宿屋
兄貴も元気になり、倒したブラックウルフやスモールワームを道具屋に売り、旅費も安定している。
「今晩はゆっくり休むぞ、フォール!」
「はい、バザック兄貴!」
そんな夕刻。宿屋の廊下で、ばったりと巨乳姉ちゃんに会った。もちろん、金髪少女も一緒。
「あっ! お前は今朝の!」オレがぼったくり女と言う前に。
「あら、坊や。 お兄さんは元気になった?」手伝ってあげた優しいお姉さんのような態度の巨乳姉ちゃん。ビッチな予感……
「うっ」オレが言葉に詰まると兄貴が代わりに話してくれる。
「いやぁ、助かった。ブラックウルフと戦って、毒爪にやられてな。御礼に一杯どうだろうか?」 ぼったくりに怒こっていた兄貴が、ニコニコしている。巨乳パワーだな!
「そうですか? では、お言葉に甘えて……」金髪姉ちゃんも笑顔。
「名前は? オレはバザック」
「ふふ、美玲です」
「まさか、女二人で旅を?」
「そうなんです。でも、ブラックウルフだなんて、怖いわ」
「いやぁ、結構凶悪なモンスターもこんな田舎にもいるんだな。少し、驚いた」
「ふふふ、でも、そんなモンスターも、あなたなら敵じゃないでしょう?」
そんな話をしながら、兄貴は巨乳姉ちゃんと一緒に歩いて行ってしまう。
「ねえ。あなたはどうするの」途方にくれているオレに金髪少女が話しかける。ずいぶん積極的だな。でも、毒消しは10ゴールドを5ゴールドにしてくれたのだし。
名前も多分ユカだと覚えている。
「オレはまだわからない。来たばっかの村だし」
「そう……」向こうに行ってしまいそうな金髪少女に、勇気を出して声をかける。
「ユカ……さん……だよね。さっきはありがとう。」
「はじめまして、ユカですあなたは?」
「オレはフォール。」
確かに名前を教えてもらっていないのに、姉との会話を盗み聞いていたのではかっこ悪い。折角、仕切り直して自己紹介してくれているユカ。
優しいな。もう少しいろいろ話したい。
だが、兄貴と男二人で旅しているオレは、それ以上少女との会話する内容が思いつかない。
「……」
「……」
「そうだ。私、試して見たいことがあるの。今日買った鞭で」ふと思いついたように、金髪少女が助け舟を出す。
「まさか、オレを叩くのか!」オレがビックリしていると少女は笑い転げる。オレはトンチンカンな反応をしてしまったよう。
「そんな事しないわよ! モンスターと戦ってみたいんだけど、一人じゃ心細いの。一緒に来てくれない?」
「うん。」オレも兄貴に守られているだけじゃなくて、少しは強く成りたい!
ユカとオレは、陽がくれる前に、急いで装備を用意して宿を出たのだった。