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3話:地下書庫にたどり着かない 2

階段である。

 階段。まさかの階段。

 真っ直ぐに、地下深くに伸びている。

 ……これ作った性格悪いやつ誰だよ。


 俺は適当に老人の顔を思い浮かべて、心中呪いの言葉を送る。

 老人の顔は、歴代魔王の合成である。

 どうせ、性格の悪さから言っても、作ったのはその誰かだろうから。


 また扉が見えた。

 俺は超嫌な予感を抱きつつ扉を開けた。

 

 予想通り。階段である。

 ……地下書庫行くのにここまでする必要あるか?

 魔王の部屋に辿り着くまでとかなら――俺は嫌だが――ともかく、地下書庫に行くのに悪質な階段を用意して、勇者たちにどれほどの影響があると考えたのだろう。


 扉。

 階段。

 扉。

 階段。

 扉。

 階段。

 扉。

 階段。

 ……

 …………


 俺はキレた。

 さすがにキレた。


 俺の魔法がが下手というのは、ミスが多いというだけ。

 無詠唱で使える魔法のレパートリーは普通の魔人より遥かに多い。


 俺は地下深くを思い浮かべて、怒鳴った。


転移(トランス)!」


 眩い光に全身が包まれた。

 

 光が薄れてゆき、俺は目を開ける。

 魔法は失敗。

 そこは、地上であった。

 子どもが、はしゃぎまわっている。

 ……こうなると思ったから嫌だったんだ。

 

 しかたない、魔王城まで歩いて帰るか。

 ふと遊び回っている子どもたちを見た俺は、目を剥いた。

「げ」


 人間。人間。圧倒的な人間である。

 待てよ、本当に人間か? 

 魔力がなくて、角も翼もないだけのただの魔人かもしれない。

 ――世間では、それを人間と呼ぶのだった。


 魔王城下の街だと思ったら、まさかの人間領である。

 地下深く行き過ぎて星の反対側まで来てしまったのかもしれない。

 ……これは歩いて帰れるはずもない。

 もう一度、失敗覚悟で魔法を使おう。

 幸い、魔力量だけは歴代の魔王の中でも屈指の量がある。


 呪文を唱えようと口を開きかけ、俺は興味津々にこちらを見つめている子どもたちに気づいた。

 人間といえば、敵である。

 攻め滅ぼすべき、敵である。

 ただ、子どもなんだし、そう敵視することもないだろう。


 俺は彼らの方を視線を向けて、第1,5形態――牙と角だけ生えた状態――に変化し、厳かに告げた。


「我は魔王である。今日は人間界の様子を偵察に来ただけで、もう帰る。我に会いたければ魔王城まで来ると良い」

 

 親父をイメージして語りかけたせいで、変な内容になってしまったが、子どもだしそこまで気にしていないだろう。

 予想通り、子どもたちは目を輝かせた。


「エー、ほんとに魔王なの?」

「見ろよ、角生えてるぜ」

「かっけー」

「ん? 前見たときには魔王ってあんなじゃなかったような? 若そうだし、代替わりしたのかしら」


 無邪気な反応である。

 一人何か恐ろしい呟いている?

 ――気のせいである。

 格好つけて適当に言った内容がたまたま当たっているとかそういうことだろう。 

 まあ念の為、早く姿を消したほうが良さそうだ。

 一人泣いている少女がいて可哀想だと思ったが、俺が慰めても何の効果もないのは分かるので、俺はただ呟いた。


「さらばだ。転移(トランス)!」

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