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17話:魔王城会議 1

「では、これより魔王城会議を始めます」

 

 巨大な円卓を囲むのは、魔王の俺、オレヮロリ、四将軍、そして財務部など各部の代表者。

 これが魔族全体としての意思決定が行われる会議である。

 俺は魔王として出るのは初めてだが、次期魔王として何度か出席したことがある。


 俺がまた何かをやらかしたという情報はあっという間に広まったようで、召喚の儀から数時間なのに集まったすべての人間が、「こいつ大丈夫か」的な不安げな目線をこちらに向けている。

 

 俺の隣で、子供用に調整された椅子に腰掛ける少女もまた、少し不安げな顔をしている。

 安心させてやりたいが、この会議では威厳のある魔王像を演出したくもあり、少し我慢してもらう。


「発言のあるものは挙手を」


 ちゃんと戻ってきてくれた司会のラファエルが告げるとともに、バッとその場のほとんど全員の手が挙がった。

 皆意欲があっていいことである。


「では、ヴァディス将軍」

 

 手を挙げている魔人のなかで、一番位が高いヴァディス爺さんをラファエルが指名する。

 どうせ、誰を指名しても来る質問は一緒だろうが。

 解毒魔法を使用したらしい、つい先程まで酒を飲んでいたヴァディスは、素面に戻っている。


「魔王がロリコンという噂は本当かの?」


 そ こ ?


 しかし、挙手していたほとんどの魔人が、同感を示すように頷いている。

 俺の噂ってそんなに広まってんの?

 あとそれは他のどんな議題よりも大事な問題なの?


「そんな事実はない」

「そうか……。ミシェルが言っていたから本当のことかと思ったんじゃが。本当だったら儂にちょうど適齢のひひひ孫がいたのじゃがのう」

「ミシェル?」

 

 俺はミシェルの方を睨みつける。

 自分が腹を立てたからと根も葉もない風評を流さないでほしいのだが。


 ミシェルは平然とした顔でこう嘯いた。


「だって、アタイよりそっちの少女のほうが好きなんでしょ?」

 

 その場にざわめきが広がる。

 俺ってそんなミシェルを好きなように見えるのだろうか。


「それはそうだが」


 ざわめきはさらに大きくなった。

 だから皆どれだけミシェルを高評価しているんだ?

 そもそも歳が分からない時点でストライクゾーンも何もなぁ。


「魔王様! 私の娘は今100歳です!」

「ずるいぞお前! 魔王様、僕の娘は150歳ですが器量はいいですよ!」

「年増は黙ってろ! 俺の娘はなんと39歳だ!」

「魔王様、我が息子は性別は男ですがそんじょそこらの美少女より遥かに可愛いですぞ! ぜひとも側室に!」


 騒がしいことこの上ない。

 これが、魔族全体としての意思決定が行われる会議である。

 誰かおかしいと思えよ……。

 

 普通は司会が止めるものだが、今回は司会が向こう側。

 皆はヒートアップするばかりで、あちこちで喧嘩が起ころうとしている。


「黙れ!」

 

 魔王らしく一喝してみたが、誰も聞かない。

 隣のオレヮロリが呆れた顔を向けてくるだけである。


「あなた、魔王というのは嘘ですよね」

 

 その言葉に、俺は奮起した。

 魔王の威厳に賭けて黙らせてみせよう。

 

「ねえミシェル、魔法で黙らせて」

 

 と言っても人任せだが。


「なんでアタイが」

「もとはと言えばお前が嘘を垂れ流すからだろう」

「チッ、分かったよ」

 

 オレヮロリの軽蔑の視線が少し強くなった気がしたが、作戦自体は成功した。


爆音(ロア)


 ミシェルが一言呟くと、部屋中に破裂音が響き渡った。

 鼓膜が破れそうなほど強烈な音に、魔人たちは静まり返った。

 一旦静かになると、頭の方も冷静になったようだ。


「コホン、発言者は挙手することを徹底するようにしてください。発言がある者! ──ルーカス外交部長!」


 ラファエルに指名され、外交部長ルーカスが立ち上がる。

 人間との折衝を本業にしているだけあり、魔王城の中では常識人として知られている。


「その少女は人間ですよね?」

「そうだ」

「なぜ魔王城に人間が?」

「召喚の儀で出てきたんだ」


 またもざわめく会議室。

 しかし、今度はラファエルが睨みを効かせたため、騒ぎには発展しなかった。


「しかし……失礼ですが、魔法に不備は?」

「それは私が答えましょう。魔法陣の痕跡などを調査しましたが、明らかな間違いはありませんでした」

 

 ラファエルがそう言い切る。

 俺にミスがなかったというのはいいことだが。それでは新たな疑問が生じる。


「しかし……それではどうして人間の少女が……?」


 答えるのはまたもラファエル。


「それは不明です。ヴァディス将軍によりますとこれまでも魔人が召喚された例はあり、その発展として考えれば人間の少女を召喚することもありえないわけじゃないのではないでしょうか。──教皇レニアーデ」

 

 挙手したのは、見た目──実年齢はともかく──美少女のサキュバス、レニアーデ。

 グラマラスではあるのだが、天然でおねいさんという感じではないのが残念。

 

 指名されたレニアーデは、おっとりと首を傾げた。


「魔神様の御業と考えればよろしいのではないでしょうか」

「魔王様が人間の少女を相棒として召喚したのは、天命だと言いたいんですか?」

「はい、まさにその通りです」


 オレヮロリと出会ったのが天命だって? 

 性の悪い冗談はやめてくれ。

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