はない。子供のわがままに呆れる親のような目をしていた。


「全く、、、あなたはいつも一筋縄じゃいきませんねぇ、、、はっきり言って理解できませんよ。どうしてあなたはいつも反抗的なのですか?転移者様の偉大さを理解しようとしないのですか?」

「もういい!貴様とは話にならん!みんな帰るよ!」


ミアは鞭で叩かれてうずくまっていた少年を背負うと、子供達に教会を出るよう促す。ミアが教会を出る直前、グレッグはミアに大声で呼び掛けた。


「私があなたを生かしているのは、あなたが私にとっての「試練」だと思っているからです。あなたを何がなんでも改心させることが私の「使命」だと。」

「、、、何が言いたい。」

「つまり、私がその気になれば兵に命令するなりしてあなたを消すことなど容易いということです。」

「そう言えば私が怖じ気づくとでも?舐められたものだな。私には「覚悟」と「信念」があるんだ。考えることをやめたお前達と違ってな。」


ミアはきっぱりと言うと、子供達と共に教会を出ていった。


「「覚悟」と「信念」、、、」


1人教会に残された神父グレッグはボソリと呟いた。

読んでくださりありがとうございます。ここから、第2章の開幕です。

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