表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

第9話 飛行魔法と、両親がすでに……


 私は、空を飛んでいる。


 私は飛行魔法はまだ使えないので、飛んだのはこれが初めてだ。

 かなりのスピードで、私たちは目的地に向かっている。


 何回かトラップに当たった感触があったのだが、ひっかかる前に先に進んでいるおかげで、私たちは一切ひっかからなかった。


 後ろを見てみると、私たちの通った場所に、誰も捕まってない空の魔法網が何個も落ちていた。


 飛行魔法を使うと、ぐんと楽にクリアできるようになるからか、空中の方がトラップは多めだったみたい。


 地図にも空中のトラップは載ってなかったから、空中から行こうとするペアは、おそらくいなかったんじゃないだろうか。

 

 「セオドア様すごいっ!」

 「デイジー、捕まえてるけどちゃんと君も捕まって! 身を乗り出すと危ない」


 「あっすみません」

 ついつい楽しくて、捕まえてくれてるのをいいことにキョロキョロしてしまった。

 なんだかセオドア様が私を落とすはずがないっていう安心感もあるのかも。

 

 私は、言われた通り、飛行の邪魔にならないように彼にしっかりと捕まった。

 密着すると、やはりセオドア様のことをすごく意識してしまう。


 なんだかいい匂いがする。

 汗も少しかかれてるみたいだけど、それも含めていい匂いだ。

 ふと、私も、まぁまぁ汗をかいていたことを思い出す。

 私の匂い、大丈夫かな?


 むしろ私の方が臭ってる可能性の方が高いのが悲しい。


 なんて思ってたらあっと言う間に森の一番奥にある、湖のほとりに到着した。


 最後はセオドア様を意識してしまい楽しめなかったが、飛ぶのはとても気持ちよくて楽しかった。

 私も飛行魔法は絶対覚えようと思う。


 セオドア様は着くやいなや、すぐにあたりを見回される。

 あんなにスピードを出して飛行魔法を使われていたのに、息も上がってないし、余裕な表情をされている。


 「セオドア様、大丈夫ですか? すごいスピードだったけど」

 「デイジーが怖くないようにと思って、かなりスピードを落としたからそうでもないよ。もしかしてデイジー心配してくれてるの? 嬉しいなぁ」

 そう言って、喜ばれる。

 喜ばせようと言ったつもりはなかったのに。

 

 「えっあれでスピード落としてたんですか?」

 「まぁ、トラップ振り切れる位はスピードあげたけど、かなり遅かっただろ?」

 「すごく早かったですよ。とっても楽しかった! あれより早く飛べるんですか?」

 すごいよ、セオドア様。


 「次すごいスピードの方やってあげるから、今週末デイジーの家招待して」

 「えっいいんですか! やったーー! ぜひ、ご招待させてください」

 私は二つ返事で応じた。


 すごいスピードの方を体験できるなんて楽しみだ。

 

 だけど私、何か大事な事を忘れているような?


 「楽しみにしてるよ、そうと決まったらチャッチャと課題を終わらせよう」

 何故だか、セオドア様はいきなり張り切り出した。

 

 私も、指令に書いていた魔法の杖がないかを探し回る。


 そんな簡単にドーン、と置いてあるわけないだろうとは思うが、やっぱり全然見える場所にはなくて少しがっかりしてしまう。

 一体どこにあるんだろうか?


 セオドア様が、ご自分で背負われてたリュックを下ろして中身を確認される。

 必要なもので溢れていた中で、それだけ何で入っているのかわからなかったトランプを取り出される。

 早く課題が終わったら遊ぶため? な訳ないか。


 「この何で入ってるのかわからないトランプに鍵がありそうなんだよな」


 「またあれやるか」

 そういうとトランプを箱から出して、トランプを重ねたまま、地面に置く。

 そこに魔力を注がれた。


 「次デイジーもやってみて」

 「はい」

 私も魔力を注ぐ。


 ……何も起こらない?


 と思ったら、

 急にトランプが動き出す。

 

 そして、手品のようにクルクル飛び回り、トランプが空中で、円を描いた。


 その真ん中に、次元の歪みのようなものが発生して、そこから杖が2本出てきた。

 トランプは、その役目を果たしたのかその場に落ちる。


 「杖が出てきた。セオドア様、すごい……」

 つい褒めてしまう。


 「すごいに決まってるだろ? 俺を誰だと思ってるんだ」

  彼は、優しく笑った。


 セオドア様がさっさと杖を受け取り、リュックにしまう。

 そして、きちんと落ちたトランプもしっかり集めて箱に入れて片付けられていた。


 かなりの几帳面だな、

 なんて思いながら手伝いもせず見てた私は、本当に課題をクリアしたといえるのだろうか?


