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天才少年の殺人衝動  作者: 蔵餅
2章―血の運命
7/9

05

 布越しでもわかるほどに激しい光が、車の中ではじけ飛んだ。

 と同時に、聴覚が耳鳴りのような音でが遮断される。

 これは確か閃光手榴弾スタングレネードというやつだろうか?

 だとしたら今頃、車内にいた3人にもかなり隙ができているはずだ。

 ・・・というか、そんなもの気軽に街中で使ってよかったっけ。

 ともかく、先程の会話(というか一方的なセリフ)からして、おそらくあの女性は敵ではないのだろう。

 彼らに向かって天敵なんて言っていたぐらいだし。

 だが、果たしてぼくの味方だろうか?

 敵ではないからと言って、それは味方であるとは限らない。

 そもそも彼女が警察ではないのだとしたら、それはそれで問題がある。

 警察でないとしたら、なぜ彼女もぼくを追っていたのだろうか。

 そんなにぼくが珍しいか?

 ぼくなんかよりも珍しい生き物なんて、例えばキッチンにホイホイを仕掛ければごっそりと取れるけどな。

 それに、彼らも彼らで何なんだ。

 無理やり誘拐するわ、縄で縛り付けるわ、挙句の果てどこかに連れて行かれそうになるわ。

 ・・・そういえば電話で言っていたあの女っていうのは、もしかしたら彼女なのかもしれないな。

 だって自分から天敵って言ってたし。

 さて、そろそろ耳鳴りも収まってきたころ、またエンジンはかかり始めた。

 なんだ、まさか負けたのか?

 かなり法に触れるような行為を行ったうえで、それで負けたのか?

 なんてことだ・・・

 これじゃあ結局運命は変わらないじゃないか。

「と、そういえば縛られていたんだったね」

 気のせいか、なり続けるエンジン音に交じって女性の声が聞こえた。

 ああ、とうとう幻聴が聞こえ始めたか。

 精神がイカレルのもそう遠くないかもしれない。

「ちょっと痛いかもしれないけど、まあ男の子だし大丈夫だよね」

 その言葉通り、傷1つなかったはずの右腕に強い痛みが走る。

 足にも軽く刺されたような電流が走り、本当に何事かとパニックになっていた。

 けど、パニックだからこそ良かった。

 とにかくどこかに逃げようともがいたおかげで、手足に縛られていた縄がきれいに解けたのだ。

 もしかしてだが、縄が緩んだのか?

 だとしたら案外拍子抜けだった。

 先ほどまでの諦めは一体何だったのだろうか。

 ともかく腕が自由になったことだし、この拘束めいた目隠しもそろそろ外してしまおう。

 そうやって頭の方に手をやろうとした、その時だった。

「ああ、まだそれは外さないでもらえるかな。いろいろと面倒なんだ、そうされると」

 とても冷ややかな何かが、ぼくの首すじにあたる。

 それが何かはわからないが、まずまともなものではないだろう。

 直観的だけど、ぼくはそれに恐れて手を引いた。

 その意思表示に気づいたのか、彼女もその何かを離した。

 ・・・あれ、そういえばなんで女性が車内にいるんだ?

 それにさっきから、人の気配が見つからない。

 少なくとも一人は居るはずなのに、その存在が感知できないとはこれはいったいどういうことだ。

 それに先ほどまでいなかったはずの女性がいるということが、とても気になってしまう。

 まさか、まさかだが。

 ここにいる女性って、『あの女』か?

 だとしたらつじつまが合わないことはないが、しかしそれだと疑問が残る。

 そしたら今度、ぼくはどこに連れていかれるのだ。

 なんだよ一回危機から脱したと思ったら、また別の問題が発生するって。

 かなりベタな展開だが、そんな小説まがいの展開なんて一度だって体験したくなかった。

 実際二度ほど体験してしまっているのだが。

 いや、一応連なって発生しているからまとめて一回というべきか?

 どちらにせよ、めんどくさいことに変わりはないが。

「さて、着いたよ。まだそれは外さないように」

 その言葉と同じくして、エンジン音もストップした。

 さてどこかしらに着いたようだが、これから僕はどうなってしまうのか。

 絞首か斬首か銃殺か釜ゆでか溺死か電気か火あぶりか生き埋めか薬殺か石打ちか鋸かはりつけか。

 適当な処刑方法を思い浮かべてみたが、どれをとっても今から身震いがしてくる。

「これにつかまって」

 そう言って彼女は、ぼくの自由になった腕を握った。

 それを支えにして、横になっていた体を持ち上げる。

 彼女の手に連れられて車外に出ると、とても異様な空気がぼくの肌を撫でまわした。

 それに、今は1月だというのに妙に蒸し暑い。

 そんな困惑しているぼくの手を、彼女は無言で引っ張っていく。

 そして建物の中にでも入ったのか足音が変わり、地面が急に固くなった。

「・・・もう外していいよ。鬱陶しいだろうし」

 はあ、そう言うのなら。

 細結びにされていた布(ご多分に漏れず痛くはない)を頭から抜き取る。

 視界が開け、目の前にはどこの誰だか知らないが、全身赤に身を包まれた女性が立っていた。 

 この十分ほど世界が暗かったせいで、余計その女性が眩しく見える。

「えっと、あんたが『あの女』なのか?」

「『あの女』?開口一番に何を聞かれるのかと思ったら、すまないがよくはわからないね」

「じゃあなんでぼくはここに強制的に連れてこられたんだ、とでも聞けば良かった?」

「それがベスト。まず自分の安否を心配しないと。今の、そしてこれからの」

 これから。

 じゃあやっぱりしかるべき何かでも受けるのか。

 ぼくが何をやったと言いたいところだが。

「まあそこらへんは安心してもいいよ。一応君は、私にとって敵ではないから」

「それは、味方だという捉え方でいいのか?それとも相手にならないという意味か?」

「どちらでもあるよ。確かに私は君の味方だし、君に危害を加える気はない。けど、私が君に負けるなんてことも、無い」

「ずいぶんな自信だな。もしかして本職の方か?」

「んー、まあ似たようなもんだね」

 似たようなもん、といったら教えるタイプか。

 空手かプロレスか、柔道の人か?

「で、教えてもらってもいいのか?俺を連れてきた目的」

「いいよ。けどその前に――――」

 面倒なことを、終わらせないとね。

 いつから居たのか知らないが、この建物の外に多くの人の気配を感じた。






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