前世との繋がり
トーワが倒れてしまい、無能と呼ばれた存在が目の前にいるのかと、まるで虫でも見るような目つきに変わった周りの人達、同じく能力を授かった者、今から授かろうとした者はトーワの事を同じ場所にいるだけで不快な思いを感じた。これは一種の異常な程の事態であるが、この世界では一般的になってしまっていた。それこそ異常であるのだが……。
「っち。おい邪魔だ、どけよ。」
と言いながら、トーワを蹴っている者がいた。それはトーワの後ろにいたポンスだった。目の前で意識を失った無能が邪魔になり、能力を授かることが出来ないと思っていた。この事がきっかけでポンスは余計にトーワを敵視し、いつか殺そうと思い始めたのだった。
その状況を見ていた大人達が、トーワの体を引きづってスラム街まで持っていき投げ捨てた。
「まさか、無能者が現れるなんてな。この状況でこんなことされるとか、ありえないだろ。」
「まぁまぁ、戦闘系じゃない俺達が何言ったって何も変わらないだろ。魔王とかいう奴はいったいなんなんだろうな。お前、知ってるか?」
トーワをスラム街まで運んだ大人ふたりは愚痴を話していた。
「魔王って、あれだろ?3000年前に倒されたやつなんだ。」
「え、じゃぁ何でまた現れたんだ?もしかして生き残っていたとか。」
有り得なくのもないな、と思いっていた大人ふたりはそのまま話を続けた。
「その線もありかもな。魔王っていうのは魔族の中でも一番強く、魔物を使役することが出来るらしい。実力としては、SSSと同程度で存在するだけで世界に影響を与えてしまうんだ。」
「は?そんな出鱈目な話があるかよ。そしたら、この国や世界なんてあっという間に滅ぼされちまうじゃねーか。」
2人は話しに熱中しているあまりに、いつの間にか能力の継承の場に戻ってきていることに今気づいた。なにやら、騒いでるようなので急いで駆けつけると……
「アルメト様、この勇者【全能】というのはなんですか?!」
どうやら、一人の少女がアルメトに説明を求めにいった。すると、アルメトは表情を変え、驚きの声を上げた。
【まさか、勇者が現れるとは。やはり魔王の存在は明らかとなったわけですか……。】
っと周りには聞こえないほどの声量でアルメトは独り言を吐いた。そして、表情を取り繕うように真面目な顔に戻った。
【あなたは勇者に選ばれたのです。勇者とは、唯一魔王と対等に戦うことが出来る最強の戦士のことです。ありとあらゆる魔法を使うことが出来て、ありとあらゆる武術を極めることかできます。そして、人としての枠を超えあなたはいずれか世界を救うのです。】
説明を受けた少女、髪は蒼色で腰にかかるほど長く、身長は175cm程の長身の美しい少女は目を輝かせアルメトに感謝と、これから強くなりいつか世界を救ってみせると宣言をした。その少女にミルルは近づいて声をかけた。
「ミミル姉ちゃん!すごい能力じゃない!いいなー。」
ミミルは実はミルルの姉だったのだ。しかし、声をかけられたミミルはこう返した。
「いや、ミルルだって強力な能力貰ったじゃない!って、なんだっけミルルの能力」
「ちょ、自分で持ち上げといて酷いよそれは。私の能力は゛鏡魔法゛よ。ありとあらゆる魔法を吸収したり、弾いたりすることができるだけよ。」
「つまり、魔法は効かないってことでしょ?それに戦い方ではかなり優秀じゃない。」
ミルルは確かにそうなんだけど、といったかんじで言葉を返した。
「それでも、ミミル姉の能力は反則だよー。ずるいなーいいなー。」
まるでミルルは子供のように姉に対して言葉を吐いていた。そして、ふとした時にトーワを思い出し姉に友達探してくるとつげてその場を離れた。
ミルルは継承の場でトーワを探すこと10分、近くからありえない言葉を聞いて一瞬止まってしたった。
「ったく、なんなんだよあの白髪の男は。無能者だかなんだか知らないが俺の邪魔しやがって。いつか絶対殺してやる。それか無能なら俺の゛奴隷化゛の能力でこき使ってからでもいいな。死ぬほどな」
ミルルの近くにいたポンスが吐いた言葉だった。なんとかミルルは意識を取り戻した。しかし、今聞いた言葉の中にあってはいけない言葉が二つあった。それは、゛無能゛、゛白髪゛。この二つのうち一つの゛白髪゛はトーワのトレードマークだった。ミルルは白髪なのはこの国でトーワだけしかみたことなかったため、無意識にトーワだと思ってしまった。
それに、無能という言葉。これも意識を引かれるのには充分足りるのであった。ミルルはポンスに近づき震えながらも声をかけた。
「ポンス、その人って今どこにいるの?」
急に話かけられたポンスは驚きながらも、ミルルの姿を見ると安心したかのような顔を見せた。実際に、ミルルとポンスは小さい頃から知り合いでスラム街では度々遊んだりもしていた。
「なんだよ、ミルルか。脅かさないでくれ。それで白髪の男のことだっけ?確かスラム街まで連れていかれてたな。無能だと知ってその場で気絶しやがってよ。邪魔だから運んでもらったんだよ。ところで……」
ミルルは知りたい情報だけを知るとすぐさま、トーワが運び込まれただろうスラム街まで全力で走っていった。しかし、ポンスからしてみれば突然話しかけてきた者が突然去っていくのだから、1人で唖然としてしまった。
ミルルが必死な顔をして走っていく姿を見たミミルは、何か不穏なものを感じていた。同じく能力の継承をした者達との話を切り上げミルルを追うことにした。あんなに必死な顔をした妹を見たのは久しぶりだったからだ。