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18話:魔王城会議 2

「ところで、彼女の名前は?」

「オレヮロリ・ウォスキナーノ」

「は?」


 俺が少女の名を答えると、会議室は騒然となった。

 何かいけないことがあっただろうか。

 ラファエルが少し興奮げにこちらを見る。


「やはりロリコンなのではないですか」

「は?」


 こっちが呆然である。

 なぜ少女の名を答えただけでロリコン呼ばわりされなければいけないのか。


「だって今、自分の口でそうおっしゃいましたよね」

「え? 言ってないけど」

「おっしゃったじゃないですか、『俺はロリを好きなの』と」


 …… …… や っ て く れ た な 。


 ことの真相にやっと気づいた俺は、隣に座る少女を睨みつける。

 彼女は澄ました顔でこちらを見ていた。


「やはりロリコンなんですね」

「こんにゃろ」


 我慢の限界がきた俺は、彼女の頭を両側からグリグリした。

 もちろん力はほとんど入れない。

 きゃあきゃあ言いながら楽しそうに笑っているから、やりすぎということはないだろう。

 お仕置きになっていないが。


 俺が開放すると、少女は頭を抱えて涙目でこちらを見上げた。


「婦女の頭を気安く触るとはどういう了見ですか!」

「ん? どこに婦女がいるんだ?」


 俺はわざとらしく周囲を見回す。


「ここにいるでしょう、ここに」

「俺に見えるのは親切な魔人を騙した極悪な人間だけだな」 

「あれ、私には親切な魔人が見えませんね」

「ここにいるだろ、ここに」


 魔王という立場のせいで、子供の頃からこうやってふざけ合うような友人はいなかったので、こういうやり取りは少し楽しかったりもする。


「仲がよろしいようですね」


 気づけば、会議室中の人間が俺たち二人を見ていた。

 しまった、少女とじゃれ合っていては、魔王としての威厳も何もあったものじゃない。

 俺は慌てて取り繕う。


「全くそんなことはない。さあ、次の質問は?」


 その後は、会議は順調に進んだ。


「もう一度聞きましょう、その少女の名前は?」

「ジュディという」 

 

 意外と平凡な名である。

 

「魔王様はその少女をどうするつもりですか?」

「もちろん相棒とする。彼女の了承は得ている」

「民草にはどう説明するつもりで?」

「もちろん事実をありのまま説明する」

「本当ですか!?」

「もちろんだ」

「魔王様、魔王様がロリコンだと知れ渡るのは外交上避けてほしいのですが……」

「そんな事実はない!」


 皆しつこすぎる。


「召喚の儀をすでに執り行わられたというのは真ですか!?」

「ああ。その結果彼女がここにいる」

「では代替わりの際の二つの儀式のためだけに存在する我ら魔王代替り儀式部の準備はどうなりますか!?」

「知らん」

「早いほうがいいということで、戴冠の儀は明日執り行ってもよろしいでしょうか!?」

「早いほうがいいということで、儀式はもうやった」

「なんと!? 誰が魔王様の頭に冠を載せたというのですか?」


 なぜそこをそんなに気にするのか。


「自分で載せたが」

「そんな!? 戴冠の儀というのは結婚相手を決める儀式でもあるのですが!?」

「え、マジで?」

「真ですとも。一人で載せたとなると一生結婚する気がないと取られますよ!?」

「何!?」


 俺のおねいさんハーレムの夢は!?


「最低ですね、あなた」

「ん、ちょっと待てよ。お前らは許嫁を明日までに決めるつもりだったのか?」

「そちらの少女と結婚なさるのでしょう?」

「違う!」

「それはそうと、我ら儀式部の存在はどうなるのですか!?」

「潰せ」

「魔王様、人間の少女を召喚というと、あちらでは誘拐されたように思われているのではないでしょうか」

「そこは外交交渉で任せる」

「しかし……彼女のコメントまたは直筆書簡はもちろん、外交舞台の用意に通告に……」

「諸々は外交部に任せる」

「結婚の手続きは任せられても困りますが」

「誰もそんなことは任せてない!」


 ルーカスは常識人だったはずなんだが?


「結婚の準備は城内管理部でやろう」

「やるな! 結婚するとは一言も言ってないぞ」

「しかし……人間領から少女を連れて言った理由を納得させるにはそれが一番手っ取り早いのですが」

「手っ取り早いで人の結婚相手を決めないでくれ」

「ここは我が隠密部を動かしましょう。心配しないでください、一日で家族の場所を探しだし、さらに一日で町ごと消し飛ばしてご覧になりましょう」

「やめろ。彼女の家族に手を出すな。これは命令だ」


 魔王として初の俺の命令は部下の暴走を止めることか……。

 先行きが思いやられる。


「それで、召喚の理由はどうします?」


 外交上の問題か……。

 たしかに、魔族が人間の王に誘拐されたら、魔王としては戦争という手段を考えざるを得ない。

 なかなか悩ましい問題である。


 そのとき、ジュディが口を開いた。


「その心配はないですよ」

「なんで?」


「私、異世界人ですから」

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