52話:新魔王城の新メンバー 8
デリアはベッドに横たわり、しばらく魘されていた。
これを浴びたら勇者が可哀相かもしれないと思うほどの、魘されぶりだった。
やっぱり余計なプライドなんてないのが一番である。
「デリアさんがプライドを貫いたのが羨ましいからって自己弁護しなくてもいいんですよ?」
「なぜ心の中の台詞のさらに裏にある思いまで読み取るんだ」
「それほど読み取れても、情報量がそう多くないのがすごいですよね。薄っぺらいというか」
「そこは裏表がないと言っとけよ」
褒め言葉まで罵り文句に変えるな。
まあ単純なのは自覚がないでもないが。
魔王一族だから、思ったことをそのまま口に出しても、嫌われたりしないのだ。
「してますよね」
…………敬遠されたりは
「してますよね」
…………問題にはならないのだ。
「あなたがコミュ障である問題の大きな原因だと思いますけどね」
「お前に言われたくないな」
悪口が口から垂れ流しじゃないか。
「思考からはだいぶんマイルドになってますから」
「お前の心の中は一体どんな闇になっているんだ……」
「あなたは何も考えてないですもんね」
「こいつよりは全然いいだろ?」
寝込むデリアに顎をしゃくると、
「失礼にゃ!」
いきなりデリアが飛び起きた。
聞いていたのか?
こんなに魘されながらも?
「誰が脳内すっからかんにゃ」
「そこまで言ってないよな。だいいちお前自分で馬鹿なのを肯定してたじゃないかよ」
「ぐ、そこを突かれると弱いにゃ……」
どこも突いてないよ。
俺が口達者すぎたみたいに言うんじゃない。
それにしても、恐ろしい回復力だ。
馬鹿なやつのほうが怪我の治りが早いというのは本当のようだ。
「ところでお礼はにゃにをすればいいにゃ?」
倒れていたところから回復した瞬間の質問がこれか……。
実はマゾか?
「やっぱりあなたと似ているじゃないですか。侠気あるぶんデリアさんのほうがマシかもしれませんね」
「頼むから俺にまた余計な属性を増やさないでくれないか?」
ロリコンにナンパ王に風俗王にマゾまで入ったら……
「意外と違和感ないでしょう?」
「なんかもう最悪な感じでピッタリハマっちゃってんな」
「コミュ障も忘れないでくださいよ」
「その中だとマシに思えるな」
俺の根深い悩みなんだけどなぁ。
「じゃあウチはお前を罵ればいいにゃ?」
「いやいやいや待て、もう罵り要員は余ってるんだ」
「なんですか人をサディストみたいに」
「お前は自分の言動を百ぺんくらい見直してみるべきだな」
「毎日見直してますよ。あそこはもうちょっと厳しく言ってあげられたなぁ、とか」
「お前はそもそも向いてる方向がおかしかったのか……」
方向性が、俺が求めているのと180度真逆である。
で、デリアの処遇か……。
正直あの侠気を見せられたら、もういいよ、としかならないのだが、本人が求めているなら何か考えてみよう。
「家政婦とかどうですか? 私もあなたも料理できませんし」
デリアは料理ができるのか?
さっきのは食材が悪すぎて料理の腕なんか判別している場合じゃなかったんだが。
「料理とか洗濯とかはできにゃくもにゃいにゃ」
「じゃあ試してみるか。たぶん俺たちよりはマシだろうし。給料は出すからな」
「よろしくにゃ」
俺は起き上がったデリアと硬い握手を交わした。




