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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

手を差し伸べる人は

作者: じゅり朱色

死のう。

だって生きてても、意味は無いんでしょう?

無言で走る通学路。

ぼくは考える。


誰もぼくの本質を見てくれない。

ーー手を、差し伸べてくれる人は居なかった。



ぼくはずっと1人ぼっちだった。

父さんと母さんは早くに死んで。交通事故だったらしい。ぼくもそこに乗っていたが1人助かったらしい。

親族は居なかった。そのため、色んな施設をたらい回しにされ、小さいながらもぼくは人と接することを止めた。


どうせ、一ヶ月程度の関わり。

何故にそんな短かったのか。いじめを受けていたのだ。

ぼくにはそれすらも興味もなく、されるがままにされていた。

寝泊りしていた職員すらも見て見ぬふり。

上の方の局の人が月一で来る。その時にこの惨状に気が付いて。

またどこかに連れていかれる毎日。

大きくなってから聴いた話だが、そこに居た職員、全員仕事を辞めていて、そこに居たぼくをいじめていた人たちはどこかに連れていかれたそうだ。まあ、興味もないが。


そして、大きくなって高校生。

今までの最長、半年と長く居られるのは珍しかった。

そして、1人だけだが、話せる人が出来た。

凛、というらしい。女の子。ぼくに興味があるのだろうか。そんな事は分からないが。


そして、彼女がぼくと話していると。その放課後に、呼び出しをよく食らうようになった。

トイレに呼び出されて、指定された個室に入る。

多分、ろくでもないことをするんだろう。この手は慣れていた。

降り注いできた水。頭にぶっかかり、服をびちゃびちゃに濡らす。外からはいやらしい笑い声。「凛ちゃんに話しかけるじゃねー」と遠くで聞こえたような気がした。

ああ、そうか。彼女に話しけなければいいんだな。

そう結論づけて。ずぶ濡れのまま歩きだす。


次の日。

彼女は何故か話しかけて来なかった。まあ、こちらとしては好都合。面倒臭いことが無くなるだけだ。

でも、何故か女子がそわそわしているのは何故なんだろう。

まあぼくには関係ない事だろう。


放課後。ぼくは彼女に呼び出しを食らった。

彼女に呼び出されることをしただろうか。不思議に思いつつも指定された住所の元へ。

そこは、ぼくの住んでいる施設の隣だった。

なんで、こんな所に……?

隣は荒れた土地のみ。そこに、彼女は立っていた。

「なに?こんな所に呼び出して」

「すこし、話したいことがあって」

彼女がぼくに近付いてくる。ぼくは後ろに下がる。

「ここで言って。これ以上ぼくに近付くな」

そう言ったのに。彼女は近付いて、ぼくの右手を掴んだ。そして話出す。

「私ね、貴方のことがーー」

それ以上は聴いては駄目だ。そう思った。

ぼくは咄嗟に彼女の腕を引っ張り、顔を近づけて口を塞いだ。

硬直する彼女。

ぼくはゆっくり離した。

「……ごめん。でもこれ以上は聴きたくない」

「……そっ、か…ごめんなさい……こまらせて、ごめんなさい」


泣きながら彼女は走っていった。心の気持ちを取り残したまま。


次の日。

ぼくはクラス全員(あの彼女は除く)に呼び出された。

そりゃそうだろう。昨日のことがある。話は伝わって居るのだろう。

女子が一斉に教室に入ってきたぼくを見て、一言。

「サイテーね」「凛ちゃんを傷つけたくせに」

などなど罵声が飛んでくるが無言で聞き流す。

そして、リーダー格の女子が一言。

「罰を与えなさい!」

「おう!」

と、男子の声が響き渡って。

ぼくに襲いかかってきた。咄嗟に避けた、しかし人が多すぎる。結局抵抗は、はじめの避けたもの以外抵抗しなかった。

ボロボロにされ、顔の皮膚が裂け、血が出てくる。

もう、感情が停止してどうでも良くなる。

早く終らないかな、と思うのみ。


「……っ、なにしてるの!?」


急に彼女の声が響き渡った。


「やめて!やめてよ!!」


彼女はこの暴行を止めようとしている。

しかし、暴力に興奮した男どもが止まるはず無かった。

彼女が殴られるーー!

ぼくは力が入らない体で、今ある体力を振り絞り、彼女と男の間に入り込んだ。


ドゴォッ!


殴る音が響いた。


ぼくはもう、立っていられるだけの力は無かった。

ぐしゃり、と音が出そうなほど倒れて。

熱気が冷めたクラスメイトは逃げ出した。

残ったのは、ぼくと彼女のみ。


ぽろぽろ涙を、零して。

ぼくを抱え込んで、涙を流す。


「酷いよ……ごめん、ごめんなさい……私のせいで……」

「……っ、大丈、夫……」


彼女は応急手当だけして。先生を呼んで。救急車を呼んで。ぼくは入院した。


その後の処置はぼくと彼女以外の暴行を加えず見ていた生徒は謹慎となり、直接指示を出した女子、直接ぼくを殴って暴行を加えた男子達数名は退学になったそうだ。

ぼくは奇跡的というかなんと言うか骨は折れていなかったので学校に早目に復帰出来たが、ぼくと彼女しかいない。ほかの人は二週間の謹慎。長い。


これほどまで迷惑をかけたのにぼくは生きていていいのか?

なにも本質を見られずに。表面だけで生きていくなんて。


……明日、ぼくは死のう。

そう決めた。

手紙を書こう。特に彼女に。


そして朝の通学路。

2枚、手紙を持って。最後の授業を受けに行こう。



END

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