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 読んで下さってありがとうございます!

 『病みと希望のラビリンス☆』には不規則出現迷宮(ランダムダンジョン)という系統のダンジョンが存在する。


 このダンジョンはその名の通りランダムで出現するダンジョンであり、ストーリー進行を『不可能』にしない範囲で出現する。逆に言えば運営に『不可能』とされなければボス戦直後であっても容赦(ようしや)無く出現しプレイヤーを殺しに来るが。


 ちくしょう、ゲームクリアまで一度も出現しないこともザラにあるエンカウント率の低さから、対策も後回しにしていたのが裏目に出た。




(あざみ)くん、またボーッとしてるよ。今日はどうしたの?」




 隣の来紅(らいく)が聞いてくる。どうやら今の状況が異常だと気づいていないらしい。そんな彼女の天然(残念)っぷりに呆れるも癒やされ、俺は笑みを浮かべた。




「来紅は可愛いな」



「ふえっ!?」




 馬鹿な子ほど可愛いというのは本当のようだ。異常事態に慌てて冷静さを無くしていた俺は来紅の存在をありがたく思った。


 よし、来紅のお陰で落ち着けたし、このダンジョンの事を考えよう。


 不規則出現迷宮(ランダムダンジョン)には(いく)つか種類がある。『家屋(かおく)型』『森型』『洞窟型』等だ。

 

 そして今回は間違いなく『家屋型』なんだが、ここで一つ問題が出てくる。『家屋型』の不規則出現迷宮(ランダムダンジョン)はニ種類あり、片方は俺達では()()()()()()()()()()


 今の段階ではどちらか判断がつかないのでクリア出来る見込みのある方だという可能性に(すが)るしかないが。


 よし、(さいわ)いゲーム時代にはクリアしているため知識もある。来紅に話して一緒に対策を考えよう。俺は今の来紅がどの程度、戦えるか分からないからな。




「来紅、大事な話があるんだ」




 なにやら顔を赤くして(もだえ)ている来紅に声を掛ける。「可愛い」くらい言われ慣れてるだろうに(特に親父さん)大袈裟だな。




「え? (あざみ)くん。この状況で大事な話って、もしかして……」



「よかった。来紅も分かってくれたみたいだな」




 本当によかった。やっと来紅も今が異常事態だと気づいてくれたらしい。


 ただ何故か「きゃーっ! 幸せ過ぎるよーっ!」と叫んでいる。たしかに不規則出現迷宮(ランダムダンジョン)はクリア報酬が素晴らしいので状況によっては「幸せ」と言えるのだが今は別だろう。いや、もしかして彼女には何か秘策があるのかもしれない。それも含めて話し合わなければ。




「それでな、来紅……」



「ちょ、ちょっと待って。まだ心の準備が出来てないからっ!」




 そう言って来紅は話を(さえぎ)ると俺から距離を取ろうとしてしまう。それはダメだ、ここでしか安心して話せないのだから。俺は慌てて来紅の手を取った。




「ダメだ。俺の話を聞くまで行かせない」



「あ、薊くん!? てっ、手を……」




 これ以上、進んだらダンジョンが本格的に始まってしまう。そうなっては話どころではなくなる。だから……。




「俺の前からの居なくならないでくれっ!」



「っ!? わかったよ、薊くんの気持ち。私も覚悟を決めるね」




 そして、意を決したように俺の手を握り返してくる。


 これでやっと話ができるな。でもな来紅、ダンジョン攻略の話をするのに目を閉じて唇を突き出す必要は無いぞ。いったい何をやってるんだか。




「それで、これからのダンジョン攻略についてなんだが」



「……は?」




 来紅から、今まで聞いた事の無いような低い声が聞こえた。無表情な上に目が()わっていて、正直かなり怖い。



「いや、来紅も気づいてるだろ? ここがダンジョンだって事にさ。で、その対策を話そうと思ってさ」



「は?」




 来紅はギリッと俺の手を握る力を強める。華奢な見た目の何処に、そんな力があるのか不思議な程に強い力だ。




「い、痛いて。何だよ何か怒ってるのか?」




 今の来紅は明らかに不機嫌だ。本当にどうしたと言うのだろうか。




「あ、薊くんの……」



「俺か? 俺がどうかしたのか?」




 至極(しごく)真面目に話していたというのに、いったい何が気に触ったのだろうか。




「薊くんのバカーッ!!」




──バキッ!




 俺をグーで殴った後、来紅は止める間もなく走り去ってしまった。痛い、怪我はHP自然回復で治ったが友達に殴られたという事実に心が痛い。


 いや、そんな場合ではない。手遅れになる前に来紅を止めないと。




「来紅っ! 行かないでくれっ!」



「どうせ、また思わせぶりなセリフだけなんでしょっ! 薊くんなんか知らないっ!」




 俺は滅気(めげ)ずに来紅を追い掛ける。だが途中で透明な壁に当たり、それ以上進めなった。これは最悪の自体だ。




「あれ? 薊くん?」




 俺が追って来ない事を不審に思った来紅が、こちらへ振り返る。だが、もう遅い。手遅れになってしまったのだから。




「「ねえ、お姉さん。こんなところで、どうしたの?」」




 透明な壁の向こう側で突然、現れた瓜二(うりふた)つの少年と少女が来紅に声を掛けた。来紅は、まるで()()()()()()()()()()不自然な動きで二人の方へ体を向かせた。

 ああ、始まってしまった。




「「道が分からないなら、お婆さんに聞きましょう。こっちに、お家があるの」」




 来紅は何も喋らない。いや、喋れない。彼女は二人に連れられるまま、歩いていってしまった。




「ちくしょう。ちくしょうっ!」




 もうダメかも知れないというマイナス思考が頭をよぎる。


 いや待て、ゲームでは分断された味方とダンジョン内で再会する確率もゼロでは無かった。それに、来紅が連れ去られた時に分かったのだが今回の『家屋型』はクリア出来る見込みのある方だ。来紅と合流出来れば脱出できるかもしれない。


 だから考えろ俺っ! 来紅と生きて戻る方法を!




 そうして俺は思考を働かせた。















 来紅が連れ去られてから数分後、透明な壁が消えて前に進めるようになった。大丈夫、攻略の仕方については出来る限り考えた。きっと何とかなるはすだ。いや、何とかしなくてはならない。そして俺は前に歩き始めた。




「「ねえ、お兄さん。こんなところで、どうしたの?」」




 案の定、俺の前に来紅にも現れた双子が姿を見せ、声を掛けてくる。幼気(いたいけ)な見た目をしているがへど反吐(ヘド)が出るほど邪悪な笑みを浮かべているため庇護欲(ひごよく)は全く湧かない。




「「道が分からないなら、お婆さんに聞きましょう。こっちに、お家があるの」」




 体の自由は()かず、双子に導かれるまま俺の体は勝手に歩き始めた。見てろよクソ双子。絶対に許さねえからな。


 口も開けない俺は、そんな思いを込めて双子を睨んだ。

 読んで下さってありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[一言] クリアまでに出現しないこともざらなランダムダンジョンにさらに複数種類あるんか。凝ってるな。絶望させる方向で!
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