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Dancing On Gaia   作者: チーズ・ブルーノ
Without Human Nature
1/1

流れ落ちるように

この度小説初投稿となります‼


ブロロロロロォ・・・・・・・

「スフゥゥ・・・ ンン?」

まるで鼓膜を引っ掻くかのような歌声が耳に入り、目が覚めた。この曲は・・・Smells like teen spiritか。ニルヴァーナの名曲、聞いていて思いの外心地良いもんだな。

「起きたか、コナー。」

「すいません、ウィルソン巡査。寝不足で・・・」

「俺よりもか?」

と言った体格の良いスキンヘッドは俺にひどい隈を見せつけてきた。

「運転替わりましょうか?」

「そうしたいが、あともうちょいで着いちまうからな。

銃の点検しとけ。」

うい、と答えた俺はホルスターからS&W4506を抜き出して、ストリッピングを始めた。

車道の脇をチラリと見ると、美しい柳の雑木林の奥に清流が流れている。


「いい場所ですね。」


返事はない。






---------------------------------------






俺がノースダコタ州警察に就職してから大体3年になる。ノースダコタ州はアメリカ50州の中でも5本指に入るレベルに治安が良い。悪く言えば何も無いということだが、警察側としてはうれしい限りで、この3年これと言った大事件には出会して来なかった。


2週間前までは。


原因不明の男女4人失踪事件、とモンタナ州警察から連絡が来た。ノースダコタ州とカナダの境に位置する市、アスペンハウントに、観光しにいった息子とその友達の一行が帰ってこない、とその両親から通報があったらしい。一度例の息子から電話が掛かってきたらしいが、一瞬の呻き声と同時に声は止まり、数秒後、

「大地母神はお怒りだ。」

と、謎の男声が奇妙なメッセージを残し電話が切れたという。失踪事件というより誘拐事件に近いだろうか。


「まぁしょうがねえ、署からでて現地調査なんて俺もしばらくぶりだしな。こんな朝っぱらから車走らせなきゃなんねぇんだ、レッドブルの一本でも飲んでくりゃ良かったな・・・」

「大体どこら辺なんですか。」

「もうすぐそこだぞ。電波の発信源からしてこっから100m先の教会辺りらしい。犯人らしき輩はどうやらキチガイみてぇだな。あぁコワイコワイ・・・」

「キチガイ相手とか初めてですよ・・・」

署から命じられたのは、そのキチガイの逮捕。やむを得ない場合は射殺、だ。何気に人に銃を向けるのは初めてだが、競技射撃を嗜んできたのでいざという時には自信がある。


「着いたぞ。お、お前ストリッピングの手際いいな・・・」

「慣れてるんですよ。指削れる位弄ってるんで」

セーフティを掛けながらそう言って、銃をホルスターに閉まった。今車を停めたのは教会の裏側から30m程離れた所だ。


「もし教会内に居るんなら、犯人に銃口を向ける。フリーズ、と叫ぶ。硬直したら手錠を掛けて連行、攻撃してきた場合射殺。んの後被害者一行を探す。分かったな?」


「了解です。」




-------------------------------




ドアを開け足を踏み出し、教会の入り口に向かって並んで歩き始める、がしかし、十数歩歩いた時巡査の腕が俺の行く手を制した。

(なんだ、チキってんのか?)



「なんすか、急に。」

「黙れ!おい・・・マジかよ、ちょっと待ってくれ・・・!」


巡査の視線を辿るとそこには・・・異常な光景がひろがっていた。


「ッ!!?」


体に泥を塗りたくった男、そしてそいつを囲むように両手を合わせ地面を見つめる夥しい数の人像、そして男の前には男二人と女二人が服を剥がされ貼り付けにされ・・・







焼かれていた。








「まさか・・・」


そう口に出すと同時に、泥まみれの男は横に置かれたマチェットを手に取った。


「あぁ、ガイアよ。大地母神よ。愚しき我等を御許し下さい。御神(みかみの怒りは我等が身心に染み渡り、我等の穢れを浄められました。我等はその御恩に如何に報いることが出来ましょう。」


