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 読んで下さってありがとうございます!

綺堂 薊(きどう あざみ)サイド









 どうすれば来紅(らいく)を助けられたのだろうか。


 嘆き、悲しみ、後悔、そして絶望。


 思考の大半が負の感情に呑み込まれ虚無感(きょむかん)に支配されていく中、(わず)かに残った理性で鈍(にぶ)く考える。


 ダンジョンの入口で来紅の手を離してしまった事が悔やまれた。


 思い上がりかも知れないが俺と一緒に居れば、こんな事態は防げた可能性はある。


 いや、不規則出現迷宮(ランダムダンジョン)にいると気づいた時点で来紅に、すぐ事情を説明するべきだった。たとえ、どれだけ強引になろうとも。


 そうすれば来紅は今も生きていたかも知れないのだから。


 ダンジョンへ侵入する時、一定距離内に居ればダンジョンはパーティーとして認識し二人一緒に入れたのだ。


 そもそも俺がもっと強ければ今の状況からでも来紅を助けられた。


 ああ、これらすべてIFの話であり、俺がいくら後悔しようと来紅は戻って来ない。そんな事は分かっている。それでも後悔せずにはいられない。


 俺の叫びと周囲に充満する血の香りに引き寄せられた化物(モンスター)達が俺に群がる。


 普段は忌避(きひ)の対象でしかない苦痛が今ばかりは心地いい。


 俺は化物(モンスター)に喰われる苦痛を味わう事で無意識に来紅への贖罪(しょくざい)をしてるつもりなっているのだろうか。


 だとしたら俺は何と馬鹿な真似をしているのだろうか。


 そんな事をしても来紅への贖罪にはならない。来紅はもう、いないのだから。


 どこまでいっても、ただの自己満足だ。


 俺に群がる化物(モンスター)が増えてきた、そろそろ自然回復で追いつかないダメージ量になる。


 このまま死ぬのもいいかも知れない。


 色々と未練は残っているが一番の未練は取り返しがつかない事であるし、何より死にたかった。


 積極的に死にに行くような自殺をする程の気力は無いが今のように流れに身を任せる消極的な自殺なら出来そうだ。


 そのまま目を閉じようとした時、(ゆる)(がた)い光景が見えた。




「おい、お前……」




 ある一匹の化物(モンスター)石窯(いしがま)へと近づく。いや、正確には石窯に向かってる訳では無い。そいつは───




()()に近づくんじゃねぇぇぇっ!!」




 来紅の唯一、残った指を食おうとしていた。ふざけやがって。


 俺の心を包んでいた虚無感は一瞬(いっしゅん)で消え去り一つの目的が産まれた。




「どきやがれ、【報復】っ!」




 俺に()み付く化物(モンスター)達を固有スキル【報復】でダメージを与え(ひる)ませ距離を取った後、『応報(おうほう)の剣』を持ち、刃を寝かせ己の体を一回転し周囲の化物(モンスター)を斬り殺す。




「死ねっ!!」




 両手剣形態のまま『応報(おうほう)の剣』を視線の先にいる不届(ふとど)き者へ投げつける。


 前世は勿論、今世でも剣を投げるのが初めての俺が相手を串刺しにするなんて器用な事が出来る筈も無く、回転しながら飛んだ剣は(つか)を目標の腹に当てる事で地に落ちた。


 まあ、いい。最低限の目標は果たした。




「オラァッ!」




 剣を腹に受け(うずくま)っていた化物(モンスター)の頭を踏み潰す。




 ゴシャッ───




 湿り気を(まと)った硬い物が潰れる音がする。


 まだだ、この程度で終わらせる筈が無い。




 ゴシャッ、グシャッ、グチャッ




 丁寧(ていねい)に頭を潰していると骨を潰す音が消え血と頭蓋(ずがい)の中身が潰れる粘着質な水音だけが遺った。


 体が熱い、心臓が燃えそうだ。どこから、ともなく敵を殺せと声が聞こえる。




「だが、悪い気分じゃない」




 来紅の指を優しく拾い上げると来紅から貰ったポーションビンの中へ入れ(ふところ)に仕舞う。もう二度と傷つけさせない覚悟を決めて。




「安心しろ、俺が守るからな」




 次に来紅と会ったら言おうと思っていた言葉を指へと語り掛ける。やっと会えたな来紅、心配したんだぞ。


 微笑(ほほえ)もうとしたら(ほお)(いびつ)に引き()った。


 俺は壊れてしまったのだろうか? いや、どうでもいいか。何故(なぜ)なら────




「今度こそ離さないからな」




 何故なら、ずっと友達といられるのだから。他に何もいらない。


 俺は、魔女への復讐心(ふくしゅうしん)を胸に化物(モンスター)殲滅(せんめつ)を始めた。















 多くのファンタジー作品において吸血鬼とは不死の代名詞である。


 脳や心臓を破壊されても生きてるなど序の口で作品によっては銀や太陽が弱点にならない事すらある。


 それは、この世界『病みと希望のラビリンス☆』においても同様で、吸血鬼の原種である始祖(しそ)ともなれば心臓だけになったとしても他の目を(あざむ)き生き永らえる程だ。


 そして『病みと希望のラビリンス☆』は、すでにゲームでは無く、現実となった。この(うつ)展開しか存在しないゲームがだ。


 ならばゲーム時代には無かった未来(地獄)があったとしても不思議ではない。



 たとえば、心臓を喰われ綺堂 薊(弱者)の糧となった始祖吸血鬼が(よみがえ)る事があったとしてもだ。

 主人公の精神は崩壊寸前です。復讐心で無理矢理、体を動かしています。支離滅裂な言動をしてる事に気づいていません。




 読んで下さってありがとうございました!

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[一言] 状況はグロいのに勘違いのせいでちょっとほのぼのする
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