プロローグ
というわけで、プロローグというか前置きのみの投稿です。
次回は、まあ後程・・・
「ところで、人はなぜ生き物を殺すと思う?
「ああ、もちろん豚とか牛とか魚とか、そういう、食すための生き物ではなく
「例えば虫とか・・・は、そういえば、食虫文化の国もあったっけ
「なら、むしろ核心から迫ろうか
「なぜ人は――――
「人は、私は、私たちは――――
「なぜ、人を殺す?
「殺してはいけないと、たしかにそう教えてもらったはずなのに
「なのに、なぜ殺す?
「・・・わからない、というか、何言ってんだこいつって顔してるね
「いや、それても恐怖かな?
「いいねいいね。おねーさんはそういう人が怖がっている顔を見るのが――――
「大好きなんだ
「ん・・・? ああ、なるほどなるほど
「君のその答え、一風変わって面白いね
「存在そのものが理由である、か・・・
「私の聞いた答えの中でも、それは飛び切り異質だよ
「さすが天才
「・・・じゃなくて、自称凡才、だっけ
「それだけの才能と頭脳を持っていながら、どうしてそこまで自分に対して皮肉になれるのかねぇ
「いやしかし、新しい発見をするというのは楽しいものだ
「ほんと、昔の偉人たちが羨ましいよ
「と、かなり主軸がずれたか
「正直、君のようなまるで完璧の意見が出た時点で、私の捻くれた答えなんてただの戯言にしかならないんだけど
「そういえば君、今は高校生だっけ
「皮肉だねぇ、そんな多感な時期にそう成っちゃうなんて・・・
「まあ私も、君と同じくらいのときにそう成ったからね
「そういう意味じゃ、君も私も同類ってやつか・・・
「そんな嫌そうな顔をしないでくれよ、おねーさん泣いちゃうぞ?
「それで、そんな同類の君に、一つ提案があるんだけど
「どうだい――――――私の仲間になる気はないかい?」
彼女は、そう言った。
しかし、正直こんな状況だと、一周回って警察を呼ぶ気がなくなってしまう。
それぐらいに凄惨で、それぐらいに残酷で。
それなのに平気な自分というのは、やはり彼女が言うところの『成ってしまった』のだろう。
手に着いた赤色にさえ無関心なのが、何よりの証拠、か。
それに今でさえ、あのナイフの感覚が手に残っていた。
で、仲間だったか。
興味が無いと言えば嘘になるが、いやでも・・・
うむ、たしかにこいつとは仲良くしておいた方が、ぼくの利益にはなるだろう。
まあ嫌だが。
ぼくは無言のまま、血に染まった左手を掲げた。
もちろんのこと、親指を下に向けて。