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第4話 恥ずかしすぎるカミングアウト


 「エイモス、私そんなにうっとりしちゃってた? セオドア様、実はすごく好みなのよね。でも大丈夫。私はエイモスと違って弁えてますので。遠くから見るだけだから」


 「俺のことすごく好みだって? デイジーが?」


※※※



 私は何故かいつのまにか後ろにいて、そしてびっくりしているセオドア様を見て、

 顔から火が出るような気持ちになる。

 

 ーー聞かれてた!!!


 耳まで真っ赤になっているのを感じる。


 この状況、無理!!!


 私にはもう、逃げるしか選択肢がなかった。


 私はおもむろに立ち上がり、エイモスと先生に頼まれた雑用をしていた教室の、その扉を思いっきり開けて、走りだした。


 どこへ逃げよう?

 走りながら、私はなぜか以前も逃げ込んだ空き教室が目に止まり、そこに逃げ込む。

 さすがに前回見つかったところに逃げたとは思うまい。


 もしかしたらセオドア様はエイモスと、ポージー様の取り合い祭りを開催するために来ていたのかもしれないので、そもそも追いかけてきてない可能性もあるけど、念のためだ。


 私はそっと教室の扉を開けて、扉のすぐ横の壁にもたれかかる。

 背中に感じる壁が冷たくて気持ちいい。


 そのまま体育座りみたいに座り込んで、目を閉じて、自分の体をぎゅっと抱きしめた。


 ……恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。

 もう私、二度とセオドア様の顔は見れないだろう。

 この先、実技のペアになってしまっているのに、どうやり過ごせばいいというのか。


 そうだわ! セオドア様との私の実力差は先生も知るところだろうから、もしかしたら頼み込めばペアをはずしてもらえるかもしれない。


 少しの希望が見えて、私はようやく目を開け、顔をあげた。


 「デイジーはいつもここに来るよな。ようやく浮上した? あとパンツ見えてるよ」

 目の前には、笑顔のセオドア様がいた……。


 「きゃーーーーーむぐっ」

 私は慌てて下着を見えないように座り変えながら、つい叫んでしまうと、私はセオドア様に口を塞がれる。


 「静かに。まだ残ってる人もいるんだから、誰か来るぞ」


 (私は誰かきてもいいんだけど……いや、セオドア様が私と2人きりなの見られたら恥ずかしいのかも)


 私はもう正直に言うしかないと思って、私の口がセオドア様の手で塞がれているのを、両手で外して(すぐ離してくださった)私は口を開いた。

 手が触れてそこがなんだか熱い。


 セオドア様の顔は一切見ない、いや、見れないが正しい。


 「あ、あの……さっきの話、忘れてもらえませんか? ご迷惑ですよね。大丈夫です。付き纏ったりしません。ペアも先生に頼んで解消してもらいますから」

 言いながら耳まで真っ赤になっているのがわかる。


 「なんで?」


 「なんでって、なんでもです……セオドア様にご迷惑かけたくないです」


 セオドア様の顔がやっぱり見れなくて、どんな表情をしてるのかは一切わからない。

 私はずっと、セオドア様の喉仏のあたりをみている。

 喉仏すら、色気がすさまじい。


 「なんで迷惑だと思ったのかわからないけど、一つ聞いていいかな? デイジーは俺が本当に好みなのか?」

 セオドア様の喉が動く。

 口調は優しい。


 「は、はい……申し訳ありませんが、私はセオドア様が、とてつもなくどストライクなんです。かなり好みであると言い切れます」

 セオドア様、私になんてことを言わせるんだ。

 恥ずかしさのあまり、私は両手で顔を隠して、更に目をぎゅっと瞑った。


 そういえば、私さっきから噛んでない。

 顔見てなければ噛まないんだわ!


