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20話:本当に主従関係は逆転していないのか 1

 魔王領の将来に不安を抱いた会議後。

 時間は夕方。

 もうすぐ夕食だが、その前に一旦部屋に戻っておきたい。

 俺はジュディに問いかけた。


「お前、魔王の家族用の部屋でいいか?」

「う〜ん。両方見せてください」


 俺は嫌な予感を感じつつも、渋々案内する。

 案内しないと、部下を扇動して魔王の座から引きずり降ろされそうな不安を感じたからだ。

 本当に、役に立つどころか不安にしかならない会議だった。


「ここが魔王の部屋、最上階だ」

「一番上は五回なんですね。見晴らしが良さそうです」


 嫌な予感しかしないんだが。


「ここ、俺の部屋だからな?」

「何言ってるんですか、義兄弟の契りを結ぶんでしょう? だいたい、私が魔王の冠持ってるんですから私魔王でいいんじゃないですか?」

「絶対よくない」


 ワンチャンどころか50%くらいは認められそうな気がするのが超怖いがな。

 最悪そのときのためにも少し媚を売っておいたほうが良さそうな……。


「うわ、なんですかこの白亜の門。豪壮でいいですね」

「ガーゴイル、こいつの入場許可を登録しておいてくれ」


 門の両脇に立つうち、片方のガーゴイルがジュディの方に視線を向けた。

 ジュディは怯えるかと思ったのだが、逆に目を輝かせた。


「うわぁ、なんですか彼。かっこいい! こんにちは、ガーゴイルさん」


 男なの? 

 口の達者さは年齢(見た目の)離れしているかと思えば、意外と純真なところもある少女である。

 ガーゴイルに話しかけるなんて……ガーゴイルにビビらないのが純真なのかどうかは確証が持てないが。


「おいジュディ、ガーゴイルに話しかけても返事は返って来ないぜ? ゴーレムの一種だからな。俺も話しているのを見t――

「こんにちは」

 ――喋りやがった」


 俺呆然。


 ガーゴイルは喋らないというのが魔界の定説だったのだが…………。


「名前はあるんですか?」

「ガーゴン」

「いま適当に作ったんじゃないのか!?」

「魔王は黙っていろ。俺は今この少女と話しているんだ」

「私はジュディです。ガーゴンさんですか、いい名前ですね!」


 いい名前ですかね? 

 俺にはどう聞いても適当にひねり出したようにしか聞こえないのだが。

 あと本当に魔王城の魔人やゴーレムはそこの主を敬わんな。

 俺が最高権力者のはずなのだが。

 

 ああ、地下図書の司書さん――あれ、名前なんだっけな……よく考えれば名前聞いてない……。

 

 自分のコミュ障ぶりと、今の今まで思い出さなかったこと両方に愕然である。


 それに対して――

「そちらは奥さんですか。綺麗ですね」

「あら、ありがとう」

 あちら側はなんと雰囲気がいいことか。


 コミュ力半分くらいでいいから分けてくんないかな……。

 あれくらいになるにはガーゴイルの雌雄を見分けなければいけないのか……。

 二人(?)の区別すらつかない俺には不可能な芸当だな。


 和気あいあいと話しているのを、俺は疎外感を感じながら眺める。


「ジュディちゃんはどうして魔王なんかと一緒にいるんだい?」

「異世界から召喚されまして。そこの魔王様に土下座されて相棒になってくれと頼まれまして」

「待て待て待て」


 とんでもないデタラメを話していた。

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