前世との繋がり
トーワがいる部屋に、ルルが現れてから10秒ほど二人の時間は止まっていた。その間は、お互いの思考時間ともなっていた。トーワはまた今回もルルの世話になってしまったことを。ルルはずっと会いたいという気持ちがあり、トーワが寝てる部屋から落下音が聞こえてきたため、焦ってトーワのいる部屋へ向かい入ったところ目が合ってしまった。ルルに関しては、先程まで考えていた会いたいという気持ちは落下音と共に消え去っていたが、トーワと顔を合わせたことで思い出し、なんと声をかけようか迷っていた。それで10秒である。そして……
「お、おはようルル。」
「無事に起きてよかったよ……」
2人の声は同時に発せられたため、言葉が重なりお互い聞き取ることが難しかったようで、
「ん?」
「え?」
こんなふうに、お互いポカンとしている。そしてまた、気まずい空気が流れ始めた。しかし、トーワがその空気を壊した。
「ルル、今回も世話になったみたいだね……。本当にありがとう、そして申し訳ない。」
トーワは今思っていることを伝えた。いや、伝えなければ気がすまなかったのだ。一昨日の【神の祝福の日】からほとんだ世話になりっぱなしだった。それも、自分がピンチの時だけ。ルルがいなければ今頃どうなっていたかは分からないが、死ぬこともあっただろう。気絶していたのは2回ともスラム街である。何があるか分からないのがスラム街であり、盗みや殺人はほとんど当たり前の世界であった。ルーストンには陰と陽があった、それがスラム街と中心街である。
急にお礼を言われたルルは慌てて答えた。
「ううん!いいのよ、気にしないで。私が助けたくて助けてるの。だからってそれが当たり前だと思われても嫌だけどね。まずは、トーワは無事でよかったよ。痛いところや、異常を感じることはない?」
その言葉を聞いたトーワは胸を痛めていた。どうして無能の自分にここまでしてくれるのか、そして、そんなルルに対して形のあるお礼をできないこと。また、自分という存在と関わっていればいずれはルルも危険な目にあってしまうかもしれないということが最大の原因であり、一刻も早くこの場を離れなければならないと思考をせざるおえないこの状況が1番最悪だった。なぜなら、それは恩を仇で返すことと同じだからだ。その事を考えているとは悟られないように慎重に答える。
「痛いところは……無いな。大丈夫だよ、ありがとう。今すぐにでも動けそうだからもうここから出るよ。世話になってしまったな。」
そう言われたルルは苦しそうな顔をした。まだトーワが私と距離を置こうとしてることを感じてしまったためだ。そして、ルルは衝撃的な言葉を聞く。
「ルル、俺はあと1ヶ月ぐらいしたらこの国を出ることにするよ。言われた通り中心街には居場所はないし、スラム街という居場所まで無くなってしまった。これからの1ヶ月は自分を鍛える時間と、この世界の勉強の時間に使おうと思っている。だから……」
「トーワ!なんで……なんで私を頼ってくれないのよ……。どうしてなの?トーワ……。教えてよ……」
トーワの言葉をルルが遮った。最初は強気だったが、段々と弱々しくなっていき、声が震え始めていた。
ルルは自分で言っておきながら、既に答えは知っている。それでも、トーワに聞かなければならなかった。そうでなければ、諦めることが出来ないと思ったからだ。しかし、本当のことを言われたところで諦めがつくかどうかは分からない。間を置いて、トーワが答える。
「ルルも分かっているとは思うが、俺と関わっているのは危険だ。それに、手助けをしているなんて周りに知れ渡ればルルが危なくなる。ここまで俺に優しくしてくれた人を俺のせいでこれ以上傷つけるのは嫌なんだ……。それに、母さん達はもうこの国にはいなくなった。俺を捨てて王都に向かうそうだ。だけど、まだ俺は生きてるから、母さんに会いに行く。だから、分かってくれ。ルル。」
ルルはその言葉を聞いて、自分が予想していた答えと一致している事に落ち込みを隠しきれなかったが、それを顔や雰囲気に出すことは無かった。それより衝撃的な言葉を聞いてしまったからだ。
「今、なんて言ったの……?トーワは家族に捨てられた……?そう言ったのね……?」
ルルは無言で頷くトーワをみて本当の事なんだと理解した。元々冗談を吐く人間では無かったが、自分のことになればまた変わってくる。トーワには呆れるほどの強がりと、頑固さを持っていた。そして、今まで言われたことを思い出し、この国を出ることも本気なんだと確信した。いや、トーワの言葉には力がある。確信させられたと言っても過言ではないのだ。
ルルはもう何を言っても無駄だと思ったが、トーワに口を開く。
「だったら……、だったら、残りの1ヶ月は私がサポートするわ!それくらいならさせなさいよ!」
