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第19話 セオドア様のお気に召さなかったのだろうか?


 「……開けたね?」

 という声が聞こえ、後ろを振り向くとセオドア様がいらっしゃった。


 少々呆れたお顔である。


 「はい……。やっぱりお気づきになっちゃいました?」

 ここは正直に言う。

 すっごくゆっくり閉めたけど、やっぱりバレてたのね。

 

 「デイジー、座って」

 私の用意していたお茶を飲みながら、いつのまにかセオドア様がすでにお席に座っている。


 セオドア様って本当に行動が何もかもお早いのだ。


 私も4脚もあるうちのテーブルセットの、セオドア様の横の席に座る。

 「この扉がなんであるのかは知っているかな?」

 彼はティーカップを置いて、呆れたようにおっしゃる。


 「知りません」

 私は堂々と言う。

 

 知ってたら多分開けたくなんか、ならないと思う。

 謎にある扉だからこそ、開けたくなる。

 それがロマンだと思う。


 「……この扉は結婚してから、夜にそういう時に、使用します」

 なんだかセオドア様らしくなく敬語である。


 「夜のそういう時……?」

 ポカンとして、数秒経って。

 ……私は理解した。


 私も年頃の女子であるので、恋愛小説の嗜みはある。


 もしや、すごく恥ずかしいことしてしまったのかもしれない。

 顔が熱くなってきて、耳まで熱い。


 そういう扉だったと知らないとはいえ、私の方から開けちゃうって、末代まで語り継がれそうだから絶対内緒にしたいところだ。


 「わかったかな? そういうわけでここは不用意にあけないようにね」

 セオドア様が真面目な顔でおっしゃる。

 キスは奪ったくせにそういうところは真面目なようだ。


 「じゃあ隣じゃなくてもいいので、扉のない部屋にしてください。すごく気になります!」

 ついそう言ってしまう。

 こんな扉さえ無ければ私だって開けなかったのだ。


 「俺もそう言ったんだが、ミーシャがどうしてもこの部屋だと聞かなくて」

 

 「どうしてでしょうか?」

 「説明しかねるから聞かないでほしい」

 セオドア様が真っ赤な顔でおっしゃる。

 真っ赤なセオドア様、可愛い!

 「えっ気になります!」

 ついつい私は聞いてしまう。


 「……既成事実」

 いつも堂々とおっしゃるセオドア様なのに、とても声が小さくて聞こえない。


 「既成事実を作ってしまえば、きっと君は逃げないと言うんだ」


 何かおっしゃっているようだが、私は、やっぱり聞こえなかった。


 「セオドア様、全然聞こえませんもうちょっと大きい声でおっしゃってもらえませんか?」

 

 「申し訳ない、やっぱり説明しかねるから忘れてくれ」

 そういって真っ赤になるセオドア様は初めてみる表情で、私は少しキュンとしてしまったのだった。


 「お食事の準備に参りました」

 ドアがノックされ、アイラの声がする。

 もうそんなに経ってしまったのか。


 「まぁそういうわけだからこの扉は君からは使用しないこと。わかったね」

 そう言って、さっと帰られる。


 本当に行動が早い。

 さもいらっしゃらなかったように、全く痕跡を残さず、セオドア様は扉の向こうに消えたのだった。


 「……はい」

 私がセオドア様がいらっしゃらなくなるのを見計らって、アイラにそう返事すると、すぐにアイラが入ってきた。


 「旦那様と奥様に気にいっていただけるように頑張りますね!」

 アイラはそう言ってニコっとした。

 なんだかとても頼もしい。

 

 「よろしく、お願いします!」

 どんな準備をしてもらえるんだろう? とても楽しみだ。




※※※




 「か、可愛い……」


 アイラにメイクしてもらって、髪の毛も結って貰って、しかも服まで着せてもらった私はもう正直、別人であった。


 たしかに凄い美人ではないが、愛嬌があってまあまあ可愛いんじゃないかとは思ってはいたが、正直セオドア様がなんで好きになってくださったのかわからないくらい普通である。


 しかし今なら、ポージー様の横に立ってキラキラ一軍メンバーのふりをしても誰にも怒られなさそうな感じだ。


 「もともとの良さを引き出しただけですわ。セオドア様をもっと虜にしちゃってください!」

 アイラは得意げに笑った。

 

 ミーシャが、アイラのことを信頼できる侍女だと言っていたけど、なんだかわかる気がする。


 そして、清楚なブルーのワンピースにしてくださる。

 セオドア様の髪の毛は銀色だけど、光で青みが強くなるので、きっとアイラはそれで選んでくれたのだと思う。

 胸元の小花柄の刺繍は彼の瞳の色である紫色でとても可愛いらしい。


 これはたしかに彼のご両親とのはじめての会食には、ベストな装いに思う。



 私はそうして、アイラに連れられてお食事の会場に行く時間になった。


 他の部屋より特に豪華な装飾で、両開きの扉の前に立つ。

 「ここは、何かのパーティ会場か何かですか?」

 つい聞いてしまう。


 「いえ、パーティ会場は他にございます。こちらはお食事の部屋でございますよ」

 アイラは私のしょうもない質問にもきちんと答えてくれて、本当に優しい。


 「開けますよ。大丈夫です。まだ旦那様も奥様もいらっしゃってませんから」

 そう言って落ち着かせようとしてくれる。


 「は、はい」

 だけどやっぱり、私は緊張してしまう。


 扉を開けて貰って、私は執事みたいな人に、椅子に案内される。


 ありがたいことに、一番下座に用意してくださっている。

 

 執事みたいな人が、私の椅子を引いてくださったので、

 「ありがとうございます。あの……」

 と言うと、

 「私はこの屋敷の執事を務めております。スティーブンと申します。マーガレット様、よろしくお願いします」

 と恭しく応えて下さった。


 「スティーブン様、よろしくお願い……」

 と私が言おうとすると、

 「様は結構でございます」

 スティーブンが有無を言わさぬ勢いで、私の言葉を遮って言う。

 「はい……」


 ミーシャもそうだが、なかなか強い方々である。

 私、当分とはいえ、こちらで生活するの、大丈夫なんだろうか。なんだかお父様お母様に会いたい。


 すでに辛くなってきた。

 魔法を習うのに、こちらに通うのではダメだったんだろうか。


 まだセオドア様のご両親はいらっしゃってないのに、私はもう心が折れてきた。


 するとセオドア様がいらっしゃった。

 

 私の隣で、私より上座の席にスティーブンに案内されてお座りになる。


 セオドア様はいつも通りとても格好良くて、隣に座られたら少し緊張してしまう。


 スティーブンはテキパキと動かれており、さすが侯爵家の執事を務めるだけあり、大変出来る方のようだ。

 

 スティーブンの働きをまじまじと眺めていたら、ふと視線を感じるのでふと見ると、セオドア様が、じっと私を見ていらっしゃった。


 「……あの、私なんか変ですか?」

 アイラがとっても可愛くしてくれたのに、お気に召さなかったのだろうか?


 「デイジーとても可愛いね。いつも可愛いけど、今日はさらに可愛い」

 セオドア様がとても褒めてくださる。


 「本当ですか?」

 良かった、セオドア様のお気に召したようだ。

 すごく褒めてくださって、嬉しい気持ちになる。


 セオドア様が褒めてくださって心が少し持ち直したところで、ようやくセオドア様のご両親が来られた。



セオドア様、結構真面目な方です。


どうやら、ミーシャに逃げるデイジーのことを相談したとか、してないとか?


読んでくださって、ありがとうございます。

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