プロローグ
リメイク版を更新中です。
ここ、ランドリア共和国には、冒険者ギルド・商業ギルドの二つのギルドが存在している。
国の形を持って以来300年間ずっと、この国は、国王と、冒険者ギルド・商業ギルドのギルドマスターの3人によって治められていた。
また、その独自のスタイルは共和国内に存在する大なり小なりの街や村にも受け継がれ、領主とその地域の各ギルド統括が協力して自治を行っていた。
エミリア大陸の外れに位置しているこの国では、未開発地帯である緑豊かな森林地帯、見渡す限りの地平線が一望できる広い海に周りを囲まれた、資源が豊富といえば豊富な田舎であった。
ただし、森には冒険者ランクがB認定されたパーティでも手こずる大型の巨獣が徘徊する危険な場所や、ただの村人が一撃で倒せてしまうような弱いラビット・ラット系の生き物まで多数生息し、森の中で独自の生態系を作っていた。
そして、海にも船という足場の悪さからさらにランクがAやSに引き上げられた遭遇すれば天災と相違ない大型の怪物が沖を縄張りとして泳いでいる姿が目撃され、かといえば、沖から浅瀬にかけてはこれまた何の特技も持たない子供でも釣り上げられることもできる中程度の魚が泳いでいたりもする。
大陸の中央には軍事国家として名高いロッソ帝国や、魔法に秀でたルーメン王国、商業の国と名高いミンツァー連合国などを筆頭に複数の国家が利権を巡って、時に武力で、時に経済で争いを続けていたが、どこの国も大陸の端にあるランドリア共和国には目を向けることはなかった。
ランドリア共和国には豊富な資源があるとはいえ、森と海を除いて、唯一、外に開いている荒野にも問題があった。この場所は、400年ほど前に起きた帝国と王国の約10年にも及ぶ侵略戦争によって「何も生み出さない土地」と呼べるほどに草木の一本すらも未だに生えない荒れた土地になってしまっていた。
どこにも身を隠す場所が存在せず、太陽を遮ることも、強風を避けることも、雨をしのぐことも出来ない道のりを進軍しても、王国に着く頃にはもはや戦争ができるとは言えない状態にまで兵が疲弊することは明らかだった。
また、別の方向から攻めることも無理だった。荒れ地を避けると後は森か海を進むしかない。奥地にいるとはいえ、ひとたび遭遇すれば人の手で倒すには困難な獣の存在が厄介だった。
それに、ランドリア共和国も領土を広げたいとか、今よりもっと豊かになりたいといった欲のない国でもあった。それどころか、若干のお人好し気質までもっていた。
各国の戦争終結に伴って疲弊した国の民の現状を商人伝などで知るやいなや、歴代の王たちは皆、食糧支援や復興への協力に走った。さすがに国を掲げてなんて表立ってはできないのだが、ひっそり陰ながら行うことで、国再建の影の立役者になっていた。
つまるところ、エミリア大陸に存在しているどの国家も一度は必ずその恩恵を受けたことが在るのだ。
そのため、ランドリア共和国は、エミリア大陸の国家から「最後の希望の国」と名前がつけられ、なかば不可侵領域として、建国して以来、今日までどこの国にも侵攻されることなく平和な日々を送っていた。
そんな平和の代名詞と呼ばれる国の中でも事件は起こる。
何せ、外の国の防壁となってくれている大型の巨獣や怪物はともかく、それ以外の生き物は自分たちも生きるために必死なのだ。外へ向かうことが厳しい以上、必然とそれは中へ向けられることとなり、森や海では絶えず弱肉強食が行われ、また、その境目の町や村ではひっきりなしにギルドへ依頼が舞い込む状況でもあった。
独自の環境化で進化を遂げた、ランドリア産の獣からは特有の資源が手に入ることもあって、戦時中ではない余所の国からもその恩恵を求めに冒険者が訪れることもあった。
また、狭いテリトリーの中、生き抜いてきた獣たちは外の国の獣たちよりも力もより強くあったため、ランドリア産のある一定以上の獣を倒すことは冒険者の中でステイタスの一部になっていた。
そんな大陸外れにあるランドリア共和国の外とつながる始まりの街から馬車で一日、徒歩の距離にして2日と少しの場所にある境目の村では、クエスト達成率が必ず100%という驚異の現象が起こっていた。