 というか、セオドア様とペアになったら余裕すぎる。

 

 あれだけリタ様とジョシュア様に、解消しませんと言ったことだし、もうちょっとだけペアでいてもいいかも。

 自分のことながら、現金だなとは思うけど。


 実技が始まると、補習は避けられないと思っていたから、こうやって免れるのはありがたい。

 セオドア様に感謝してしまう。


 「で、今週末のことなんだけど、忘れてないよね? ご両親にも伝えておいてね」

 「はい!」


 「デイジーのお母様と仲良くなって何度も呼んでほしいとお願いしてたんだけど、君が全然誘ってくれないからこっちからつい言ってしまったよ。ようやく了承してもらえてよかった」

 セオドア様が衝撃発言をされる。


 「えっ? 待って。母があんなにしつこくセオドア様を誘えって言ってきてたのって?」


 「デイジーのお母さん、頑張ってくれてたんだな。それなのに、全然誘ってくれなかったの、頑固すぎやしないか? もう俺、デイジーのお母様とかなり仲良くなってて、デイジーのこと好きだって言ったら協力してくれるっておっしゃってね、君のお父様も、俺なら安心だと言ってくれて嬉しかったなぁ」


 ……そういうことだったのか!

 

 母が、あんなにしつこかったのって、セオドア様が絡んでたんだ。

 

 「セオドア様! 両親丸め込むなんて、なんだかひどいです! ずるいです! もう今週末のは無しでお願いします!」


 「……じゃあもっとすごいスピードの方やってあげないけどいいのかな?」


 「そ、それは。セオドア様、ひどい」

 「了承してくれたのに急に断る方がひどいだろ?」


 「た、たしかにそう言われてみると、私の方がひどいかも……? じゃあ、絶対やってくださいね。すごいスピードの方! 絶対ですよ!」

 何か私、誘導されたような気もしないでもない。


 セオドア様がにこやかに笑われる。

 「もちろんだ。今週末、よろしく頼むよ」


 なんだか私、どんどん誘導されて、逃げられない方向に、進まされてる気がした。



※※※後日談※※※


 放課後、

「あなたたち、聞きましたわよ」

 ポージーがリタとジョシュアに近づく。


 「ポージー様! いつも可愛くていらっしゃいますね!」

 リタがキラキラした瞳でポージーを見つめる。

 

 「いつも褒めてくださって嬉しいですが、それより何かデイジーさんに酷いことなさったってお聞きしたわよ。私、そんなこと頼んでません! 勝手に憶測で動かないでくださいますか?」


 「リタはポージー様とセオドア様がうまくいって欲しいって思ってるんですけど」

 リタはシュン、とする。


 ジョシュアはトントンとリタの肩を叩いて慰めた。

 この2人の関係性が未だに謎である。


 「あのね、私実は……」

 ポージーがソワソワし出した。


 すると、近くで様子を伺っていたエイモスが、助け舟を出した。

「ポージーはもう俺のものだからね、勝手にセオドア君とくっつけようとしないでほしいし、俺の友達もいじめないであげてほしいな」

 

 「エイモス……」

 ポージーがエイモスを見てうっとりする。


 2人の大ファンだったリタは、何が起こったかわからずガッカリしたと思ったら、

 「ポージー様とエイモス様ならお似合いです! 素敵です! 私、応援してます!」

 とすぐ切り替えた。

 リタは割と切り替えの早い女の子である。


 ただ、ジョシュアはポカンとしてしまう。

 (俺がリタのためにやったことって、何だったんだ?)

 ジョシュアは肩を落とした。


 「ともかく! デイジーさんとセオドア様にはきちんと謝っておいてくださいね」

 ポージーはそう言うと、恋する乙女の顔でエイモスを見て、幼馴染の2人は一緒に家に帰ろうと手を繋いだ。


 ……今回の実技で、エイモスはかなり頑張って、あと一歩だったポージーの心を掴んだことは、また別のお話。


 (今回のリタとジョシュアの件はポージー全く関与してないことが書きたくて。リタの独断でした)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ジョシュア君、ドンマイ リタちゃんある意味すごいな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