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第10話 旅立ち

イーバーンとの激闘の翌日、レイスは旅仕度をしていた。


「それで、、、どうして生きているんですか?フレイヤ様。」


レイスがそう言うと、彼の目の前に突然フレイヤが現れた。彼女は幽霊のようにフヨフヨと浮いていた。


「あら?力を渡したら死ぬだなんて一言も言ってないわよ?」

「それ以前に剣で刺されてたじゃないですか。」

「一応神様だから普通の人間よりは生命力があるのよ。それに傷はあなたと融合したことであなたの体の傷と一緒に治ったわ。けど、、、」


フレイヤは自身の体を見回す。


「融合で「私」という存在の大半をあなたに渡しちゃったから、私はどうやら実体を失った幽霊みたいになっちゃったようね。この幽霊の姿でもあなたからはあまり離れられないようだし、実体を取り戻すまで回復するのには時間もかかりそうだわ。」


彼女はガックリと肩を落とす。どうやらフレイヤは、人間と融合すればどうなるのか、詳しい所までは知らなかったようだった。


「、、、それにしても、目が覚めたら急に目の前にあなたがいるもんですから、驚きすぎて死ぬかと思いましたよ。」

「驚いたのはこっちよ!私は力を使い果たしてあなたの中で休んでいたの。それで気づいた時にはあなたがイーバーンを倒しちゃってるんだもの。、、、でも、これでハッキリしたわ。」


フレイヤはレイスの顔を指差す。


「あなたの力は奴らに通用するわ!間違いなくね!」

「ほ、本当ですか!?」

「本当よ。」

「これから転移者達の元に乗り込みますか?」

「甘い!!いくらなんでも今行ったところで確実に殺されるわ!!まずはもっともっと強くならないと!!」


フレイヤはレイスに説明を始めた。


「いい?私と融合したことであなたが得た力は、「成長限界突破」。これからあなたはトレーニングや実戦を積めば積むほど強くなっていくわ。あなたがやるべきなのは、強いやつと戦っていくことよ!」

「強いやつ、、、ですか?」

「今は世界の各地でイーバーンみたいな、転移者に特殊な力を与えられた奴らが暴れているわ。当面の目標はそいつらを潰すことよ。そうすればあなたも強くなれるし、苦しめられている人々も救えるし一石二鳥よ。」

「世界の各地、、、そういえば、転移者の元に行くには次元を移動する能力が必要でしたっけ。一体どうやるんですか?」

「あぁ。あれは嘘よ。」


フレイヤが普通に告げた言葉に、レイスは驚愕した。


「う、嘘ッ!?」

「ごめんなさい。あの時はどうしてもあなたに融合をしてもらいたかったから嘘をついたの。正確には、前は必要だったけど今はもう必要じゃないわ。」

「今は必要ないとは?」

「転移者が作った「宇宙統一帝国」の話は覚えてるかしら?」

「はい。転移者が神を倒したあと、たくさんの時空を侵略して、巨大な帝国を作ったんでしたっけ?」


レイスの答えを聞いて頷いた後、フレイヤは真剣な顔をして、説明を始めた。


「、、、あの話には続きがあるわ。「宇宙統一」、あいつらはその言葉をそのまま実行したのよ。あいつらは、数多の宇宙を「1つ」にしたの。」

「ど、どういうことですか!?」

「言葉の通りよ。転移者の中に「時空を操る」能力を持った奴がいるらしいの。そいつがその力を使って、征服した時空の「土地」、「海」、「空」、「宇宙」、それら全てを、奴らの本拠地である「宇宙の中心地」にくっつけたのよ。」

「????」


レイスはよく理解できなかった。


「分からない?無理ないわ。私だって最初は理解できなかったもの。もっと分かりやすく言うと、転移者は無限を超えた数の元々あった宇宙を「1つの宇宙」、もっと言えば「1つの大陸」にしようとしているの。既に奴らにくっつけられた宇宙は1億や2億じゃきかないわ。この「世界」は、現在進行形で大きくなり続けているの。ちなみに、このアルフガンドも既にやられたわ。アルフガンドは今や、転移者が作った「超巨大な大陸」の一部なのよ。」

