前世との繋がりー終ー
トーワが武器を作っている時、世界は大きく変わった。その事にいち早く気づいたのはアークだった。
アークはこの世界【アヴァロン】に常に繋がっているためある程度の変化は感じることが出来るのだ。
さらに、【アヴァロン】には神は1人しか存在しない。それが【アルメト】である。その神が消えた、となればかなりの変化だろう。
そのことを物語る事実が1つ、起こっていた。
『今、神が消えたわね……。それと同時に世界の崩壊も始まった。…………え?戻った、の?』
そう、世界の崩壊が始まっていたのだ。本来ならば神を失った世界は存在することが出来ない。それほどまでに神という存在は大事な事であり、世界というものを管理できる存在は未知であった。
しかし、崩壊が収まったということは神が戻ったと考えるのが普通だが、アークは嫌な気配を常に感じるようになった。
『これは何かあったかもしれないわね……。マスターにこの世界から気配を消せる能力を身につけて貰うしか無いわね』
アークは世界と繋がっているため、この感覚は正しいともいえる。本当のことは分からないだろうが、神界では恐ろしいことが起こっていると推測しているアークだ。
『マスター、少し相談いい?今からマスター専用の武器を作って欲しいんだけど。』
アークは考えを実行するためにトーワに魔力パスを繋ぎ会話をする。
『あ、アーク。武器なんだが、もう作ったぞ?』
『え、見せて』
『ほい、これだ。』
そう言ってトーワがイメージを送ってきた剣の解析を始める。そこには驚愕の能力が書かれていた。それを見たアークは少しだけ口角を上げていた。
そしてこれが、トーワが作った剣だ。
【魔剣グラム】身体融合専用
全ステータス+15000
消費魔力軽減+疲労回復(極大)
付与魔力増幅(極大)
自動修復(極大)
神滅属性
隠遁(神)
神滅ブ世界
眷属召喚
魔ノ神臓
『何よ……これ。出鱈目じゃない……』
そこに書いてあった能力は、名前だけでも恐ろしいものが沢山あった。その中で特異なのは身体融合と神滅属性、さらには隠遁だろう。
名前から想像できるが、トーワが何を目指してこのような能力を付けたのかが1番気になったため、アークは口を開く。
『どうして、こんな出鱈目な能力を?それと、身体融合、神滅属性、隠遁の説明をしてちょうだい。』
『あぁ。分かったよ』
そしてトーワは話し始めた。話をまとめるとこうなる。
【身体融合】
身体と融合することで付与されている能力を発動することが出来る。しかし、ただ所有しているだけでも発動できる能力もある。
【神滅属性】
神を滅ぼす事ができる属性。本来神は肉体を持たないが、この属性を付与された攻撃は神にも通じる。一切の防御を無視するため戦闘にも使える最強の能力の一つと言えるだろう。しかし本来は神を殺すための力である。
【隠遁】
この世界から隠れることが出来る。さらにはステータスなど覗かれた場合は不自然が無いほどの能力を相手に見せることが可能。この能力は神にも有効。誰もトーワを察知することが出来なくなる最強の能力
『なるぼとね、どうしてこんな力を?』
トーワの説明により効果を理解したアークは、このタイミングでこの能力を用意した意志が気になっていた。
『そうだな、理由は2つかな。1つはさっきから嫌な予感が止まらないんだ。それで何があっても良いように準備をした。もう1つは俺のステータスは不自然だ。それを隠すのにも何かしらの能力は必要だと思ってたし、気配を隠す時もいずれ来るだろうと思った。それが全てだよ、何か相談した方が良かったか……?』
『いえ、十分よ。それに逆に私からこういう能力をつけてもらうと思ってたの。それが私が言おうとしてたことだからもう解決ね。それと、私も嫌な予感がするわ。気を引き締めて行きましょう。』
『あぁ。そうだな。それに、2人が起きたみたいだ。武器を渡してさっさと国をでるか。』
トーワは2人の起き出す気配を感じて準備を整える。
1つはミミとルルに渡すための武器をもう1度顕現させること。
2つ目は魔剣グラムを身に宿すことだ。
2つを完了させたトーワは2人が降りたリビングを目指す
『でも、どうして神滅属性や身体融合なんて今までにない能力が……。私の時だって…………。』
『アーク?聞こえてるか?』
『…………。ごめんなさい、何か言ったマスター?』
『いや、行こうって言っただけだよ。反応がなかったから気になっただけだ』
トーワはアークの不自然さに疑念を抱きつつもミミとルルの元へ向かう。
いつも通りに部屋を出て左に曲がる。階段を降りてリビングに入る。この1ヶ月で当たり前になった景色とも今日で離れることに寂しさを覚えるとともに、新たな冒険に胸を踊らせているトーワがいた。
さらにはレイルという仲間をできて、トーワにとっては新鮮なことばかりだった。今まであまり人と関わることなく生きて、この1ヶ月ミミとルル関わることで人に関わることは楽しいことも分かってきたのだ。
そんなトーワにとって゛仲間゛というのは何故だか心が踊るような興奮を覚えていた。
そして、トーワはリビングつく。
「おはよう、2人とも。」
2人に挨拶をしたトーワはいつもの流れでテーブル向かい朝食を待った。
すぐに朝食がきて、3人でいつものように食べる。だが、そこに会話は無かった。そこがいつもとは違うところだった。そして、食べ終わりトーワが口を開く。
「実は2人に渡したい物があるんだ。ソファーに座ってほしい」
そういってトーワはソファーに向かい、ミミとルルが来るのを待っていた。
