前世との繋がり
この世界ーアヴァロンーには、国が20ヶ国ある。その国々には様々な特徴があり、個性がある。しかし、どんな国にも一つだけ共通するものがある。それは、能力重視。能力が絶対の国である。逆に言えば、無能と呼ばれる100年に1度現れるかどうかの存在は世界の゛敵゛と見なされる。
そんな世界に、無能として生まれた一人の少年、「トーワ」は生きることを諦めず、運命に抗い、打ち克つ。そんなお話。
20ヶ国のうち、東の端に位置してる国ールーストンーは、存在している場所故に、辺境地とも呼ばれている。
この世界アヴァロンでは、人ならざるものー魔物ーと呼ばれる生物が存在している。魔物にはランクがあり、生態や強さが基準となっている。Dから始まり、SSSが最高評価となっている。Sランクからはその1匹で、国を滅ぼす事が出来るほどの実力を持っている。
辺境地である、ルーストンの周辺には数多くの魔物が生息していて、他の国と比べても格段に危険度が高い場所である。
だが、危険があることによって優秀な冒険者たちが集まっているため、辺境地には熟練の冒険者たちが多く存在している。
冒険者にも、魔物と同じくランクがあり、Dで始まり、SSSが最高となっている。ただし基準は異なっていて、功績と実力で決まる。
ルーストンの中心街では、毎日数多くの出店が出ていて、活気に溢れている。だが、中心街の真ん中で、一人の少年に対して、複数で殴ったり罵声を浴びせたりしている者達がいた。
「おい無能。お前なにも能力を持って無いくせに、冒険者になってどうすんだよ!そこら辺のゴブリンに殺されるだけじゃねーか!」
そう言われながら、少年は殴られ続けていた。続くこと5分、警備隊の1人が様子を見に来た。
「何をやっているんだお前達は!」
警備員の男がそう言いながら近ずいてきて、殴られている少年を見た。
「って、なんだよ。殴られてるのは無能か。いいかお前達、殴るのは勝手だが、場所を選べよ?」
と、警備員の男が笑いながら言い放ち、殴っていた者や罵声を浴びせていた者達が返事をし、少年を路地裏に連れていった。
「ったく、いい所で邪魔しやがったな。まぁいいや、今日のところはここまでにしておいてやるよ。次顔見せたら、この程度じゃすまさねーからな?分かったな無能。」
男がそう言い放ち、少年の顔を蹴り、その場を去っていった。それに続くように、その男の取り巻きたちが笑いながら、男に続いて帰っていった。
男たちが去ってから10分して、少年は起き上がり、軽くジャンプをして体の調子を確かめていた。それが終わるとすぐに歩き出し、中心街を出て、スラムと呼ばれる場所にきた。
「トーワおかえり!……って、その顔どうしたの!?」
話しかけてきたのは、紅色の髪でショートカット、身長は160cm程の女の子が先ほど男に殴られていた少年、トーワを見て悲鳴に近い声をあげた。
「少しミスっちゃってね、中心街を通ってた時に、ポンスに見つかっちゃってさ。でも、大丈夫だから心配しないで?ミルル。」
そう言って、トーワは心配してくれている女の子、ミルルに言葉を返した。
「っ!また、ポンスにやられたのね…。本当に大丈夫なの?痛いところはない?」
「大丈夫だから、気にしないで。いつも心配してくれてありがとう、ミルル。」
ミルルは最近、トーワの帰りを待つようになっていた。
それは、トーワが無能と分かってからだった。