『異世界エリュセードについて』
サージェスティン
「さーて、まずは、俺達の住んでいる『異世界エリュセード』の事から解説していこうかなー」
ルディー
「姫ちゃんの住んでた世界の常識から考えると、結構こっちの世界には驚く事は多いらしいな。え~と、まず……。『エリュセード』は、『神々』が創り出した世界のひとつなんだ」
サージェスティン
「ユキちゃんの住んでいた世界、俺達の住んでいる世界、他にも沢山、神々が創った世界があるんだよ。普段はお互いの世界の事なんて知らないし、意識する事もないんだけどね。俺達の世界では、夜空に輝いている星々のひとつひとつが、異世界の光だと言われているよ」
ルディー
「姫ちゃんの世界では、夜空の向こうにあるのは『宇宙』とかいうのだって言ってたな」
サージェスティン
「その部分も俺達の世界とは違う点だよね。俺達がエリュセードの夜空に向かってどんなに飛び続けても、その向こう側には行けないから」
ルディー
「だな。他にも、その世界を創造した神々によって環境や種族の違いも出るし、発展している文明も違う。俺達の世界は魔術、姫ちゃんの世界は科学っていう風にな」
サージェスティン
「うんうん。で、俺達の世界にいる種族は、まず、獣と人、両方の姿に変じる事が出来る長寿の種、それから、人間、精霊、魔物、などの存在が生息しているよ。狼王族や竜皇族、竜煌族みたいな本性が二つあるタイプは千年以上生きるんだ。人間は大抵二百年程度で、魔力が強ければ三百年くらい生きる事が出来る」
ルディー
「精霊は半永久的みたいな話があるわけだが、実際のところは謎だな。一人の精霊の一生を見届けられる奴がいるとしたら、神ぐらいだろうし……。あぁ、それと、魔物の類はその種によって異なるな。百年以下の寿命の奴もいれば、何百年も生きてる奴もいるっていうし。まぁ、基本的に戦闘能力の高い魔物は長生きだと思うぞ」
サージェスティン
「まぁ、百年以下で死ぬ種族はいないって感じだねー。さてと、次は……、え~と、このエリュセードを創造し、今も見守っているのは、『三人の御柱』と呼ばれる神様達と、その下についている数多の神様、って事らしいよ」
ルディー
「ひとつの世界を支えるには、必ず『御柱』となる神が必要らしいんだよな。例外もあるらしいけど、とりあえず、俺達の世界は、『黄金の月を象徴とする長女神・フェルシアナ』、『蒼銀の月を象徴とする二番目の神・アヴェルオード』、『紅銀の月を象徴とする三番目の神・イリュレイオス』が御柱とされている。この三神は姉弟神で、絶大な力を秘めているらしい」
サージェスティン
「長い歴史の中で、その姿を見たっていう人もいるけど、実際に存在しているっていうのは確かみたいなんだよね。例えば、獅貴族の王国、ゼクレシアウォードで行われている行事のひとつでは、フェルシアナ神が巫女の身体に降りて、祝福の言葉を伝えてるっていうし」
ルディー
「姫ちゃんの世界でも神々の信仰はあるらしいが、不可思議なもの自体が疑わしいって思われてるみたいで、俺達の世界ほど信じられてはいないみたいだな」
サージェスティン
「そうそう。向こうには科学っていう文明が出張ってるから、俺達の使ってる魔術とか神秘体験とか完全否定されちゃう的な、ね。目に見えるものだけを信じるのもいいけど、見えないものを見ようとする意思も大事だって、俺は思うんだけどなー」
ルディー
「それは、その世界に生きてる奴が決める事だろ? 姫ちゃんの話じゃ、生きるのに支障はないらしいからな。さて、次だが……、俺達の世界における最も発展している文明のひとつは、『魔術』だな。エリュセードには『魔力』がって、俺達も生まれながらに『魔力』持ちだ。専門の道、つまりは『魔術師』の事だが、それに就いていなくても、簡単な魔術くらいなら誰でも使えるって感じだ」
サージェスティン
「生活にお役立ちな基本魔術ってやつだね。初級程度の魔術は学校に行ってれば教えて貰えるし、自分でも本を読めば、使えるようになるよ。え~と、じゃあ次は……」
ルディー
「エリュセードの国家についてだな。姫ちゃんの世界と同じように、ひとつの国を統べる統治者がいる。で、その下に貴族階級があって、国には国王や皇帝に忠誠を誓う騎士団や魔術師団、それから、諜報部やその他の勤め人がいるって感じだな」
サージェスティン