2人は互いに顔を見合わせ、トーワが真剣な表情していたため、2人も気を引き締めてソファーに向かう。
「来い【ヘヴンズソード】、【インルェルノハート】。」
そしてそこに現れたのは二つの武器だった。
1つは目は柄の部分が漆黒で刀身は長く、氷を思い起こさせるような蒼色をしている剣。
2つ目は柄が黄てきていて、先端には紅い宝玉がついている杖。
2つの武器からは尋常じゃない魔力を感じる。元々、魔力と関わりのなかった2人でもその魔力は異常だと分かった。そして、そんな武器を出したトーワはいったいなんなのか、2人は疑問に思ったがすぐに2人の意識が薄れ幻覚を見せる。
ーーーそう、トーワは能力があったのね?良かったじゃない。ーーー
ーーー武具創造、ね。戦闘向きじゃ無さそうな能力ね。ーーー
「私は知ってる……?」
「トーワが能力者……だった、のよね。」
ミミとルルに異変が起こったのはトーワの能力によって引き起こされたことである。【意識魔法】の能力によって。
「何言ってるんだ、俺が能力者なのは前から知ってただろ?ど忘れなんてまだ早いだろ」
2人はその言葉にギョッとして、今まで見ていた幻覚を現実だと信じ込み、トーワの話を聞く。
「今までのお礼に、2人に武器をあげたいんだ。受け取ってくれるか?」
2人は勢いよく頷き、それぞれの武器を持って感触を確かめている。
(ごめんな、2人とも。こうやって恩を仇で返すような真似を……。でも、これ以上は巻き込めない。2人との関わりのこれっきりしなきゃな。)
トーワがそう考えているのと同時にミミとルルはそれぞれの武器を確かめて悦に浸っていた。見るからに強力な力を秘めていることがハッキリと分かり、それを貰えたのだ。これからの楽しみにならないわけが無い。
それに2人はまだ専用の武器を持っていなかったのだ。それをトーワから貰えたことも2人の嬉しさのポイントになっただろう。ただでさえ、武器や冒険に必要な道具を揃えるのはスラム街の者にとっては厳しいのだ。
そしてそのまま時間が過ぎ、9:30を回った頃トーワが口を開く。
「それじゃそろそろ行くよ。2人とも、その武器をこれからの事に役立ててくれ。いつかその武器が2人の身を守ってくれることを俺は願う。直接が無理なら間接的にだけでも役に立ちたいんだ。」
「トーワ……。王都に向かうのよね?」
「そうだ。ひとまずはお母さんに会おうと思っている。それに急ぐ旅でもないし、観光でもしながら行くよ。」
「そう……。実はね、私達来年引っ越すのよ」
トーワは突如話が転換したとともに、ミミの話が衝撃的でつい話を聞いてしまった。
「引っ越すって、どこにだ?」
「王都よ。」
「そうか……。じゃぁいつかは会えるかもしれないな。」
引越し先は驚いたことに、トーワの行き先でもある王都であった。
これにはトーワも驚いていた。さらにはまだ関わりが出来てしまいそうな運命にも驚いてしまう。そう考えていた時にアークからパスが繋がる。
『マスター、そろそろよ?時間分かってるの?』
『あぁ、今出るよ。』
引越しの話が弾んでしまい、時間は9:45にまでなっていた。待ち合わせでは10:00にレイルと東の門で待ち合わせをしているため、時間的にはまだ余裕があるのだが剣のことがあるため早めに出て店に行かなければならない。
そのため、申し訳ないと思いつつ急いで話を切る。
「ごめん、時間だから行くよ。この1ヶ月ありがもうな。今こうして生きていられるのも2人のおかげだ。また会えたらその時はきちんとしたお礼をさせてもらうよ。それじゃぁな。」
そういって、これ以上顔を合わせていれば決意が鈍ってしまうのが怖くなり勢いよく家を出る。
その時に2人の声が聞こえたが、そのままスラム街を出る。
「ふぅ……。さてと、それじゃぁ行くか。俺の冒険を始めよう。…………行ってきます。」
心の中で決意を改め、小さく呟いた。そしてトーワは武器屋によって武器を貰い、東の門に行って王都行きの馬車に乗る。
「おはよう、トーワ。なかなか危なかったじゃないか。」
「おはよう、レイル。ごめんな、少し手間がかかった。それより荷物とか大丈夫か?」
乗った馬車には既に、魔人族のレイルが乗っていた。そのまま2人は挨拶を済ませ軽く会話をする。そして時間が経ったのか、馬車が動き出す。
「おいお前ら、もう出発するからな!今日は1つ隣の【ルーニ】に向かう。今日の夕方には着くだろうからそれまで寛いでくれ。それと、魔物が出た時には頼むぞ。それじゃぁ、良き旅を。」
勢いよく話かけてきたのは先頭にいる馬車の運転手だった。歳は60くらいはいってるだろうがその声にはハリがあった。そのため、同じ乗客であろう3人組の冒険者と4人家族が話をしていてもハッキリ聞こえていた。
そして、馬車は動き出す。それと同時にトーワの人生も今動き出す。
トーワが馬車に乗り出発を開始した頃、スラム街の奥の奥にあるごみ捨て場に天人が降臨した。
「さてと、魂移者はどこだろうな。って、すぐ探したい所だが体の使い方がまだ出来てないな。前の体よりも圧倒的な強さを誇ってるがその分加減も覚えなきゃな……。まずは歩きで王都まで向かってみるか、練習も兼ねてな。」
そういって、銀髪で長身、右の頬に傷がある天人【アルト】はゆっくりと体を動かし始め、活動を開始する。
この世界にいる【魂移者】を見つけ消すために。こうして、アルトの新たな人生も動き出した。世界そのものを巻き込んで。
一章はこれで完結です。
この間まで忙しく更新することができませんでした!申し訳ありません。これからはまた頑張って行きたいと思いますので、引き続き宜しくお願いします