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 すいませんm(_ _)m 前回の投稿から少し後にもらい事故をされて投稿出来ませんでした(´;ω;`)


 これからは徐々に更新ペースを戻していきます。


 読んで下さってありがとうございます!

綺堂 薊(きどう あざみ) サイド








「リリィ・ヴァティカルロールですわ。皆さんには、(わたくし)のクラスメイトとして相応しい振る舞いを期待しております」




 ヴァティカルロールの如何にも悪役令嬢らしい自己紹介を聞き流しながら俺は軽い自己嫌悪に陥っていた。


 そんな事になってる理由は簡単だ。自身の自己紹介がどれだけ無様だったかを思い知ったからだ。




「それと、(わたくし)は家名を侮辱されることが何よりも嫌いですの。その場合は覚悟して下さいませ」




 貴族家名の侮辱。それは中世地球でもそうだったように、とても重い不敬罪に当たる。それは貴族が形骸化した『病みと希望のラビリンス☆』でも同様だ。


 むしろ権力が弱まった今の時代こそ、自らを特権階級だと証明できる数少ない要素の不敬罪は、一部悪徳貴族達が吐き出す詭弁により、かつて貴族達が其の名に恥じぬ権力を持っていた時代よりも適用範囲が拡がっている。


 下手したら言い掛かりに等しい言い分でも通ってしまうことがある、この不敬罪は貴族同士でも適用されるため誰もが神経質になっている内容である。


 故にわざわざ「家名の侮辱をするな」など必要がなく、むしろ腫れ物を扱うかのように話題に気を付けられる方が多いほどだ。


 なのになぜ彼女が言及したかと言えば、それはヴァティカルロール家が歴史上最悪の裏切りをした家だということに起因する。
















 ヴァティカルロール家は、この国に古くから存在する大貴族だ。代々積み重ねてきた功績は計り知れず、良くも悪くも有名なのは否定しようがない。


 最高位の爵位を持つヴァティカルロール家ならば多少の悪評など捻じ伏せるだけの力はあるのだが、一つだけ拭うことの出来ない汚点がある。


 それはヴァティカルロール家の最初の功績が戦争中の裏切りだということだ。


 この国は今でこそ周辺諸国一の繁栄を誇るが、やはり建国当初からそうだった訳ではない。当時の領土が繋がっていた国から少しずつ土地を奪い、時には国ごと吸収したりして大きくなったのだ。


 ヴァティカルロール家はそんな時代に敵国から裏切った家の一つで、戦争の真っ只中に軍事を統括する立場にありながら広大な領地と機密情報を手土産に寝返ったのだ。


 当然だが敵国は大反発した。その怒りは凄まじく敗戦濃厚となった敵国が降伏する条件として掲示した内容が王族の助命や自治権の保証等よりもヴァティカルロール家当主の身柄であったことに示されているだろう。


 その後、降伏を却下され蹂躙された敵国はさらに恨みを深めた。現在でも数少ない生き残りの末裔達には産まれて間もない赤子を除き、親の仇の如く恨まれている。


 恨まれていることを自覚しているヴァティカルロール家は、この国のに誰よりも敵意に敏感なのだ。ヴァティカルロール嬢の高飛車な言動や俺が巻き込まれた決闘騒ぎも彼女なりの「私に手出しするな」という言外のメッセージであり処世術なのだ。


 そして、彼女の敵意センサーに反応した者には汚名を雪ぐための報復対象となり、取り分け家名を侮辱するような言動をした相手には……




「……はっ」



「今、鼻で笑ったのは誰ですの?」




 ブチ切れる。




「出てきなさいっ! (わたくし)の名乗りに対し、その言動は万死に値します。学園のルールに則り決闘で叩き潰して差し上げますわ!」



「上等だ。この場で汚れた裏切りの血を絶やしてくれるっ!」




 席を立ち、ヴァティカルロールに堂々と言い返したのは名も知らない多分貴族のモブ。


 流石に見かねたのか、面白い物を見るような目でやり取りを見ていた鬼塚先生が口を開く。




「アタシの授業中に巫山戯たことを吐かすんじゃねぇ。後にしろ」




 ……仲裁かと思えば、そんなことは無かった。それに決闘そのものは乗り気なようで、手続きもしてやると言い始めた。怒るとこソレだけかよ。


 ちなみに、この学園はよくある設定で治外法権となっており少なくとも表向きには貴族や王族を含む部外者の干渉は出来ないことになっているのだ。


 故に、日頃言えない恨み言を吐こうというバカは出てきて頻繁にトラブルになるらしい。こんな風に。




「なんかスゴイことになっちゃったね」




 先程まで自己紹介リレーの退屈さから船を漕いでいた筈の来紅(らいく)が、目を輝かせながら振り返ってきた。


 なんと楽しそうな表情だろうか、この顔を見ると『お菓子な魔女』で助けられて良かったと心から思える。


 まあ、それはそれとして。




「ああ、でも俺としては運が良かったな」



「あっ、そっか。ヴァティカルロールさんの手の内が少しでも分かるもんね」



「そういうこと」




 六日後にヴァティカルロールと決闘を控える俺としては有り難い限りだ。まあ、俺のステータスを考えれば、ゲーム知識から現在のヴァティカルロール(悪役令嬢)聖光院(主人公)に負ける可能性は無に等しいので、別に構わなかったのだが。




「運がついてるわね、私達」




 振り返れば、騒ぎに乗じて移動してきたであろう(トリカブト)が俺を見つめていた。タッグマッチのペアだし、決闘の見学は三人でするのもいいなと思っていたところ、後ろからギリッと歯軋りが聞こえてきた。


 気になって後ろを見ても、それらしい人物はいない。せいぜい先程より少し落ち着いたものの笑顔な来紅と、ヴァティカルロールの新しい決闘騒ぎに思い思いの反応をするクラスメイトしかいなかった。


 歯軋りは俺の気の所為か? 




「フフフッ……」




 そんな俺を見て、トリカブトは憐れみを混じえて妖しく嘲笑う。


 何か知っているのだろうかと思い、聞きたくはあったが今の彼女が余りにも不気味だったため俺は聞く気が失せた。

 読んで下さって、ありがとうございました!


 

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