それを聞いたトーワは驚きを隠せなかった。嫌われる覚悟を持って、ルルのもとを離れることを伝えたつもりであったからだ。なのに、こんな自分に対して、ルル自身を危険に晒してまで、助けてくれるなんてトーワは微塵も思っていなかった。逆にルルはこれから敵になることさえ考えいた。それなのに、これだ。トーワは敵わないなと思った。そして自然と笑がこぼれた。
「最後の最後まで、付き合ってくれるんだな……。ありがとう。なら、一つだけお願いしたい。残りの1ヶ月だけ俺の居場所になってくれ。」
トーワの言葉は、ルルにとって告白とも取られそうなことを言ったが、そこには余計な言葉が含まれていたため、そう捉えることはできなかった。だが、今度は本当に頼られているとルルは感じた。
そのやり取りをした後に、トーワは癒しきれていない体を無理やり使ったあげく、1度にたくさんの会話や頭を使ったため酷く疲れたようだ。そのため、この日はもう寝ることにした。ルルはその事を悟ると、また明日ね、そう言って部屋を出ていった。
「本当に、俺はなんて運がいいんだろうな。まだ死んでいないなんて奇跡だぞ。あー、だめだ。寝よう。おやすみ」
そう独り言を呟き目を閉じた。そして意識は沈み、トーワは完全に眠った。
そのはずだったのだが、何故か風を感じる。その風に血の匂いが混じっていることも分かった。なにより、今までいた部屋にはトーワ1人しかいないため声など聞こえるはずもなく、今はどこからともなく悲鳴や奇声などが聞こえてくる。最初は疲れすぎたことによる幻聴かと疑ったが、意識をするとよりその音や感覚、匂いまでもがハッキリしていった。そして、目を開いた先には金属と金属を互いにぶつけ合っている者や、相手にたして弓を引いている者もいる。そんな者もいれば、逆に弓で射貫かれるものや、金属に殴られ絶命する者もいる。その光景を目にした時、トーワの意識は完全に覚醒し、ここが自分のいる世界の一部なのか、はたまた別世界なのかは分からないが、戦場であり、自分のいる場所はその戦場の中心にいた。つまり、トーワも狙われている事は明白であり、その事に気付いた時には目の前まで敵が迫ってきていた。その敵は刀を上にかざしながらトーワを殺さんとばかりの勢いで声を発しながら突っ込んでくる。
(っつ!なんなんだよこの状況は!さっきまで寝ていたはずなのに、急に戦場の真っ只中とかふざけてんのかよ!)
そう思っているトーワだが、目の前の敵はどんどんと迫ってくる。トーワは右手に銀の剣を握っていることに気づく。トーワのいる世界では一般的な武器であることは明白であり、この武器を使うしかないと反射的に思った。そして敵がトーワを斬ろうとしたその瞬間、敵の首が胴体から離れな、数本その場で歩いてから崩れ落ちた。
トーワ自身驚いていた。目の前にいたはずの敵を、自分が攻撃される前に切り伏せたのだ。それも反射的に。敵が刀で自分を斬ろうと体に力を入れたことをトーワは感覚で悟り、その一瞬の間に切り伏せたのだ。その事に恐々としたトーワは呼吸を乱す。しかしここは戦場だ。隙を見せれば誰かしらが殺しにくる。どこの世界の戦争でもそれは変わらない。甘くはないのだ。
トーワはその事を自覚しながらも、初めて人を殺した感覚や、急に戦場にやって来た事で感情や頭のキャパを超えている。こうなっても仕方が無い。しかし、それでも敵はやってくる。見る限り300人はいるだろうか。四方八方敵だらけ、この状況で生き残る事など不可能だと思ったトーワだが、自分を取り囲んでいる敵兵のうちの誰かしらが言葉を放った。
「何があったかは知らないが、今が【剣神】を倒すチャンスだ!絶対に逃すな!いいな!」
そう、【剣神】だ。トーワの事を【剣神】と呼んでいた。それを聞いたトーワは一瞬のうちに考えを巡らせる。
(俺が剣神……?何を言っているんだこいつらは。訳の分からない事が多すぎて、一々考えるつもりは無いが、俺の思う剣神であればこの程度、一瞬で崩せる。確かにさっきの動きを見れば、と言うより感じれば、俺はただの兵士では無いことは確実だ。その事を考えれば、俺がこの世界の剣神であることは本当なのかもしれない。)
およそ、0.5秒で考えをまとめ、結論を出す。それは……
(どうせ夢だろうし、やるだけやってみるか。それに、この感覚を覚えることが出来れば、俺のいる世界で強くなることができるだろうしな。よし、なら早速この体の反射に身を任せて、俺は感覚を掴むことに集中しよう。)
そう結論だしたトーワは、いや今は剣神が目を瞑る。そして、反射という感覚に身を任せた。
それからどれくらい時間が経ったかは分からないが、300人はいただろう場所には剣神1人だけが目を瞑って立っていた。
場面の変わりをもう少しハッキリさせるためにはどうしたらいいでしょうか。悩みます。それと戦闘シーンですが、まだ自分には難しく、上手くかけないと思いますが、少しずつ上達していこうと思います。
戦闘シーンについては、トーワが能力を身につけてから本格的に書くことになると思うので、それまでは軽くにしておきますね
これからもアクセスを宜しくお願いします!