異世界の現状
この世界に来て6年が経過した。俺は前世の6歳児とは全く違う方向に成長をしていた。
それは6歳にして平気で木刀を持ち、そして当たり前のように同年代の女の子と打ち合い稽古をしていることだ。前世ではこんなこと考えられない。しかしこの世界ではそれが普通なのだ、それもそうなのかもしれない、今は村にいるから安全だが一歩村の外の森にでも出歩けば平気で魔物が出てくるような世界なのだ。奴らは人間を本能で殺しに来る、どんなに幼い子供でも自衛の術が必要なのだ。
しかしなぜこんなに物騒な世の中になっているのか、これには理由がある。人類と魔物そしてそれを率いる魔族で約1000年間ずっと戦争をしているのだ。もともと人類の敵は魔物だけだった。魔物との戦争は人類創世の時代である2万年前からずっと続いているのだ。その戦争は人類が比較的優勢であり、力は人類よりも強いが、本能のままに人を殺そうとする魔物と知性があり戦略を立てながら戦う人類とでは戦いになるはずもない。しかし、魔物は今でも発生のメカニズムがわからないらしく、人族がするような出産をすることによる繁殖の形態は見られなかった。そしてある時期を境に魔物の中のいくつかが知性を持ち、人類の真似をしだしたのだ。最初は石を投げて戦うことや木の棒で武装する程度であった。だがその後には知性を持つ魔物を指揮官とし、戦略をもって戦い初め、それらが進化することで魔族になったというのが現在の魔族のルーツだ。前世の記憶を持っていている俺からするとそれは進化論に反していると考えたのだが、魔族には繁殖能力がみられたらしい。つまるところは遠い昔に生まれた魔族が少しづつ繁殖をすることで現代の魔族が生まれたということだ。そして魔族は昔の習性からか魔物を操ることができ、人類に対して本能から殺意を抱いている。そしてその魔族との戦争が本格的に始まったのが1000年前ということだ。魔物に比べて数が少ないが知性を付け一人一人の力が強くなった魔族が戦争に加わったことにより反転して人類は圧倒的に不利になり、最も危険だった時には人類の領域は現在の3分の一にまで押し込まれてしまったらしい。しかし400年前に人族に生まれた勇者が魔族のトップである魔神アドラフを打ち取り、奪われた土地を奪還したことにより両陣営の領域の間では小競り合いが続いているが魔族は魔物をけしかけてくるだけになったほどここ数百年は戦況が落ち着いてきているらしい。だが依然として魔物は俺たちを殺しに来るし、魔族の一部には魔神が打ち取られる前から生きているものもいるらしくそいつらはたまに人類の領域に来ては甚大な被害を出している、魔族は数が少ない代わりに長命らしい。ちなみに人類には人族以外にエルフやベクトのような龍人、それに精霊が含まれている。ちなみに魔族と人類との線引きは先の戦争において、どちら側についたかどうかである。現在まで人類が生き残り続けているのは人族の力というよりも他の種族の力によるものが大きい。しかしほかの種族はほとんどが長命種であり数が少なく現在では力を恐れた一部というには数が多すぎる人族から差別されているという。人族は短命なせいで人類が滅びかけていた時代を経験したものがいないためにありがたみが薄れているのだ。
なんてひどい話だ。結局いつの時代もいつの世も大きすぎる力は恐れられるのだろうか。
そんなことを考えながら家につけばちょうど昼飯の時間であった。
「レント今日はベクトに一本くらい入れられたのか?」
「無理に決まってるよ父さん、ベクトは龍人で俺よりも肉体の能力が高いんだ」
「でも同い年で同じ武器を使って人族のレントがベクトちゃんと戦えてるのは凄いことね」
「ベクトには剣術の才能があるのかもな~トリス。やはりレントの将来は剣士だな」
ここまでの人族の特性を踏まえると今の俺とベクトの戦闘はおかしい。普通人族と龍人が戦えば打ち合いにすらならない。仮に打ち合っても剣と剣が重なった瞬間に人族が吹き飛ばされて終わりだ。
ベクトは6歳とはいえすでに人間の成人男性と同じくらいの力があるし、そんな奴と普通に戦えている現状は異常といってもいいほどである。だからかベクトはずっと俺としか剣術の稽古をしない、ほかにも村のほかの奴は差別とかの問題もあるのかもしれない。
「でもレント、戦闘では勝てなくてもベクトちゃんがいじめを受けていたら必ずあなたが助けてあげるのよ」
「そうだぞ。お前がベクトに勝てずとも彼女に対する差別にお前は勝てるからな」
「わかってるよ父さん、母さん」
ベクトとは4歳から稽古をずっと一緒にしているし、教えてもらっていることもある。それに向こうの親とも家族ぐるみでの付き合いなのだ、あいつが困っていたら必ず助けになろうと俺は思っている。
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