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10 経緯と、結末 そーいうわけで、お疲れさん!

トモエちゃんのあらすじ

「勇者さんらの、悲惨な過去が明らかに。ウチとセンナナちゃんはこの世界のため、戦いの旅に出るのやった……あ、シメは、地球のウチ視点です。ここまで読んでくれて、ありがとー!」

 時間は、ウチがウチを送り出す前まで巻き戻る。



 膨大な、データのインストールが完了した。そう、ウチは生まれ変わったんや。文明が滅び、機械だけが闊歩するこの地球の、マザーコンピューターとして。略すると、マザコンやね……あかん、コンピューターになってしもうても、いらんこと考えてまうもんなんやね。


 生身の地球人の、ウチは正真正銘の最期のひとカケラやった。あかんようになった身体から切り離された脳味噌(のーみそ)だけを、冷凍保存して生き永らえた、そんな存在。人類は、ちっぽけなカケラのウチを残してみーんな死んでしもうた。何やねん、それ。


 呆然としとる間にも、ウチの中には冷静な部分があって、それが現状をどんどん伝えてきよる。要約するとそれは、このまま手ぇをこまねいてぼーっとしとったら、何時まで経っても何にも生まれへん。そんでもって、いつか来る宇宙の終わりに巻き込まれて、仕舞いや。そんなん、あんまりやん。


 ウチは新しゅうなった頭をフル回転させて、解決法を模索した。幸い、ごく普通の女子中学生やったらわからんことでも、この頭になったら便利やね。ひとつのデータから、何千何万の予測が立てられた。それも、並列して行う幾億の作業の一つっちゅうんやから、これはもう物凄いことやね。


 そうしてウチは、一つの結論を得るに至る。今、地球を我が物顔でうろついとる、自動兵器どもを何とかせんとあかん、って。まあ、考えんでも解ることかも知れへんけれど、そこは堪忍してぇな。何せ、ウチの頭の半分はコンピューターやねん。ちゃきちゃき計算、してまうねん。


 何処へ向けて言い訳しとるのんか、ウチにもよくわからんまま、ウチは対策を実行する。兵器の生産工場をハッキングして、ウチのものにする。これは、簡単に出来た。何せ、自動兵器たちは自分で増えることは、考えとらんみたいやったから。


 世界各地の工場で、自動兵器に対抗出来る兵器を量産する。資源はあんまり仰山残っとらんかったけど、知能を賢うした子ぉらを作ることによって、少数精鋭を実現。一万体くらいは、作れそうやった。地球の広さに対して、ちょい少ないかも知れんけど質でカバーやね。


 賢さ出すために、サイボーグの副脳にウチの思考回路のコピーを取り付ける。初めは十体くらいで試してみたけど、並列思考に問題はあらへんかった。十体のサイボーグ兵士から入ってきよる情報は、物理的にも巨大になったウチの頭脳で充分処理出来る。臨機応変に一万体を同時に動かすことくらいは、何ちゅうことなさそうやね。どや。


 人類が完全に滅亡してもうた今、別に急ぐ計画やあらへんけれど、他にすることもあらへんしウチは急ピッチで千体、デストロイウォーリアを作り上げた。自動兵器との戦闘データを集めて、改良点を洗い出して次の生産に入ろうとした、その時。電(・)話(・)が(・)、(・)鳴(・)っ(・)た(・)。


 外部からの、通信。あり得へんことやった。地球には、既にウチ以外の知的生命体はおらへんし、宇宙にかて電波の届く範囲には誰(だーれ)もおらんっちゅうことは、証明されとることや。せやけど、電話が鳴っとる。電脳化したウチの頭ん中で、プルルルル、っちゅう電子音が鳴っとるんや。


 呼び出し音が、十回鳴った時点でウチは電話を取る決意をした。もしかすると、ホンマはまだ生き残っとる人間がおって、助けを求めとるのかも知れへん。そう、思い至ったから。


『も、もしもし?』


 脳内で録音機能を起動、ついでに通信位置の測定を試みる。結果は、エラー? どこか、わからんとこから電話は掛かって来とるみたい。


『もしもし、地球の神ですか? こちら、×××の神ですが』


 ぽかん、と思考に空白が生まれてしもた。ウチが黙りこくっとる間にも、切迫しとるようなその声は続いてく。


『……そちらの言語では、こちらの発音は少し難しいようで。ともかく、そんなことはどうでもいい。お願いします! 助けてください!』


 勢いよく頭を下げるようなイメージが、ウチの中にふっと浮かぶ。圧倒的な処理速度と膨大なデータを持つウチにも、原理はようわからんかった。いや、それよりももっとわからんことがある。


