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第16話 クジの細工に必要なものは

 

 セオドア様にそう言われ、

 ビビりながらも、

 「2年生のベンジャミン様と、ソフィア様です」

 とハロルドさんがおっしゃった。


 確か、ソフィア様とベンジャミン様のお2人はペアでいらっしゃったはず。


 情報に弱い私でも知っているほど有名人だ。

 美男美女で、彼らが1年生の時の最終結果で1位だったはずだ。


 そして、2年生の中間発表でも1位でいらっしゃった。


 お2人はそうして、話し始めた。


 お2人は特待生同士で仲良くなり、きっと自分たちが一緒のペアになれば、上位にいけて就職斡旋をしてもらえると考えて、クジのシステムを調べて細工をし、ペアになったのだそうだ。


 思った通りペアになれて、お互いのおかげで中間発表で2位になれて喜んでいたら、急にソフィア様とベンジャミン様に話しかけられて、不正してペアになったことをバラされたくなければ、1位の私たちの不正を暴いてほしいと言われたのだそうだった。

 怪我などトラブルになるようなことは避けてほしいと言われていたのに私が怪我をしてしまって焦ってしまったのだと言う。


 「そもそも不正でもないのに、そのことを知らない者にそのように言うなんて悪意しかありませんわね」

 リタ様が口を挟まれる。

 リタ様、たまにはいいことを言う。


 ちなみにジョシュア様はリタ様の横にしっかりいらっしゃるが空気のようになっている。


 私も今ほとんど口を挟めてないので同じようなものである。

 勝手ながら親近感である。


 「あ、あの……脅されたとはいえ、僕たちのやってしまったことはセオドア様やマーガレット様、リタ様を巻き込んでしまいました。しかもマーガレット様には怪我をさせてしまって……。本当に申し訳ありません」

 ハロルドさんがそう謝られた。

 アメリアさんもこくこく頷いている。


 「君たちがデイジーを傷つけたことは許し難い。だが、クジを細工することを許されていることを知らないものがそのことを不正と思ってしまってしまうような今の状況は、やはりおかしいと俺は思う。……情報を得ることも仕事のうちだということみたいだが、特待生にはその情報を得るための基盤が欠けていると思う。もしよかったら、これからは君たちが後輩のためにその基盤になってあげてはもらえないだろうか? 今回のことは黙っておくから、これからもお互い頑張ろう。決して1位は譲らないが」


 セオドア様がそうおっしゃる。

 やはり賢そうにお話になっている顔が格好いい。

 セオドア様の顔、本当に好きだ。


 「私のことはお気になさらず。元気ですので!」

 私はついあまりにも空気すぎたので入ってみた。

 

 「ありがとうございます……」

 お2人はピンピンしている私の方を見てほっとされている。

 

 「よくはわからないが、リタを閉じ込めたのは俺も許せないな」

 ジョシュア様も私と同じでアピールで入ってこられるが、それは今いう話じゃない気がするので、ちょっと黙っていてほしい。

 

 ジョシュア様はリタ様に思いっきりスルーされて、

 「でもどうして2年生の1位のペアがそんなことなさるのかしら?」

 と聞かれる。

 ジョシュア様は特に悲しそうな顔でもない。

 リタ様と一緒にいたら慣れるのかもしれない。


 「おそらく、1年と2年の中間発表で1位だったペア同士で戦うからだろうね」

 

 ……た、戦う?


 「ああ、ペア同士で戦うあれですね! 学園祭のメインの!」

 リタ様が嬉しそうに言う。


 私は全然知らなかった。

 特待生のお2人もしらないだろうかと思っていたが、それはさすがにご存知だった。

 

 どうやら、中間発表の5位までの上位のものが学年対抗で戦うという出し物が学園祭であるようだ。


 なお、3年生は就職などでお忙しいのでお客様となるので、実質1年生と2年生で色々出し物をするのだそうだ。


 「とりあえず、かなり遅くなってしまったからそろそろ解散しようか。もしベンジャミン様とソフィア様から何かあれば連絡をもらえるかな?」

 セオドア様の言葉にお2人は頷いた。


 「デイジー、君を送らせてもらえるかな?」

 「セオドア様、ありがたいですが、今日はもういいですよ。遅いですし。私家近いので」

 すでに遅くなっているのに、私を送っていたらセオドア様はなかなか帰れない。


 「いや、心配だから送らせてほしい」

 

