22話:本当に主従関係は逆転していないのか 3
俺に続いて門をくぐったジュディは、広間を見て歓声をあげた。
「わあ、広いですね!」
彼女がひとしきり部屋を歩き回って満足したあと、玉座の後ろの扉を開けて、中に少女を案内する。
……たぶんあの財宝や金の数々を見せると絶対ここに住むって言い出すよな。開けるのはやめておこ
「金銀財宝ですか、いいですね。どのドアですか、ここですか?」
俺の心を読んだ彼女は、一発で財宝の部屋を引き当てた。
……こいつと一緒にいるのもう嫌だ。
「何言ってるんですか、一生ついていきますよ」
柄にないことを言う少女の目は部屋いっぱいの財宝に釘付けになっていた。
判断基準がわかりやすいやつだな……。
「ねえ魔王様」
「部屋はやらんぞ」
先手を取って釘を刺しておく。
やはり思ったとおりのことを考えていたらしい。
ジュディは不満げな顔をした。
「心が狭いですね。じゃあ借りるだけならいいでしょう?」
「ダメ」
それを許可したら、淑女と同じ部屋で寝るつもりですか、なんて言って追い出されるに決まっている。
「チッ、さすがにバレますか。仕方ないですね――」
お、珍しく諦めたか?
「――最終手段をとります」
ジュディの最終手段――?
嫌な予感しかしないのだが。
戦々恐々とする俺の前で、意外とジュディは、口を開くでもなく、着ていたワンピースをいじり始めた。
少し肩を露出させ、スカートの部分に皺を作った彼女は、俺を見上げた。
「この状態で悲鳴をあげます」
「部屋はさしあげます」
えげつない手段を取りやがる。
魔界の民に魔王はロリコンという噂が広まったりしたら俺はもう生きていけんぞ。
「ったく、結局こうなると思ってたんだ」
「じゃあ最初から素直に譲っておけばいいものを。けど、展開が読めちゃうようじゃあらすじ詐欺ですね」
「あらすじ?」
「いえ、こちらの話です」
異世界の用語、ということだろうか。