『ちょい、待って? ウチが……神様?』

『はい。そのように、お見受けしますが……違うんです?』

『ウチはただの元女子中学生で、今はしがない巨大コンピューターの電脳やで?』

『ですが、我々の次元の通信が届くということは、あなたが神で間違いない筈です』

『そーいうもんなん?』

『はい、そーいうものです。それより、助けてください! あなたの世界から輸入した技術が、うちの世界で暴走しているんです!』


 再び、ウチはぽかんとなった。呆然とした空白の頭に、この話しとるヒト(?)、男なんか女なんかどっちなんやろ? どっちとも取れる声、しとるなあ、とかそーいう雑多な思考が混じって来る。


『技術を、輸入?』

『はい。そちらの世界で以前、異世界転生システムを試行させていただいたのですが……こちらの世界へお呼びした勇者様や賢者様が、魔王や邪神を倒したあと、色々とそちらの技術を広めていったのです』


『ああ、生産チートとか、そんなんやね』

『ええ、まあ。世界を救っていただいたわけですし、ちょっとくらいはいいかな、と私も放置していたのですが、転生者たちが亡くなり、技術を継いだ子孫たちのさらに子孫の代で、大変なことになりまして』


『大変なこと?』

『転生者たちの代や、近い世代の人間たちには、世界への配慮といいますか、悲惨な結果などを知っていることで歯止めが効いていたのでしょうか、危険な技術は封印されて、安全に管理されていたのです』


『それが、孫の孫の代あたりで、歯止めが無くなった、っちゅうこと?』

『長く生きられない人間たちは、大事なことを伝え忘れていたりしたのでしょう。また、実験を繰り返すうちに知識欲がどんどんと膨らんでいったのかも知れません。禁忌に手を出した人間たちは、やがて手ずから魔王をも創り出してしまったのです!』


『魔王って、手作り出来るもんやねんな……奥が深いね』

『普通は無理です。私を冒とくし、私の代わりに科学を追い求める者たちが、禁忌の果てにたどり着いた最悪の道なのです』


『神もホトケもあらへんね』

『おお、なるほど上手いことを……って、それどころではないのです! お願いします! どうか、再び私の世界を救うため、力を貸してはいただけませんでしょうか! このとーりです!』


 もういっぺん、勢いよく頭下げるイメージが過ぎった。


『そない言うてもなあ……ウチのとこ、今こんなんやし。送れるモンっちゅうたら、サイボーグ兵士くらいのもんやで?』

『それがいいのです! 思い上がったうちの世界の科学者どもに、本当の科学の惨たらしさ、容赦の無さを教授してやってほしいのです! 思い知らせてほしいのです!』


 心なしか、ヒートアップしよった神さんの唾が飛んで来るようなイメージがあった。


『自分で、出来へんの? あんたも神様なんやろ?』

『残念ながら、私は自分の世界に干渉出来ない決まりに縛られておりまして……それに、私への信仰も相当に歪んでいるため、決まりを破って干渉すれば思いもよらない事態に発展しかねないのです』


 どよよん、と淀んだ空気が流れてくる。


『難儀なこっちゃね。それにしても、さっきから面白い(おもろい)ことしとるね、あんた。通信で頭下げたり唾飛ばしたり……思念で絵文字作っとるみたいやん』

『あ、見苦しかったでしょうか? これは、魔素を応用した感情表現なのです。私の世界では魔素はありふれた物質ですので、つい多用してしまいまして』


 たらーり、と今度は冷や汗が流れるのんが感じられた。うん、面白いな。


『その、魔素っちゅうのは、こっちの世界にもあるんかいな?』

『ありませんね。以前ご協力いただいた折に、その辺りは確かめましたから。ですが、もしよろしければ、こちらの世界の魔素を送ることは出来ますよ?』


 神さんの言葉の後に、ウチの周囲に妙に不安定なエネルギー物質が少し流れて来る。分析してみると、なるほど面白いもんやった。


『もうちょい仰山、送ってくれへん? この魔素っちゅうのがあれば、地球再生計画も巧く運ぶことが出来るんやけど』

『ええ、それくらい、お安い御用ですが……その、もしよろしければ』


『サイボーグ兵士の件やね。ええよ、一体くらいなら、融通したる』

『おおお! やってくれますか!』

『それこそ、お安い御用やからね。そっちの座標、教えてもろたらこっちで転送するから、受け入れはよろしゅう頼むで』

『もちろんなのです! あ、ついでに、こちらの世界の住人を、何人かそちらへ送りましょうか? そちらには、知的生命体がいないようですし』


 神さんの提案に、ウチは少ぉし考える。


『それは、有り難い話やけれど、でもなあ』

『何か問題でもあるのです?』

『今、こっちの世界もちょい立て込んどってね。色々危ないモンがうろついとるのんよ。片付けるのに、そんな時間はかからんと思うけれど、魔素まで貰うた上にヒトまでっちゅうのも、厚かましいかも知れんし、ウチの世界で再生が始まれば、知的生命体も生まれて来るやろし』


