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12話:本題にたどり着かない 3

 グダグダになってきた会話を仕切り直して、俺は改めて少女に告げる。


「俺は魔王だ」

「はぁ、とりあえずそうだと仮定しましょう」


 信じていないことが丸わかりだが、とりあえず話を進めよう。


「で、俺はお前を、使……そうだな、相棒として呼び寄せた」

 

 少女を指定したわけではないのだが、それを言うと魔法を間違えたんじゃないかと言われそうなので言わない。


「魔法を間違えたんですね」


 嫌な能力である。


「いや、間違えたつもりはないんだが……。お前が出てきた理由は俺にもわからん」


 魔法書をカンニングしながら行ったのだから、魔法陣も呪文も正確なはずである。


「あなたの言い訳はどうでもいいんですが、呼び寄せてどうするつもりですか?」

「呼び寄せて、て?」


 呼び寄せて、俺はどうすればいいのだろうか。

 実力で相棒として認めさせる?

 戦うの? この少女と?

 いくらなんでも、彼女の死亡確定である。


「殺されたら私はあなたに取り憑きます。あなたは数日もしないうちに頭をタンスの角にぶつけて死ぬでしょう」

「およそ魔王とは思えない死に方だな……。いやまあ、俺だって鬼じゃない。殺すつもりはない」

「鬼じゃなくても魔王なんじゃないですか? 殺さないならどうしようと……は、まさか」


 彼女は驚愕の表情で俺を見つめ、自分の体を抱いて後退った。

 

「襲うつもりもない! 俺のタイプはロリじゃなくて巨乳の優しいおねいさんだ」

「童貞感丸出しですね」


 いちいち胸に刺さる感想を告げるやつである。


「で、お前はどうしたい?」

 

 やっと聞くことができた。

 この本題にたどり着くまで、どれだけかかったか。


「四話くらいですかね」

「え、四話がどうした?」

「いえ、こっちの話です。――そうですね、相棒がいなかったらあなたも困るのでしょう? 相棒になってもいいですが、条件があります」

「なんだ?」


 条件付きでの、承諾。

 当然断られると思っていた俺は驚きながら訊く。


 条件とは何だろうか。

 世界の半分――つまり魔王領全部――を欲しいと言われても無理だが、できる限りのことなら叶えよう。

 俺も、召喚の儀を失敗した、との不名誉がなくて助かる。

 

 ――ん? 今、俺は大事なことを見落とした気がした。

 何だろう。やけに気になるが。

 俺が不安を感じているそばで、少女は口を開いた。

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