(一体何を唱えてんだ?)嘆きとも祈りともつかぬ声色で、火の放つ光を受け鈍い光を放つマチェットを掲げた男は、唄い続ける。


「我等は大地を感じ、考えます。御神がその怒りをこの穢れた世界に示すその日まで、我等は御神に若き罪人の血・ヤングブラッドを捧げ続けます。」

男はそのマチェットを使い、もはや生を感じさせない焼死体達の腹を真一文字に、ゆっくりと、切り裂いた。赤く沸騰した血が鮮やかに、吹き出した。


吐き気がする。


こんなもの見たことのある筈がない。今もしこの吐き気に従って朝飯をぶちまけたところで、「不謹慎だ。」などと喚く奴は一人もおらず、後を追うようにそいつも吐くだろう。


見るもおぞましい。神経が逆撫でされるような感覚が生まれる。

そしてその感覚は感情を産む。


これは畏怖、か。

乗り越えようのないあまりに深すぎて暗すぎる恐怖だ。

俺には到底・・・







しかし、ウィルソン巡査は踏み出した。

「巡査・・・!」

「いいか、コナー。俺たちは警察官だ。目の前に人殺しがいるなら、そいつを逮捕するのが俺達の役目だ。怖気付くな。」

「でも・・・」

「来い。何もせずにビビって帰ったら俺たちは警察官じゃない。お前はビビって逃げたチキン野郎になりたいか?」

「・・・死ぬかもしれませんよ。」

「その前に殺す。」


納得はできない。だが行かざるを得ないことも気づいていた。義務だ、あいつを逮捕しなければ。

笑う膝を無理やり抑えながら、

「・・・分かりました。行きましょう。」

「その意気だ。」


足の裏が地面を踏んでいる感覚がない。冷や汗も溢れ出し、いまにも吐きそうだ。

でも足を踏み出す。よく見たら巡査の膝もガタガタだ。こんな「貫禄」を具現化したような人もこんな光景を目にするのは初めてなのだろう。


銃のグリップをしっかりと握り、セーフティを外す。銃口を泥まみれの男に向ける。スゥ・・・


「「フリーズ!!」」


泥まみれの男を除いた全ての男女が一斉に俺たちの方を向いた。


「居るのは分かっていた、罪人よ。見ていなさい。」


そう言った泥だらけの男は焼死体の胸を切り裂き・・・心臓に刺した。


「いますぐにそれをやめろ!さもなくば、撃ち殺すぞ!」


自然と叫んでいた。黙って見て居るのを体が拒否するかのように。

しかし・・・男はやめなかった。


「やめろと言っているんだ!!」

「神が望んでいるのだ。大地母神が。ガイアが。」


息を吸い込む。奴を殺せと体が訴えるような気がする。


突き出た腕の先で頼もしい光を放つ銃。チラリと見える雷管が指を引かせた。


『バガン!!』


泥まみれの男の頭に真っ直ぐに飛んでいった鉛はドスッという音を立て体の中に吸い込まれた。


しかし、その男は倒れなかった。いや、守られたというべきか、泥まみれの男の前には頭に大きな風穴を開けた男の遺体が倒れこんだ。


泥まみれの男は、自分の身のかわりに死んだ男を見つめ、まるで我が子を見るように言った。


「あぁ、彼が何をした!彼は大地母神を信じる無垢の教徒!罪人が無垢の人間を殺した!彼らは大地母神を信じる民を・・・己の罪をも謙虚に受け止め世界の平和を真に祈った神の信徒を・・・殺した。子供達よ、兄弟の怒りを、己に宿すのだ。」


そう言うと同時に泥まみれの男を囲んでいた奴等が俺たちの方へ走り出した。怒りに満ちた顔で。血管の浮き出た拳をつき出して。



                   

                    

      

これは・・・狂人だ。






「ッ!?銃を持ってるんだぞ!?巡査!撃ってください!!」

「分かってる!!」


俺たちはひたすらトリガーを引き続け、銃はそれに従い奴等の体に火を噴く。

『バガン!!バガン!!バギン!!バガン!!』


次々と死体が出来ていくが、弾は圧倒的に足りない。

シリンダーが空のS&W4506はトリガーを引いても、的の頭に風穴を開けてはくれない。


「クッソ!!巡査ぁ!!逃げますよ!!」

「おう、逃げ・・・っ!」

「巡査っ!!」


巡査は走る狂人達の中に引き摺り込まれ、奴等の手は巡査の体を壊していく。


「あぁぁぁぁぁ!!!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「巡査っ!!」


そう呼んでも、巡査の答えはなかった。どんな力で巡査の体を殴っていたのだろう。

逃げなければ・・・俺もこうなる。


「畜生がっ!!」


俺は残弾全てをぶっ放して、全速力で車の方に走り出した。


「ハァッ!!ハァッ!!」


それでも奴等は追いかけて来る。俺は目の前の光景を見て絶望した。

車は見事に炎上していたのだ。


「なんでだよ!!」


止まらず走り続ける。走って、走って、走って、走る。


最悪だ。誰がこんなことになると思ったろう。さっさと逮捕して帰るつもりが、巡査は無惨にも肉餅と化し、俺は狂人に殺されかけている。


「止まれ!罪人!!」

「死んじまえ!!」

「償え!!大地に血を捧げろ!!」


罵声を浴びせられながら、走り続ける。肺が潰れそうだ。足も痛い。

どこか、入り組んだ場所に・・・


「あがぁっ!!?」


クソ、背中を蹴られた。目の前には清流が広がっている。これは・・・詰んだ。後ろは、言うまでもない。


「罪人の分際で、汚れなき信徒を殺めるとは。大地母神に赦しを

 乞うことなど出来はしない。お前ならヤングブラッドを捧げることぐらいなら出来るだろう。」

「俺は人殺しを・・・殺しただけだ・・・!」


頰に重い痛みが伝わる。


「人殺し?罪人の分際で何をほざいてるんだ。貴様こそ大地の一

たる信徒を殺めた人殺しだろうが。お前は自分が罪人であること

を自覚出来ないようだな。ヤングブラッドを捧げる資格すらな

い。」

「よく喋る奴だな。まあ、何を言ってるかさっぱり解らないが。」


口の中は血の海だが、どうやらアンダーグラウンド系アクションでよく見る絶体絶命の時の減らず口、いわゆる「時間稼ぎ」には効果が有るようだ。


俺は非常時用に常に腰のポーチに仕込んでいる小型の上下二連のハンドガンのハンマーを下げ、鈍く輝くソイツを目線の先に掲げ、


「パン!!」


適当なエイミングでも、この距離なら確実に当てられる。

確実に、頭をブチ抜ける。


「ドジュッ!」


なんともグロテスクな音と共に、直径9mmの鉛の弾は目の前の男の頭蓋を叩き割り、黙らせた。


それと同時に、眉間に穴を開けた男の首を爪が刺さるほど握り、そのまま…





川に落ちた。











1-1(終)

当方学生の為、更新頻度がかなり低いです。

暖かい目と長い付き合い、宜しくお願いします。

出来る限り意欲的に取り組んで行きます。

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