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ブクマして下さった方、評価して下さった方、良いね押して下さった方、本当にありがとうございます!
めっちゃ感謝です!!
そして初めて感想もらえました!
しかも一番欲しかった言葉を頂けたので超うれしかったです!(≧▽≦)
読んで下さってありがとうございます!
本日はニ話目投稿です。もう一話は零時に投稿します!
◆雁野家 父視点
「お父さん、お母さん、見て! 今日はこんなに売れたの!」
そう言って嬉しそうに今日のポーションの売り上げを見せてくれる娘の来紅。可愛い。
「本当だ。今日はたくさん売れたね。いつも助かるよ」
娘は可愛い、そして天才だ。昔から物覚えがいいと思っていたが、自作のポーションまで作れるようになった。
売れるようなポーションが作れるようになるには数年掛かると言われるが、それを一月でものにした。おまけに、そのポーションを売って稼いだ金で家計まで支えてくれる。本当に良くできた娘だ。ああ可愛い。
「あなた。顔がだらしないわよ」
妻に文句を言われる。
「そんなに、だらしなかっただろうか?」
「ええ」「うん」
二人、同時に言う。娘にまで言われてしまうと辛い。しかし、これではいかん。いつか来る娘に付き纏う悪い虫を効率的に追い払うため、威厳を保たなくては。「娘さんを下さい」などと言ってみろ。元冒険者である私の全てを賭して、後悔させてやる。
「お母さん。お父さんがまた、一人で百面相してるよ」
「ほっときなさい。またバカなこと考えてるんでしょ」
「でも私、また友達関係に口出されるの嫌だよ」
「……、それもそうね。お母さんが釘刺しておくわ」
何やら小声の会話が聞こえると思えば、妻と娘が何やら深刻そうな顔で話混んでいる。
どうしたのだろう? はっ! まさか男に付き纏われているのか!?
許せん。うちの娘が可愛いくて優しいからと、ふざけたマネをしおって。どこだ!? そいつぶっ殺してやる!
しかし、内心ではどう思おうと口に出してしまえば娘を余計に不安がらせるかもしれない上、私の威厳も消えてしまうだろう。
それは駄目だ。故に私は冷静に世話話をする程度の穏やかな口調で告げる。
「来紅よ。何か悩みでもあるのか? そう、例えば悪い男に付き纏われてるとか。何でも言いなさい、お父さんが助けてやるぞ」
「釘を刺す暇すら無かったわ……」
妻が呆れた顔をして、娘は諦めたような顔をしている。何故だ、威厳を保ちつつ娘を気遣う父性に溢れた素晴らしい言葉だったと言うのに。だが娘よ、そんな顔もプリティーだぞ!
「あのね、あなた。いい加減、娘の交友関係に口出すのはやめなさい。みっともないわよ」
「そうだよ、お父さん。私、もう十六歳だよ。来月には学園に入学だってするんだから心配しないで」
「やめる訳が無いだろう。娘を守るのは親の務めだ! だいたい、私は学園に行かせるのだって反対なんだ。それも『ダンジョン学園』なんて。お前の身に何かあったらどうする。男は獣なんだぞ」
娘から『国立 ダンジョン学園』に行きたいと言われたとき、入学が決まった時、そして今回とで三度目の話だが、どうしても納得出来ない。何故わざわざ危険な学園に行こうとするのか。過去二回は「冒険者だったお父さんに憧れて」と言われ、嬉しさのあまり許してしまったが今度という今度は断固反対だ。
「はあ、また始まったわ。この人の病気が……」
「お父さん、何度も言ったでしょ。私、将来は冒険者になりたいの! いい加減にしてよ!」
珍しい娘の強い言葉に気圧されるが、引く訳にはいかない。なぜなら入学まで時間が無いのだから。
『国立 ダンジョン学園』は全寮制だ。入学したが最後、娘とは簡単に会えなくなってしまう。それは、とても耐えられる事ではない。
「いくら、お前の頼みと言えどダメなものはダメだ!今から他の学校を探しなさい。お父さんも手伝ってあげるから」
「あなた、それは流石に無茶よ」
妻はそう言うが世の中、不可能なことなど極一部だ。このくらい、やってやれないことは無いだろう。それに、いざとなれば私が娘を養えばいいのだからな。はっはっはっ!
「娘に家計を助けられてる親のセリフじゃないでしょうに」
「むっ」
妻に痛いところを突かれた。思わず呻いてしまう。しかし、知った事ではない。私は娘のためならば鬼にも悪魔にもなって金を稼いでみせよう。
「う、うるさい! 兎に角ダメなものはダメなんだ!!」
言い切ってから、私は気づく。先程から愛しの娘がしゃべっていないことに。
娘を見れば、涙を堪えながら私を睨んでいた。これはまずいと思った私は「すまない」「言い過ぎたな」と言おうとしたが、もう遅かった。
「お父さんなんて大っ嫌い!!」
とうとう娘は持っていた売り上げを床に叩き付け、涙を流しながら走り出してしまう。
兎に角、引き止めて話し合わ無ければと思い必死に声を掛けた。
「待ってくれ来紅! らいくぅぅぅっ!!!」
しかし私の言葉は届かず、娘は家から出て行ってしまった。
娘が家出をしたことなんて、今まで一度も無かった。ましてや「大っ嫌い」と言われるなんて考えた事も無かった。
慌てている私の思考は纏まらない。妻に縋り付き、どうすればいいのか問うも、「自分で考えなさい」と、切り捨てられてしまう。
ああ、娘よ。いつも聡明な君が、どうして分かってくれないのだ。
そう悲嘆に暮れるも、現実は無情だ。私は娘に出ていかれ、妻にも突き放された。
だから私は妻に言われた通り、考えることにした。あの時、どうすればよかったのか、今後どうすれば娘と仲直りをして、娘を『正しく』『幸せな』道へと歩かせる事が出来るのかを。
全ては娘のために。全力で。
そこで、ふと邪な思考が脳裏をよぎる。
「来紅を世界で一番『理解』しているのは私だ。そして来紅を世界で一番『幸せ』に出来るのも私。それなら、いっそのこと……」
いっそのこと、私だけの『物』にすればいいのでは?
ハッとして、それまでの思考を打ち切る。これ以上、考えてはいけない。私は何を考えていたのだ。
そして私は「追い詰められて我ながら、おかしな事を考えたな」と自己完結した。
心の中では『物』なる事こそが娘の『幸せ』であり『正しい』姿なのだと訴える自分を考えないようにして。
「ふぅ」
こういう時は、これ以上考えても良案は浮かばない。取り敢えず、一旦落ち着こう。そう思って深呼吸をし、娘を探し出すため、娘の行きそうな場所を考える事にした。
そうだ最初から、こうすれば良かったのだ。
やっと、まともな思考を取り戻した私は、さっきまでの思考を振り払うように娘の行き先を考える事に没頭した。
そして、だからこそ私は最後まで気づけなかった。
自分の隣にいる妻が先程、来紅が出て行った玄関の扉へ嫉妬と憎悪の混ざった視線を向けていることに。
『冒険者についての説明』
冒険者とは国が管理しているダンジョンに潜り、倒したモンスターの素材や手に入れたアイテムを売って生計を立てる職業です。
本来は、冒険者にならなければダンジョンには入れないのですが主人公は隠しダンジョンの存在を誰にも言わずにこっそり入りました。バレたら打ち首です。
読んで下さってありがとうございました!零時にもう一話投稿するので、そちらも是非、読んでみて下さい!