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封印の伝え  作者: RR
4/6

初めての戦闘

それから数か月俺とベクトは木刀での訓練を続けていた。

そしてある日の訓練の途中

「ベクト、レント君お前たちだいぶ筋が良くなってきたから一度魔物との実戦をしてみないか?」

とベクトの父であるガロさんに声をかけられた。

「俺はまだ早いと思います」

俺は即答した。なにせ前世では何も残せず死んでいるのだ。

本来ないはずのもう一度人生をやり直すというチャンスをもらったからには大切にしたい。

しかし

「私はもう戦えると思う!」

とベクトが言い放った。続けて

「レントも大丈夫だよお父さんたちもついてきてくれるし、レントも一緒に行こ」

「ベクト、俺たちがある程度戦闘ができるようになったからといっても魔物は危険な相手だ、もう少し大きくなるまで待ったほうがいい」

「えーとりあえず一回行ってみようよ、危なくなったらお父さんが絶対助けてくれるから」

(そうだったこのくらいの年の子供は聞き分けがないんだった。)

「レント、大丈夫だベクトが言うように危なくなったらいつでも助けるよ。それにいくら訓練を積んでも、いざ実戦になれば戦えないやつは五万といる、それなりに戦いに慣れておくことも必要だ。」

「...わかりました。でも森の外側の安全なところだけにしましょう」

ちなみに子供を村の外に連れ出し、戦わせるということでうちの両親にも確認が入ったのだが、

「もちろん大丈夫だ!ガロ、しっかりレントに戦いの何たるかを教えてやってくれ!」

と父親が言ったために引くに引けなくなってしまったのだ。

こうして俺は生まれて初めて故郷であるフレヤ村を出ることになったのだ。

子供二人に対して大人が一人だと危ないという点からベクトの母親のニナさんまで一緒についてきてくれた。当たり前だが龍人であるベクトの両親はどちらも龍人だ。

この二人は村に来た頃から人族しかおらず、魔物の被害を防ぎきれなかった自警団に変わって、村を魔族から守れるほどに魔物との戦闘に慣れている。

(まあこれなら俺がどれだけ戦えなくても死にはしないだろう)

俺がそんなことを考えながら歩いていると、ガロが口を開いた。

「二人とも。魔物との戦闘の基本を教えよう。魔物を殺すのに狙うべき場所は対人戦とほとんど変わらない。首を落とすか、胸を貫く。他にも体を両断するなども有効だ。そして、向こうも我々のどこを狙えば殺せるか程度は理解している。しかし、奴らに知性はなく我々のことを本能で殺しに来るため、動き方は単調で読みやすい。だから常に落ち着いて冷静に対処するんだ。」

「わかったわ!お父さん」

「わかりました。ガロさん」

「危なくなったらどんな時も助けてあげるから、安心して戦いなさい」

ニナのそんな言葉を聞きながら歩いていると森に到着した。

すると突然。

「二人とも正面の林からきているぞ!」

その一声で俺とベクトは同時にガロさんから借りた、剣を抜く。

次の瞬間目の前の林を突き破って二体のゴブリンが現れた。

(マジで魔物が出てきやがった)

そう思った瞬間。

「ガアア」

と叫んだゴブリンが俺に向かってとびかかり、鋭い爪を俺に向かって振るってきていた。

(やばい!!!)

そう思い咄嗟に剣で爪を受け流す。周囲に金属を引っ掻く嫌な音が鳴り響く。

そして俺は慌てて後ろに飛び跳ねて、一度ゴブリンの攻撃範囲から離れる。

ちらりとベクトのほうに目をやると、すでにゴブリンの首を切り落としていた。

(すげえ)

そう思いながらゴブリンに目線を戻すと、ゴブリンが今度は両手の爪で俺の顔を切り裂こうと突進をしてきているところだった。

(奴の突進を交わしてがら空きになった首を落とす)

そう思い、俺とゴブリンの体が触れそうになった瞬間に俺はサイドステップを踏んだ。

いける。殺せる。奴の背後に回り込みがら空きになった首を切り落とそうと思い剣を上段に構え、

振り下ろそうとした。

しかし俺は剣を振り下ろせなかった。

そう、わかってはいたのだ。この場所に来る前から、俺には前世の記憶があり、倫理や道徳の概念は前世のままだ。そして前世の俺の記憶はこの体が生き物を殺すことを拒否している。

つまりは、そうだ。俺はこの目の前にいるゴブリンを殺せない。

そう悟った瞬間に、鮮血が散る。

俺の胸は振り返ったゴブリンが振るった爪に切り裂かれていた。

(次は首を狙われる!)

俺はそう思い恐怖のあまり膝をついてしまった。

次の瞬間、ゴブリンの首がストンと落ちた。

「レント君、動きは良かったがなぜ最後剣を振るわなかった?」

とガロに言われた。

「あ...ごめんなさい。生き物を殺すと思うとそれが怖くて」

心臓が高鳴り、息も絶え絶えにそういうと。

「ふむ..そうか。」

そう呟いてガロは膝をついて俺と目線を合わせてこう言った。

「いいかレント君その心は立派だし、そうあることは否定はしない。だがこれから先魔物との戦いになることは増えていく。その時に同じことを言っても助けてくれる人はいないかもしれない。だから今の内に”生き物”を殺すことに慣れるんだ」

「まあまあ良いじゃない。初めての魔物との実戦で腰が抜けて動けなくなる人もいるのだから、動けただけ十分よ」

とニナが言う。

「そうよ、動き自体はすっごく良かったし。まあでも初めての実戦での成果は私の勝ちだよ。レント」

そういうベクトに対して

「そうだね、ベクト」

俺はまだ動悸が収まらず、震えた声でこういうしかなかった。

(想像していたよりも生き物を殺すというのはハードルが高いことだ。)

今も血が流れている自分の傷跡を見ながらそう思っているとニナが俺に近づいてきて、俺の胸の傷跡に手を触れて

「とりあえず傷だけ治しましょう。{ヒーリング}」

ニナがそう唱えた瞬間、俺の胸元が淡く光り、しばらくすると血は止まって痛みも引いていた。

(この世界にも治癒魔術はあるんだな)

そう思い立ち上がると。

「どうするレント君?一度村に戻り、日を改めてからもう一度魔物と戦ってみてもいいと思うよ」

とガロに言われた。

正直もうこのまま家に帰ってしまいたい。

しかし先ほどガロに言われた通り、俺はこの世界で生きていかなければいけないのだ。

そしてそのためにはやはり、自分を守る力が必要なのである。俺の答えは決まっていた。

「もう一度戦わせてください。次こそはうまくやって見せます。」

するとガロは満足そうに頷いた。

それから数時間魔物との戦闘を繰り返したが、俺は魔物を殺せなかった。

それでも成長はあった。遭遇した魔物のほとんどは最初と同じ、ゴブリンだったが、襲い掛かってくるゴブリンを切り裂き、攻撃を与えることはできた。しかしゴブリンの命を絶つような攻撃をすることはできなかった。

しかし、どれだけ戦っても俺の臆病なところは治らなかった。そして

「レント君、ベクト暗くなってきた。一度村に帰ろう」

ガロのその一声で俺達は村に戻った。


リアルが忙しく続きを書くのが遅れてしまいました。申し訳ないです。

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