 「そうだったのか……!」

 セオドア様の口調はびっくりなさっているようだ。


 セオドア様の美貌があればみんな好きだと思ってもいいと思うんだけど、そんなびっくりされるようなことかしら。


 そう思っていると、私の体が宙に浮く感じがした。


 私が恐る恐る目を開けると、私はセオドア様に、いわゆるお姫様抱っこをされていた。


 「セオドア様! 重いです! 腰を痛めます」


 私は浮遊感が怖くて、ついセオドア様の首に腕を回してしまう。


 スリムに見えるが、セオドア様は肩幅は広いし、胸板が厚くてすごく男らしい。

 セオドア様の色気のある首元からいい匂いがする。

 さらにドキドキする。

 このままじゃセオドア様の腰の前に、私の精神が崩壊しそう。


 「おろしてください」

 ようやくセオドア様の顔を見た。


 見上げる形になって、上目遣いになっているが、あざとさはないだろう。


 ポージー様のすごいコンディションの悪い時よりも更に残念である自信がある。

 いや、自信しかない。残念だが。


 ようやく見たセオドア様の顔は、私と同じくらいに真っ赤だった。


 「え?」

 思っていた表情と違って、驚いていると。


 セオドア様の美しい紫の瞳が潤んで、

 「俺はずっと嫌われていると思ってたんだ。すぐ逃げるし。でもそれでもいいと思って……」


 「き、嫌うわけありません!」

 この美しい顔に、ポージー様が言われたようなこと、いやむしろそれよりも酷いことを言われたくなくて逃げていただけで。


 でも、なんだかいつも余裕のあるセオドア様のお顔が真っ赤で、目が潤んで、更に色気が増し増しなんだけど……。

 そんな顔で見つめられたら、私はどうしたら。


 「セオドア様、そんな顔で見ないで……私なんだかすごく恥ずかしいです」

 あまりの恥ずかしさで、セオドア様の鎖骨のあたりに顔を埋める。

 これでセオドア様の顔は見れない。


 セオドア様の首に腕を回し、鎖骨あたりに顔を埋めている、その行為は、私の方からセオドア様を抱きしめているような状態なのだということに、気づいていなかった。


 「それ、煽りすぎだろ? かなり俺たち密着してるよ」


 「ご、ごめんなさい。そんなつもりは」

 と言って慌てて体を離すと、そのままセオドア様から降ろしていただいた。


 足の裏に地面を感じて安心していると、気がつけば広い肩幅にそのまま私は抱きしめられて。

 セオドア様の顔がどんどん近づいて、私たちはいつのまにか唇を重ねていた。


 セオドア様の唇は柔らかくて。

 最初はすごく優しく触れていたと思ったら、どんどん激しくなって、舌が入ってきそうになったので、口を思いっきり閉じて、入れられないようにする。

 (そんなの、無理……!)


 「無理! です!」

 渾身の力で思いっきりセオドア様を突き飛ばそうとしたが、残念なことに全然ぴくりとも動かない。

力の差は歴然だ。


 「ファーストキスなのに……」

 どうにか口だけは離してもらう。


 そんな初心ではないと思っていたが、何故だかポロポロ涙が出てくる。


 だって、こんな、よくわからないファーストキスってある?


 私にだって、憧れのシチュエーションは、あるのに!

 (ってそこかい!)


 セオドア様がすごいセオドア様らしい感じのブルーの爽やかなハンカチで私の涙を拭いてくれながら、

 「ファーストキスじゃないよ、それ」

 と言ってきた。


 「えっ?! 私ファーストキスです紛れもなく! 私殿方とお付き合いしたことありません」

 私はセオドア様の顔を見ているのに噛まずに言えた。

 だってなんでセオドア様がそんなこというのか。

 おかしいでしょ!


 さすがにファーストキスをファーストキスじゃないとか謎なこと言われて怒らない女の子がいるのか? って思う。


 「泣いても怒ってもデイジーは可愛いな。いつも怖がってる顔しか見せてくれないから、嬉しいよ。俺の事好きなんだろ? 俺の事だけずっと見てて。他のやつのことは絶対見ないで。俺ずっと避けられてたから、ペアのクジのこと知って、人に言えないことしてデイジーと一緒にしたんだ。デイジーが俺のこと好きなんてすごく嬉しい。この先もっとデイジーの色々な表情をみたい」


 セオドア様がそんなこと言ってくるので、私はポカンとしてしまう。

 というかそもそもなんで私は、セオドア様にキスなんかされてるの?


 ちょっと私、頭の理解が、追いついてない。

 もともと間抜けな顔が、だいぶ間抜けになっていると思う。


 そして、

 「あと、覚えていない? もう以前俺たちここでキスしたんだけど。もうとっくに俺、デイジーのファーストキス奪ってるから」

 笑顔でセオドア様は、そう言った。

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