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 初のヒロイン登場です!!よろしくおねがいします!


 そして読んで下さってありがとうございます!

 ダンジョンからの帰り道。


 俺の足取りは、とても重かった。


 理由は言うまでもない。『始祖(しそ)の心臓』を食べたからだ。


 別に毒があったとか初代勇者に倒された吸血鬼の意思に乗っ取られそうだとか、そんな理由ではない。


 単純に動いてる心臓をそのまま食べたことがトラウマになっているだけだ。


口に入れた時のヌメリとした感触、噛んだ時の歯応え、咀嚼(そしゃく)中も若干動いていたこと、全て思い出したくもない。


 

「当たり前かもしれないけどメンタルダメージはHP自然回復じゃあ回復しないのか」



 『病みラビ』にはHP自然回復という特性を持つキャラが稀にいる。この特性はゲームでは戦闘中に一ターン最大HPの○%回復というものだったのだが、現実となった今では十秒毎に最大HPの○%回復となった。ぶっ壊れである。


 そして俺はこのHP自然回復を『不死の残滓(ざんし)』のおかげで手に入れた。しかも最大HPの三十%も回復する超優秀なやつをだ。おまけにスキル効果がこれだけじゃないってんだからトラウマを背負ったかいもあるってものである。まあ、しばらく肉は食いたくないが。はぁ……


 

「あの、大丈夫ですか? 顔が真っ青ですよ」



 ため息をつきながら歩いていると女性に心配されてしまった。そして俺は、よっぽど顔色が悪いらしい。



 この世界は鬱ゲーだが、登場人物は善良な人間が多い。前世の日本よりも『助け合い』を心掛ける人が多いかもしれない。(まあ、そういう人ほど不幸な死に様となるんだけどな! クソが!!)




「あの…… 本当に大丈夫ですか?」




 いけない、考え事をして返事を忘れていた。俺は「大丈夫です。心配してくれてありがとうございました」とでも言おうと思ったのだが、彼女の顔を見た途端(とたん)、言葉を失ってしまう。なんで会うのが今なんだ。そんな思考が過る。



 何せ彼女は……




「本当に具合が悪そうですね。はいっ、このポーションを飲んで下さい。ちょっぴり変わった作り方をしてるので色は赤いですが、効果は保証しますよ」




 驚愕に固まる俺を見ながら、彼女は「勿論(もちろん)、飲んでも安全ですよ」とか「作り方は企業秘密です」等と言葉をつづけた。


 しかし、俺は知っている。このポーションの効き目や安全性を。そして、彼女が「秘密」と言った、()()()()()()()()




「ありがとうございました。助かります」



「いえいえ、売れ残りですから」




 受け取りはしたが飲みはしないし、「ありがとう」とは言ったが正直、全くありがたくなかった。


 むしろ、今の気分ではもっとも飲みたくないものだ。なんならゲーム時代の悲劇を思い出すので彼女を見たくなかったまである。


 故に俺は当たり(さわ)りのない言葉を述べて立ち去った。




「お大事にして下さいね〜」




 少女の言葉に応える余裕はない。後で手を振って見送っているであろう事を考えながら俺は歩みを進めた。




「ちくしょう。心臓実食(トラウマ)だけでも辛いってのに、なんでこんなことに……」




 先程の彼女、『雁野(かりの) 来紅(らいく)』は『病みと希望のラビリンス☆』のヒロインだ。そして、もっとも『病みラビ(このゲーム)』らしい固有スキルをもったキャラクターでもある。











 『雁野(かりの) 来紅(らいく)』は、とても善良な少女だ。美しい銀髪と真紅の瞳を持つ彼女は困っている人を見過ごせない人柄で周囲に優しく自分に厳しい。そんな何処に出しても恥ずかしくないヒロインである。彼女の固有スキルを除いて。



 彼女の固有スキル【泡姫(あわひめ)献身(けんしん)】。それは彼女を不幸のどん底に落とす元凶だ。



 『泡姫(あわひめ)献身(けんしん)』のゲーム内での効果は少し変わっている。



 効果は『自身に最大HPの十%ダメージ。指定した味方単体の最大HP五十%回復』『一ターン毎に自身の最大HPの五%自然回復』というものだ。



 『病みラビ』に限らず、ゲームで自傷(じしょう)ダメージのある回復スキルは珍しいと思うがデメリットのある回復スキル自体はそこまで珍しくもない。



 問題は、このスキルが彼女に(もたら)す変化だ。そして、これは俺が彼女のポーションを飲みたく無い理由でもある。



 彼女のステータスボードで『泡姫(あわひめ)献身(けんしん)』の効果を見れば、こう書いてあるだろう。



 『貴女の血肉を食した者は回復する(回復量は食した部位、量によって変動)』『十秒毎に最大HPの五%自然回復』、と。



 分かるだろうか。この、(おぞま)しさが。



 つまり、彼女はゲーム内で味方を回復するとき、自分の体を食われていたのだ。文字通りの意味で。



 そして、彼女はゲーム内でポーションを作る事ができる。彼女にしか作れない特別な物で効果も高い。ゲーム時代では金策にもなった。



 そのポーションは紅かった。そう、ちょうど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 主な原料は言うまでもない。彼女の血液である。



 ゲームで彼女は(しばら)く固有スキルを隠していた。とあるイベントを経てから主人公に自身の固有スキルの存在を明かし、使うようになるのだ。(それまでは固有スキルを持っていないと思われていた)



 そして彼女の数あるバッドエンドは、ほぼ全て『泡姫(あわひめ)献身(けんしん)』が周囲にバレる事から始まる。



 その末路(まつろ)(いず)れも、拘束され『呼吸する回復アイテム』扱いされるものであり、違いがあるとすれば、捕らわれる先が魔王軍か彼女の祖国か宗教団体になるかの違いである。



 そしてハッピーエンドも、『病みラビ』クオリティなのでハッピーにはならない。負けイベントで死にかけた主人公達を回復させるために、自身の体を限界以上に削り、削った肉を主人公達に食べさせ、その後、満足そうに死ぬ。



 故に、彼女の回復のお世話になりたくなかった。特に内臓にトラウマがある今の精神状態だと彼女を見ることでゲームを思い出すため会いたくもなかったのだ。




「はぁ、ついてねえな」




 そうは言っても善意で貰ったものである。捨てる訳にもいかない。彼女は俺が材料を知ってる事を知らない。「知らないなら、それでいいよね」という変な割り切りの良さも彼女は持っているのだ。



 俺は更に重くなった足を引き()るようにしながら帰っていった。

『病みと希望のラビリンス☆』の世界では、基本的にポーションと言ったらHP回復ポーション、他のポーションはMP回復ポーション、筋力上昇ポーション、と、いうように前半に効果名をつけます。




 明日は閑話と本編を一話ずつの二話投稿です!

 是非、読んでみて下さい!




読んで下さってありがとうございました!

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[一言] グロォォイ!レーティングガヤバイ
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