前世との繋がり
トーワはなんとか、本当にギリギリの状態であったが話を聞いていた。気を抜けば今すぐにでも気を失いそうだが。
「まぁ、このまま話てても今は無駄かな。いずれ分かるさ。ここの空間にこれる素質をトーワは持っているんだからね。それより、もうすぐ彼女が来そうだよ?」
「……彼女?」
「ミルルちゃん?だっけすごく心配してるみたいだ。またここには来れるだろうから、今は心配させないようにすぐに目覚めてあげなよ。」
「いいのか……?」
「大丈夫だよ、どうせトーワはまたここに来る。それに次来た時には能力を使うことができるようになってるよ。ただ、ここでの記憶は目覚めれば消えるし、トーワは違和感を感じることすらないだろうね。」
「ここでの記憶が無くなる?それはなぜだ?」
「そんなものだから、さ。じゃーまた会おう、トーワ。無意識に冒険者にならなきゃいけないっていう気持ちを植え付けておくよ。怒るならまた来た時に怒ってね。またね!」
そう言われたトーワは何も言い返せず、意識が遠のいていくのを感じた。
ミルルはスラム街まで休まずに、走り続けてやってきた。すると、道の真ん中に倒れている白髪の少年を見つけた。見つけた時のミルルの感情は同情と保護欲。可哀想だと想い、護らなければと思った。力を授かったのはトーワの為だと確信したのはこの時だった。
「トーワ!トーワ!起きて!返事してよ!」
トーワは意識が戻ってきていたが、思ったように力が入らず、声を出すことも難しい状態だった。しかしすぐに声を出すことができるようになる。
「ミルル……?ここは……?」
泣きそうな顔をしてるミルルを見上げながらそう言った。
「……ここはスラム街よ。トーワは何があったか覚えてる?」
そうミルルに言われて必死に記憶を探っていく。
数分して、トーワは思い出した記憶と、その時の衝動を抑えてなんとか落ち着いていた。いや、無理やり落ち着かせていた。
「その顔を見る限り、思い出したみたいね?それにしても、トーワが無能者だったなんて……。でもね、トーワ?私はトーワが無能者だろうとなんだろうと関係ないと思うわ。トーワはトーワ。今もこれからも変わらないわよ。それと……あまり言い難いんだけど、スラム街から出ない方がいいと思うわよ。外に出てもひどい目に合うだけよ。」
トーワはミルルが自分のために、嫌われる覚悟を持って自分の思ったことをつげてくれたと思った。実際にその考えが当たっているのだが今それをゆうのも状況が違う。一言だけお礼言ってその場を去ろうと考えたトーワは口を開こうとした、が先にミルルが口を開いた。
「トーワ、自分といると私まで被害が及ぶからその場しのぎで今逃げようとか考えなかった?」
トーワは内心ギクリとしながら否定した。
「い、いや?そんなことないよ。それよりも、今日は疲れたから家に帰るよ。また明日会おう、ミルル」
そう言って、トーワは逃げるようにその場を後にした。