「そ、そんなムチャクチャな、、、」


あまりのスケールの大きさに、レイスは脳がショートしてしまいそうになる。


「そうね。本当にムチャクチャよ。あなたが戦おうとしているのはそんなムチャクチャな奴らよ。」

「、、、、、、」


にわかには信じられなかった。宇宙そのものを自由に操れる人間がいることなど。しかし、フレイヤがわざわざ2回も騙そうとしてくるとは思えなかった。

恐らくは真実なのだろうとレイスは思った。レイスはこれからそんなとんでもない能力を持った存在に戦いを挑むのだ。そう思うと、自然とレイスの体が震えた。


「怖いのね、、、無理もないわ。」


フレイヤは宥めるように声をかけるが、レイスは恐れてなどいなかった。彼の顔には獰猛な笑みが浮かんでいた。


(そうか、、、転移者はそんなに強力な力を持ってるのか、、、!)

「レ、レイス、、、?」


フレイヤが心配そうに声をかけ、その声でレイスは我にかえった。


「す、すみませんフレイヤ様。」

「だ、大丈夫?えっと、、、怖くないの?」

「怖い、、、?えぇ、正直言って少し怖いです。でも、それ以上に楽しみです。」

「楽しみ、、、?」

「はい。そんなに強力な力を持っているということは、コウガは、、、転移者達はさぞかし有頂天になっていることでしょう。そんな奴らの顔に一発ぶちこんでやる瞬間が今から楽しみでなりませんよ、、、!!」


レイスは12年前の屈辱を、コウガの何もかもを見下したような態度や表情を1日たりとも忘れたことがない。あのコウガを地獄の底に叩き落とすためだけに、レイスは今日まで生きてきた。

レイスの狂気的な顔を見て、フレイヤはわずかに怯えの表情を見せる。


「そ、それと、、、あなたがもう1つやるべきなのは、、、」


気まずくなったフレイヤは話題を変えた。


「仲間を見つけることよ。」

「仲間?」

「えぇ。この世界には、あなたと私のように、融合した人間と神がいるはず。その人達を見つければ、きっと心強い戦力になってくれるはずだわ。」

「なるほど、、、ひとまずやるべきなのは転移者の取り巻きを倒すこと、それと、ともに戦ってくれる仲間を見つけることですね。

それでは出発しましょうか。」

「あ!待って!レイス!」


レイスが歩きだそうとしたとき、フレイヤが彼を呼び止める。


「どうかしましたか?」

「あのね、、、1つだけ約束してほしいの。絶対に、無茶して死んだりしないで。あなたは私が命を預けるに値すると判断した、ただ1人の人間なんだからね。」


その言葉を聞いて、レイスはハッとした。これは自分のためだけの戦いではない。自分に全てを託してくれたフレイヤ、そして、転移者に理不尽に殺された全ての人達のための戦いであるということに、レイスは気づいた。


「、、、はい!絶対に2人で生きて、奴らを倒しましょう!」


レイスの言葉を聞いて、フレイヤは安心した表情をする。


「フフッ その意気よ!まぁ安心しなさい!なんたってこの「武神フレイヤ様」がついているんですもの!そうそう負けることなんてないわ!それに霊体でもある程度魔法は使えるから、いざとなったら援護もしてあげる!」


フレイヤは自信満々に宣言した。


「ハハハッ 期待していますよフレイヤ様。」

「あっ。それと、「様」付けはもうしなくてもいいわよ。あなたと私は一心同体だし、私の力を得た以上、あなたも半分神様みたいなものだからね。」

「分かりました。フレイヤさん。」

「それじゃあ張り切っていくわよ!ゴーゴーゴーッッ!!」


こうして、一心同体となった人間と神の旅が始まった。彼らの戦いは、想像を絶する熾烈なものとなるのだが、この時の彼らはまだしるよしもない。

読んでくださりありがとうございます。

ひとまず第一章は終わりです。

「宇宙統一帝国」などの設定が分かりにくかったと思いますので、後日より詳しく記載した用語集を投稿する予定です。よろしければ見ていただきたいです。

最後に、ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。

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