第22話 魔法ってとてもむずかしい
「回復魔法なのですが、まぁ見てもらった方が早いと思います」
ジェームズ先生はそういうと、小型のナイフでご自分の腕をさっくりと切った。
さも当たり前のように腕を切られるので、私は悲鳴も出ないでつい見入ってしまう。
先生の腕からポタポタと血が流れ出て、ナイフで結構ざっくりいったことがわかる。
先生、躊躇うこともなく切れるの、怖すぎるんですが……。
その後、すぐに先生の反対の手のひらが、優しく光り、手のひらを切った部分に当てると、その光が体全体を覆う。
……次の瞬間には、先生の傷は、傷口も何もなかったかのように治っていたのだった。
「すごい……」
私はもうそれしか言えない。
以前、私がセオドア様に治してもらった時も、体全体を暖かいものが覆っていって、それから治ったような気がする。
そんな難しい魔法、私もできるようになるんだろうか?
すると先生は枯れた花が植えられた植木鉢を、それぞれ私たちの机に乗せた。
セオドア様にとってはこんな授業は必要ないと思うのだけど、自分のペアの時の実力を見てみたいので、復習を兼ねてもう一度やってみたいのだそうだ。
「流石に自分の腕を切るのは良くないので君たちはこの花を回復させてみようか」
自分はあっさり切ったくせにそんなことを言う。
先生自分を大事にしてほしい。
とはいえ、私は回復魔法を受けたことはあるけど、受けてる人を見たことはない。
なので、自分があの時どうなっていたのかはわからないので、とてもわかりやすかった。
実演してもらえて良かったのは間違いない。
やはり素晴らしい先生なのだと思う。
しかし、先生の腕は大丈夫だったのかな?
そんなことを考えていたら、セオドア様はあっさり「ヒール」とおっしゃると、
植木鉢の花はみるみる元気になった。
だけどそれだけではなくて、植木鉢いっぱいに、どんどん新しい葉っぱが生え、そして沢山の蕾をつけたと思うとそれが花開いた。
花の成長の過程はこういうものなのだと思うような感じで、感慨深い。
すごいものを見た気がする。
あまりにも盛り盛りにお花が増えてしまっているので、
「大きい植木鉢に植え替えないと」
私はつい現実的なことを言ってしまう。
「大丈夫だよ。庭に植えさせるからね」
セオドア様がそう言うと、後ろの方で待機していた従者の方がさっさとお花を持っていった。
できる従者の方々である。
セオドア様はそんな従者の方を気にすることもなく、
「前回習った時に比べて、だいぶ成長したな」
なんて満足気におっしゃった。
「前回はだいぶ前の、魔法の習いたての頃の話だから、セオドア君でも、枯れた一本が元気になっただけでしたもんね。今はかなり努力されたのがわかります。ちゃんとペアの効果もしっかり出てますね。素晴らしいです」
先生がとても褒められる。
セオドア様、さすがだ。
だいぶ前のセオドア様ってどんな感じだったんだろうか? 絶対可愛かったんだろうな、と私はつい想像してしまった。
「ペアの効果って自動で引き出されるようなものではないんですか?」
少し気になったので聞いてみる。
「もちろんペアの相性がよいからといって何もしなくても相乗効果が出るわけではありません。相手のことを、相手の力を感じることで相乗効果が得られます」
先生が難しいことをおっしゃる。
「私セオドア様のことや力を感じたことないかもしれません」
そりゃ、魔法の力が倍になった実感がないはずだ。
「普通に難しいと思います。まだできなくて当たり前ですよ。それにマーガレットさんは基礎もまだまだですから、ペアの能力を引き出す練習をすることの前に、自らの力のみで行う魔法の勉強から始めましょう」
淡々とした先生かと思ったら、なかなか熱心な先生のようだ。
そりゃあ、熱心じゃなかったら腕なんか切らないか。
「とりあえず、やってみてください」
そう言われるので、私もやってみる。
「ヒール」
言ってみるものの、うんともすんともいわなくて、花は枯れたままだ。
「難しいです……」
私は2時間ずっと魔法をかけ続けたけど、花は枯れたまだまだった。
まだやりたかったが、その後はマナーの授業で、今度はセオドア様はなんとこちらは不参加だった。
「セオドア様一緒に受けませんか?」
と念のため聞いてみたら、
「……デイジーには難しい授業を受けるつもりだから」
なんておっしゃったが、本当かな?
こちらはとにかくミーシャが厳しかったが、一応母が教えてくれていたので、
「思った以上にできるのでびっくりしましたわ! 今日は午後はよいですよ。魔法の授業で手こずってるとお伺いしましたので」
とおっしゃってくださったので、午後からは魔法に専念できそうだ。
花が枯れたままなのがすごく気になっているので、よかった。
しかし、魔法って本当に難しい。
うまくできるようになるんだろうか。
2年生との対戦、勝ちたいけど、このままじゃ不安だ。
また2人で昼食を済ませて、
すぐさま午後の授業に向かうと、
「回復魔法は一旦やめておきましょうか」
とジェームズ先生がおっしゃった。
「私まだやりたいです」
できないままなのは悔しいのでそう言うと、
「そもそも、回復魔法は苦手な人が多いんです。難易度的には飛行魔法の方が高いのですが、実は回復魔法はできないままの人も多いんですよ。セオドア君のペアを務めていると聞いたので、もしかして簡単にできるかもしれないと思ったんですが、苦手なようですね。きっとペアなので出来ると思うので、また今度機会を作ります。今からは飛行魔法にいきましょうか」
と優しく言ってくださった。
次は飛行魔法か。
ちょっとそっちは楽しみだ。
セオドア様の方をみると、昨日の私が何度もやらせたことを思い出したのか、ゲンナリした顔をしている。
いつも余裕で、セオドア様のゲンナリした顔なんてなかなか見れないので、ちょっと得をした気分だ。
私たちは飛行魔法を習うため、別邸の外へ出る。
今度こそうまくできますように、私はそう祈った。
月末月初ってなんでこんなに忙しいのでしょうね( ; ; )
そんな中、読んでくださってありがとうございます!
大変、感謝しております(*´꒳`*)




