彼方の君
君は僕を離さない。
この痛みも、感情も、
感覚も、思考も、想いも、
気がつけば全部君から与えられていた。
頼んでもいないのに。
そして、鋭利な痛みは僕を裂いて遂には全て散り散りに、砂のようにしてしまう。
それは風に舞うことも、他の砂に交わることもなくただ、その場に佇んでいる。
君は耳元でささやく。
そして僕の首を絞める。
限りなく白く透き通り、崩れてしまいそうな脆さを抱えた繊細な美しさと、僅かな熱を持った、優しさにも似た感情で。
荒れ果てて、
乱れ果てて、
傷みだらけで、
干からびた 生 がまとわりついている、僕の汚れた首に、そっと手をかける。
爪の突き刺さる痛みもなく、五本の指達による圧迫感もない。
ただ苦しさと苦しみが増していくだけ。
そうして君は僕を束縛し続け離さない。
今になって僕の意識の中に浮かぶのは、
君の笑顔と優しい言葉だけ。




