7.5
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◆雁野家 来紅視点
「薊くん。うふふっ」
私は今、帰路についている。足取りは軽い、家出後の帰宅とは思えない程だ。それは彼のお陰、最初は少し怖な思っていた彼の顔は今では男らしくて素敵だと思っていた。
「勇気を出して連絡先交換をお願いして本当に良かった。それに、ちょっと大胆なことも言っちゃった」
思わず笑みを零す。
彼を思い浮かべれば何でも出来る気がした。父との話し合いは勿論、家出の謝罪だって問題ない。
「それに、薊くんにアドバイスも貰えたし。絶対に大丈夫だよね」
そうしている内、家に到着した。私は一切、気負う事なく扉を開ける。
「ただいま。あっ、お父さんごめんなさい」
扉を開けて直ぐに父がいたので謝罪した。昨日よりも少し窶れている。
どうやら何処かに出掛けるつもりだったようだ。怒られる事を覚悟していると、何故か父は動かない。
なんでだろ? そう思って顔を上げて見ると父が泣いていた。大号泣だ、黙っていれば威厳のある顔だというのに、今は酷い顔だ。
「来紅!」
そこで、やっと動き出した父に抱き締められた。力が強くて少し痛い。
「お父さん、ちょっと痛いよ」
「来紅、すまなかった。本っ当にすまなかった。まさか家出する程、思い詰めていたなんて」
お父さんに謝られた。
少し意外だった、家出する直前の父は見たことがない程に頑なだったから。もう少し口論になると思っていたので拍子抜けした気分だった。
「気にしないで、お父さん。私もごめんね」
「いいんだよ来紅。……学園に行ってもいい、だから約束してくれ。自分の安全を第一に考えてくれると」
『学園に行ってもいい』と言のに、とても不本意そうな顔をしていたが、それでも許してくれた。すごく嬉しい。
でも、ごめんね。私もう自分を第一に考えるなんて出来ないの。
「ありがとう、お父さん。でもね、やっぱり少しだけ学園に行くの不安なんだ。だから、お父さんに冒険者の事を教えて欲しいな」
私は珍しく甘えた声で言う。本当は愛しの彼以外にこんな声は出したくない。でも父に、また反対されるかもしれない。だから、これは彼と一緒に学園へ行くために必要な手順なのだ。
「来紅っ! ああ、いいとも。いくらでも教えるとも!」
父が感極まったように言った。よかった、これで大丈夫そう。
「さあ、中に入りなさい。もう、昼時だ。お母さんにご飯を作ってもらおう」
玄関に立ちながら話していた私は父に言われて居間へ行く。お母さんにも謝らなきゃ。
◆
「「「いただきます」」」
家族三人で食事を始める。
あの後、お母さんにも謝って許して貰えたので安心した。
最初に顔を合わせた際に一瞬、睨まれたと思ったから、すごく怒ってると思ったけど気のせいだったみたい。
「来紅。そんなに急いで食べなくても、ご飯は逃げないぞ」
「そうよ来紅。もう少し落ち着いて食べなさい」
私は、とてもお腹が空いていた。
当然だ。なにせ一晩中、飲まず食わずで走ったのだから。その上、口にしたのは少し前までジュース一本だ、多少ガッツクのは許して欲しい。まあ、家出した私が悪いのだが。
「しょうがないでしょ。ずっと、ご飯食べてなかったんだから」
「ははは。なら、もう家出なんてするんじゃないぞ」
「大丈夫だよ。もう、するつもり無いから」
お父さんに言われたので、本心からそう返す。
「そうだ、お父さん。いつから冒険者の事、教えてくれるの?」
「あら? 二人はそんな約束をしてたの?ちゃんと仲直り出来たみたいでよかったわ」
お母さんが私達に聞く。そう言えば、お母さんには言ってなかったな。
「そうなんだ。来紅が私に教えて欲しいと言ってくれてな。父親冥利に尽きるよ」
ギリッ
お父さんが照れてたように言った直後そんな音が鳴った。
見ればお母さんが笑顔のままフォークを強く握り締めている。どうしたんだろう。
「……もうっ。お父さんったら」
お母さんの事はよく分からなかったので、私は普通に会話を続ける事にした。
「さっ。今は、ご飯の時間よ。二人共、早く食べなさい」
お母さんが言った。よかった、いつものお母さんみたい。話を逸らすような言い方は少し気になるけど大丈夫だよね。
「そうだったな。早く食べよう。冒険者の話は、その後でいいな?」
「うん、大丈夫だよ」
そう言って私達は食事を続けた。
薊くんの事は、お父さんとお母さんにいつ言おうかな? 薊くんは素敵な人だし、学園に行くのを許してくれたお父さんなら許してくれるよね。
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