悲しみのドアを。
春
梓を車椅子に乗せ病院の中庭を散歩させていた。
いつもと、変わらない空模様だ。変わると事があるとすれば僕の恋模様ぐらいかもしれない。
梓との出会いは大学を入学して三日経った時だった。
たまたま、講義で出会い、大学では珍しいグループワークの時間に意気投合し仲良くなった。
日本では平均的な身長の僕よりも20センチくらい低くけど、態度は僕よりも20センチ以上大きかったはずだ。小柄で小生意気で何より元気で笑顔が可愛い女性だ。
「晴!!もう帰るよね?」
「今日は、サークルの集まりがあるから帰らないよ」
少し、怒った顔なのか悲しそうな顔をしてるのかわからないが、僕の顔を睨んでることはよくわかった。
「わかったよ。すぐ終わらせるから図書館で待ってて。」
「・・・」
何も言わない、まだ睨んでいる。
「わかったよ。ジュース奢るからさ、許してよ」
少し梓は微笑み図書館の方向に消えていった。
サークル活動と言ってもまだ、入学してまだ、あまり時間も経ってないし何もする事はない。今日は顔合わせの日で自己紹介して終わりだ。
「経営学経営学科の田沢晴人です。」
軽く自己紹介を済ませ、梓が機嫌をそこねないうちに図書館へ小走りで向かった。
図書館へ向かうと梓難しそうな本を読んでいた。
そして、また機嫌を悪そうに本を睨んでいる。
「梓〜、待ったかー?」と僕が声をかけると
「待ってないし。」と梓はいつもより少し低い声で言った。
「何怒ってんの?」と聞くと
「この、本ほんとありえない」梓が言ったので
僕に怒ってるわけじゃないんだと少しほっとした。
後から、理由を聞くと本の中で死後の世界について書かれてたらしい。作者は一度死ぬと記憶が全てなくなり、自分がこの世に生きた証は全て消えると書いてたそうだ。死ぬとそこで終了。死にきれなかった人間は霊として、この世に存在するらしい。
梓から、してみると悪い事をしてないいい霊は存在自体を消され、この世に未練を残している悪い霊は存在を消されない。「ここに不平等だ。」怒っていたの
だ。
約束通りに、帰り大学付近のコンビニでジュースとアイスを奢らされた。
「アイスは聞いてないんだけどー?」
「まだ、夏来てないのこんなに暑いなんて、、」
「なんで、アイスもー?」
「私、夏になったら溶けちゃうかもしれない。」と梓が笑いながら言った。
「私、夏になったら溶けちゃうかもしれない。って言う人間は溶けないから安心しろ」と僕が少し真顔で言うと
「アイスしつこいよ。」と会話を逸らしてきたのとプラスで「ちっさい男だな」と畳み掛けられるように説教をうけた。
2人は会話が成立しないのかな?なんて冗談交じりの会話をしているとさっきまで怒っていた梓の顔が徐々にいつも通りの子供みたいに無邪気に笑う梓になっていた。
2人で自転車に乗り駅付近の駐輪場まで走らせる。
体格に似合わず、梓の方が自転車は大きく進むのが早いので、僕は置いていかれないように一生懸命ペダルを漕いだ。




