第2話
「助けなきゃ。凛は絶対に俺が助けるんだ。また2人で一緒に遊園地に行こう。そのためには、誰かが脳死しなきゃいけないんだ」
そんな考えが結矢の頭をよぎった。
今日は天気がいい。みごとなまでの快晴だ。
春にしては少し暑いが、通学路は静かで心地良い。
「結矢ぁぁぁぁぁおはよぉぉぉぉぉ」
前言撤回。静かではなかった。
彼は香狩 駿
テストではほぼ毎回学年1位、模試では県内で一桁順位に入ったこともあるほど頭がいい。そして、いつもよく分からない発明や実験を繰り返している。ちょっと変な人だ。
学校に着いた。チャイムが鳴る。
「ねぇ、お兄ちゃん、私、死んじゃうのかな…」
凛の声が聞こえる。
「おい結矢起きろ!授業中だぞ!」
なんだ、夢か。
窓の外を見ると、太陽に照らされたプールがいつもより綺麗に感じた。
「結矢〜、お昼一緒に食べよ〜」
結矢は中学校から一緒の5人で仲良くしていた。
声を掛けてきたのは天宮 美沙
肩ぐらいまでの黒髪の美人系。
「結くん、こっちこっち!」
この人は棚橋 梓
ちょっと茶色い髪のショートヘアの可愛い系。
「来ないのか〜?先に食べちゃうぞ〜」
この人は奈瀬 大和
金髪で見るからにチャラいが、意外と真面目な人だ。
この3人に、結矢と駿を入れた5人だ。
もちろん、結矢は妹のことをみんなには話していない。
帰り道、空が少し橙色に染まり始めたころ、駿が妙なことを言い出した。
「結矢、人を脳死させる薬、興味ない?」
いやいや、そんなものあるわけないだろ。
普段の結矢ならそう思うだろう。
だが、今の結矢は妹を助けることしか考えられなかった。
もしそんな薬があれば、その薬を誰かに飲ませれば、妹は助かるんじゃないか。
結矢はそう考えた。考えてしまった。
「興味あるけど、そんなものあるのか?」
そう答えると、駿は驚いたような顔をした。
「結矢、今やばいこと考えただろ?」
駿が言った。
帰り道、結矢は駿に妹のことを話した。
気付けば、空は橙色ではなくなっていた。