「俺とルディー君は、国の主に仕える騎士団長職だね。苦労も多いけど、お給料は勿論バッチリだよー」
ルディー
「まぁ、エリュセードで大きな戦争の類は滅多にないわけだが、狂った魔物の浄化や、必要が生じた場合の討伐、戦闘面や治安での仕事は結構多いな。それに、平和ボケしないように団員の訓練はしっかりとやる必要があるし、結構色々と大変なんだよなぁ……」
サージェスティン
「お疲れだねー、ルディー君」
ルディー
「最近多忙の極みだからな……。あと、王宮関係の勤め人は基本的に給料が高い。それと、町の方では自営業で店をやってる奴や、職人街には色んな専門職の奴らが揃ってるぜ」
サージェスティン
「基本的に王都は活気が溢れてるよね。で、王都から離れていくほどのんびりとした感じが多いというか」
ルディー
「その土地ならではの気質ってのあるな。あ、それから、移動手段は、『徒歩・馬車・飛行・転移』の四つだな。徒歩と馬車は主流だが、飛行は魔術知識があって急ぎの用だとよく使う。転移の方は、中級~上位の魔術師でないと行使は難しいだろうな。あとは、そうだな……、転移用の魔石とかを使用すれば、素人でも可能だ」
サージェスティン
「でも、基本的には、徒歩か馬車だよねー。皆旅好きというか、歩いたり、馬車から見える景色を楽しみたいって人が多い気がするよ」
ルディー
「だな。それと、俺達の世界や暮らしについてだが、姫ちゃん曰く、『西洋中世風ファンタジー』な仕様らしい。あっちの世界にはない要素が満載らしくて、ロマンが溢れてます!! って、姫ちゃんに言われた。すげー、目を輝かされてな」
サージェスティン
「みたいだねぇ……。俺達の世界や暮らしの在り方が、向こうでは本の中だけに在る架空のものとして扱われているみたいだよ」
ルディー
「だから、なんだろうなぁ……。姫ちゃんが魔術や俺達の暮らしぶりに興味津々なのは」
サージェスティン
「俺達も向こうの世界に行ったら、きっと同じような事になるんじゃないかなー? さて、次の紹介ポイントは……、あ、そうだ。エリュセードにはね、『表』と『裏』があるんだよ。『表』は、ユキちゃんやルディー君達が住んでる面で、『裏』は、俺や陛下が住んでるガデルフォーン皇国のみが存在する場所。存在している空間は違うけど、どちらもエリュセードなんだよ。ちゃんと行き来の手段もあるしねー」
ルディー
「遥かな昔にイリューヴェル皇国の皇族の一人が次期皇帝の座を巡る争いの中で逃げ延びた結果、『裏』の空間に辿り着き、それがガデルフォーン皇国の始まりになったっていう伝承があるんだよな」
サージェスティン
「その建国の際に、エリュセードの御柱である三神が手を貸した、とも言われているね。最初は皇国が安定するまで『表』には存在を知らせずにいたんだけど、時が熟すと国交を始めた。そのお陰で、ガデルフォーンは繁栄の道を歩み続けている。『表』の世界で行われる王族会議にも陛下が出席してるし、外交や貿易の類も盛んに行われているんだよー」
ルディー
「まぁ、『表と裏』に関してはそんなところだな。あとは……、神々が住んでるっていう場所が、エリュセードの遥か上空に入り口があって、そこから『天上』と呼ばれている神々の楽園に繋がってるっていう話ぐらい、か。まぁ、他に何か聞きたい事があったら、『質問&拍手ボタン』から頼む」
サージェスティン
「第一回、『異世界エリュセード解説』完了だねー。わぁい、ルディー君と俺の共同作業の第一回目が無事に完了だー」
ルディー
「気色悪い言い方すんなぁあああっ!!」
サージェスティン
「酷いなぁ……、ラシュさんの代わりに俺がルディー君を可愛がってあげてるっていうのに」
(ラシュ=ラシュディースの事。ルディーの父親であり、サージェスティンの年上の友人でもある)
ルディー
「親父の話はいいっつの……。はぁ……、もういい。帰って寝る」
サージェスティン
「えぇ……? もうちょっと一緒に話そうよー。あ、手合わせでもする? それとも、一緒にショッピングとか」
ルディー
「帰って寝る!! じゃあな!!」
(大図書館から全力ダッシュで逃亡)
サージェスティン
「……あぁーあ。寂しい扱いだなー。でもまぁ、ラシュさんにルディー君は元気だよって報告出来るからいっか」
(優雅にお茶を飲みつつ、寛ぐ魔竜の騎士であった)