 「そんな心配されることないと思いますけど、そこまでおっしゃるなら」


 となり、従者たちにかこまれた馬車で送っていただくことになった。

 慣れない。


 徒歩道では早いが、馬車道でいくと遠回りになるため、送っていただくと正直時間はかかりすぎてしまう。


 一応馬車の中は2人きりだ。


 私は他の人がいらっしゃったら大丈夫なのだが、2人きりはまだ全然ダメで、めちゃくちゃ緊張してしまう。


 「デイジー」

 「はははい」

 めっちゃ噛んでしまうの久しぶりだ。


 「今日みたいなことがあったら、すぐに俺に相談して欲しい。絶対に俺がどうにかするから必ず言うこと」

 真剣な目で、でも紫の瞳が優しく揺れるので、私はどんどんドキドキしてしまう。


 「わかりました。ありがとうございます。でも私、本当にセオドア様の足を引っ張ってますね。1位になれたのもセオドア様のおかげだし。勉強不足で情報も知らないし。落ち込んでます、私。私がペアじゃない方がよかったんじゃありませんか?」

 ドキドキしてしまって緊張しながらもどうにか話ができた。


 セオドア様がびっくりしたような顔をして私を見る。

 何か変なこと私言ったかな?


 「何言ってるんだ。ペアって相性がいいもの同士でなることで、魔力も相乗効果でどんどん増えるんだ」


 「えっ! そんな倍々ゲームみたいなことあるんですか?」


 「デイジー、女の子が倍々ゲームとか言うもんじゃない。まぁそうだな。だから普通は相性の良い人物をまず調べるところから始まるんだ。そしてペアのクジを細工する」

 セオドア様が説明してくれる。


 「相性の良い人物ってどうやって特定するんですか?」

 ふと興味が湧いてきいてみる。


 「俺の場合は、一目見て、好ましいと思う人物から調べたな。相性がいい人物とは惹かれ合うらしい」


 「セオドア様の顔がどストライクだったのって」

 

 「どうやら、ペア同士同じ程度の強さで惹かれ合うらしい。だが、君が逃げるから、俺は本当はペアとしての相性は悪いんだと思っていたんだ。クジもさすがに相性が悪いものとはペアにならないようになっているし、もちろん家系的に許されないのに、どうしてもデイジーとペアになりたくて色々してしまった。今思えば案外何もしなくてもペアになれたかもしれないな。それでもペアを確定させるために俺はやってしまったんだろうがな」

 そう話されるセオドア様はちょっと怖い顔をしている。


 「ちなみにペアの細工ってどうやってやるんですか?」

 

 「呪術みたいになるから詳しくは省くが、必要なのは2人の唾液だよ」

 

 「もしかして、あの、時に?」

 ファーストキスを奪われてしまった、あの時に?


 「本来は飲み物のコップを拝借したりするので大丈夫らしいんだが、キスをするとさらに効果があがるらしい。まぁ可愛すぎてついしてしまったんだが。それにデイジーのファーストキスが俺でよかった。ちなみにファーストキスであるということもその効果をあげるんだ」


 「もしかして、セオドア様もファーストキス?」


 「当たり前だろう」

 至極当然のようにおっしゃる。


 私、こんなに格好いいからセオドア様は初めてではないんだって思っていた。

 それはとても嬉しいかも……。


 そうこうしていると、あっという間に慎ましやかな我が屋敷に到着する。

 

 馬車が止まると、向かいあって座っていたセオドア様が横に座られ、そして彼の顔がどんどん近づいて、キスをされた。

 何か甘い飲み物を飲んだわけでもないのに、甘い気がする。

 なんだか、鼻の奥がツンとする気がする。

 フワフワする。


 「そんな話をしたらどうしてもしたくなった。俺以外に絶対させたらダメだし、そんなキスを期待してるような顔も見せないでね」

 そう言うセオドア様の顔は真剣だ。


 たしかに私若干期待していたかもしれない。

 いや、しかしあえていいたい。


 「私、期待してる顔なんてしてませんから!」

 私はやっぱり素直じゃないのだった。


読んでくださって、ありがとうございます(*´꒳`*)


ようやくデイジーとセオドア、2人きりになれました。

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃみんなペアにこだわるよなぁ
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