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天才少年の殺人衝動  作者: 蔵餅
1章―奇病発現
4/9

02

毎度のことながらお久しぶりです。

今回は報告を一つ。

八月中の間ですが、このシリーズを2日ごとに更新していこうかなと思います。

深い理由は特になく、単に時間があったから(勉強しろよ・・・)と、あとはネットの知り合いさんに少々感化されたからです。

というわけで、今月はまた頑張っていこうと思いますのでよろしくお願いします。

「・・・別にいいけど、ちゃんと返してよ?」

「わかってるわかってる。近いうちに返す」

 空返事を返しながら、手のひらにおかれた五百円玉を握る。

 さて、そろそろ腹もすいたことだし、ぼくも朝飯を食べるとしよう。

 とりあえずそれをポケットにしまうと、妹の横を抜けキッチンの扉をくぐった。

「おう、にーちゃん。なにちんたらしてんだ。学校に遅れちまうぞ」

 とほぼ同時に、ほほに弁当をひっつけた妹とすれ違う。

「お前、やっぱさすがだよ」

 呆れたようにして、それに手を伸ばした。

 



 校舎裏というものは、どこの学校にとっても告白する絶好のスポットだと聞く。

 まあ、恋愛どころか友情関係すらまともに保てないぼくにとっては、どうでもいいことなのだけれど。

 否、どうでもよくなくなったのは、この朝からだった。

 この朝、今朝に古めかしい靴箱を開けた時から、関係が起こってしまった。

 いつものように靴を取り出すと、それに引っ張られて綺麗に二つに折りたたまれた便箋が、すのこの上に零れ落ちた。

 ・・・悪い悪戯だろうと、さすがにそう思った。

 まさかこのぼくなんかを好くような人間が、この世界に居るはずもない。

 地球外生命体がもし存在したとしても、ぼくを好むものはまさかいないだろう。

 別に傷ついたわけではないが、今時こういう嫌がらせは流行っているのだろうか。

 もうとっくの昔に、それどころか恋文を靴箱に入れるという文化さえ、廃絶されたものだと思っていた。

 で、差出人の名前は・・・

 萩原、美紀?

 文面からして、萩原とかいう女子(もしかしたら男かもしれないが)は同じクラスなのだろう。

 が、いかんせん物覚えが悪いせいで顔が思い出せない。

 そんな奴と話した記憶さえない。

 もしかしたら、他のクラスのやつかもしれないが。

 で、その文面にはこうも書かれていた。

『この手紙を見たら、今すぐに校舎裏に来てください』

 いや不幸の手紙かよ。

 呪われるだの、倒産するだの、不吉な事こそ書かれていなかったけれど、それっぽいような文章が、丸く書かれていた。

 うん、やっぱりこれは嫌がらせの類だろう。

 しかし、この手紙の差出人は本当にうまく書いたものだ。

 特にこの丸文字なんて、女子のらしさそのものじゃないか。

 逆にどんな奴がこれを書いたのか見に、校舎裏に行ってやろうかとも思ったが、いや、それは何かと勘違いされそうだ。

 とりあえずこの便箋は、ぼくの一つ下の靴箱に入れた。

 別にこれは嫌がらせではなく、あくまでもう一つの可能性のためだ。

 つまりは投函ミス。

 ぼくではなく、一つ下の男子に向けての手紙だった可能性。

 ぼくの上は女子なので、萩原が男子であるか、女子好きでもない限り、そんなとこに入れないだろう。

 と、よし。

 これで一件落着というわけだ。

 かなり間接的ではあるけれど、人様の恋を手助けしたというのは、なにかこう達成感のようなものを感じる。

 さて、改めて教室に向かうとしよう。




「雨宮君。ちょっといいですか?」

「・・・はい?」

 授業も4時間目が終わり、いつものように昼休みが始まった。

 相変わらずガラガラの教室の中、ぼくも妹お手製の弁当を持って、いつもの場所に行こうとした。

 そんな時に、彼女は僕を制止させた。

 うちの学校は男女ともに制服が決まっているので、おそらく女である彼女が、あろうことかぼくに声をかけてきた。

 この数人しかいないこの教室の中で、あろうことか全く面識のないぼくに。

「少し、手伝ってほしいことがあるんですが・・・」

 と、彼女はうつむいて言った。

 手伝ってほしいことか。

 別にぼくじゃなくてもいいのに、と思いながら周りを見ると、なるほど教室には女子しか残っていなかった。

 力仕事だとしたなら、まあしょうがないか。

 弁当を鞄にしまうと、いいよと精一杯の返事をした。

「じゃあ、ついてきてください」

 それがまあ良い印象でも与えたのか、そう言った彼女の顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 彼女に言われるまま連れられるまま、行きついたのはグラウンドの端にある暗い体育倉庫だった。

 長く掃除が行われていないのか、奥には物が散乱していて、なぜか跳び箱から肉でも腐ったようなカビっぽい異臭が放たれている。

 床には何か重いものでも引きずったのか跡が残っているし、もしいま地震が来たならすぐにでも崩壊しそうだ。

「で、何を運べばいい?」 

 おそらく彼女がいるであろう、暗闇に向かって声をかけた。

 ・・・言葉は、返ってこなかった。

「いッ・・・・」

 返ってきたのは――――掌底だった。

 顎に激しい痛みが走り、本能的に体が後ろに飛び退く。

 何があったと、それはよくわからなかった。

 いや勿論、ぼくが掌底を受け、攻撃されたというのは理解できている。

 わからないというのは、なんでぼくが彼女に攻撃されたか、ということ。

 そして、なんで彼女が、人の首を持っているのか、ということ。

 それはよくできた作り物かもしれないけれど、どこかにカメラが隠してあって、倉庫の外で『ドッキリ大成功』と書かれた看板を持った奴がいるのかもしれないけれど。

 むしろ、そっちの方が楽だった。

「・・・そういえば、名前。何てったっけ」

「そんな、酷いじゃないですか。クラスメイトの名前を忘れるなんて」

 目が慣れてきたようで、彼女の恍惚とした笑みが見えた。

 その手には変わらず体のない人間と、どこからか取り出したであろうカッターナイフが握られていた。

「萩原美紀。忘れないでくださいよ、雨宮君」

「萩原って、今朝の・・・」

 なんだ、お前が萩原か。

 ってことはやっぱり・・・

「あの手紙って、ぼく宛だったりするのか・・・」

「びっくりしましたよ。なぜか雨宮君の靴箱に入れた手紙が、他人の手に渡っていたんですから」

「それは、悪いことをしたな」

「ええ、だから一つ――――――」



 お仕置きをさせてください。

 彼女はそう言って、カッターナイフを振り下ろした。



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