 懸念事項を並べてみれば、神さんのうなずく気配があった。これも、魔素の力なんやろうなあ。


『なるほど。心配なのは、確かに解ります。ですが、知的生命体の誕生については、ある程度手を入れたほうが良いですよ』


『そうなん?』


『はい。自然に任せると、とんでもないものが知性を持ったりしますからね。ナメクジとか、そのへんのものが。もちろん、そういった実験がお好きなのでしたら、止めはいたしませんが』


 なるほど。イチから文明作るっちゅうことになれば、おさるさんが必ずしも頂点に立つっちゅうわけやあらへんもんね。言われてシミュレートしてみたとこ、確かにそーいう未来も予測は出来た。中々、おぞましい光景やね。


『ナメクジの文明は、遠慮しときたいね』

『そうでしょう。私の世界から、従順な人類を選んでそちらへ送れば、増えていくのは人類を中心としたごく普通の文明になります。いいことずくめなのですよ?』


『そら、願ったり叶ったりやけれど、あんたの所のヒトは、ええの? 無理やり転送したりして、怒ったりせえへん?』

『神の名において、新たな地を発展させる使命を負うのです。皆、喜んでそちらへ行くことでしょう。もちろん、こちらの科学の暴走が片付いて、私への信仰が取り戻せたらの話なのですが』

『ほな、決まりやね』


 神さんに返事しつつ、ウチはデストロイウォーリアの生産状況を確認した。丁度、1007番目の子ぉが出来上がる頃合いやった。


『そっちの件が片付く間ぁに、ウチのほうもお掃除済ませとくさかい、よろしゅう頼みます』

『ありがとうございます!』


 向こうの神さんに、詳しゅう座標を教えて貰うて通話を済ませた。電脳なってから初めての他人との会話やったから、もう少し楽しみたかったけど、やらなあかんことが出来たからね。


 工場の、組み立て工程に割り込みをかける。生産ラインを止めてしまわんよう、短時間で作業せなあかん。気合を入れて、ウチは組み込み予定の電脳へ、アクセスをする。


 座標からみるに、あの神さんの世界はめっちゃ遠いとこにある。まあ、異世界言うくらいやからね? せやから、今のウチの技術でもリアルタイムの通信は不可能や。接続も切れてまうから、ある程度自律して行動出来るようにせなあかん。


 他のコピーとは違うた、ウチと同じ思考回路をプリントしていく。さらに、サイボーグ兵士のほうの電脳にも、自己進化、自己再生……自己増殖は、いらへんね。学習能力をつけて、ほとんど人間と言うてもええくらいの性能を付与しとく。ウチだけやったら、判断間違うてまうかも知れんから、これは保険やね。


 割り込み行程を終了して、完成を見守る。うん? 空中に何かツッコミ入れとるけれど、何しとるんやろ? ともあれ、あとは転移装置にちょい細工を施すだけ……あ、ツッコミが当たって何か火花散っとるけれど、大丈夫やろか? まあ、大丈夫やろ。あそこの機械は、頑丈やから。


 転送装置は、無事に起動した。ぷつりと反応が途切れたとこ見ると、少なくともウチの知る範囲にはおらんようになったみたいやね。


『頑張りぃや、ウチ。地球の命運は、あんたらにかかってるんやからね』


 送り先の無いメッセージを脳内フォルダに仕舞い、ウチはまたサイボーグ兵士の量産を見守ることにした。あっちでウチが頑張っとる間に、こっちの掃除、頑張らなあかんからね。


 一分の狂いもなく、計画は進んでいく。いつか来る異世界の住人さんを迎えるため、ウチは奮闘する。いっぱい人間増えて、生身のウチのおった頃くらいに地球が建て直ったら……もうちょい平和なアンドロイドの身体作って、友達百人くらいは、作ったろうかいなあ。ああ、楽しみになってきたわ。ほな、ちゃきちゃきやりましょか!



 ……それにしても、ウチ、いつの間に神さんになったんやろか? そんで、この世界におった神さんは、どこへ行ってしもたんやろか? 電脳なっても、世界に謎は多いもんやね。

このお話は、これで完結です。SFモドキのお話に、お付き合いくださり誠にありがとうございます。

今回も、お楽しみいただけましたら幸いです。

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