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さあ、カードは出揃った

お、お久しぶりです!

 


「殿下、今までどこに行っていたのですか?」


 フェニスが生徒会室に戻るや否や、詰め寄るようにユニが問いかけてきた。

 一見、無表情であると思われがちではあるが、フェニスからしてみると少し苛立っているようにも見える。

 長年の付き合いだからこそ分かる違いなのであろう。

 しかし、他の生徒会メンバーは気づいていないようなので、指摘はせず、話をすり替える。


「ちょっとね。ところで、教師たちは集まっているかい?」

「はい、時間前ですが、もうすでに揃っています」


 今日は代表選抜期間最終日。

 代表者として選ばれた生徒の最終確認と、本番である新入生闘技祭に向けての話し合い。

 この話し合いには生徒会だけでなく、一学年全体の主任教師と、各学科の主任教師も参加する。


 フェニス、ユニを含めた生徒会メンバーは生徒会室のすぐ近くに位置する大会議室に移動する。


 大会議室の扉を開けるとすでに白熱した議論が始まっているよう。


「ダレン!貴様は何故毎回一人しか推薦しないんだ!?一人でも多く、生徒へチャンスを与えるのが教師の務めだろう!」

「うるせぇな、ジョシュ!俺は一人に力を入れるタイプなんだよ。別に一人しか選んだらいけないルールはないだろ!」


 いや、議論というよりこれはただの口喧嘩だろう。

 魔術技芸の主任教師であるジョシュと武芸の主任教師であるダレンがそれぞれに自分の意見を主張していた。


「それに、新入生闘技祭はトーナメント方式。人数的にもお前があと一人選べば丁度よく対戦表ができる!生徒会の手間がかからなくていいだろう!」

「そんな理由でもう一人選ぶのは面倒クセェだろ!指導する俺の手間も考えろ!」

「おまっ……!だいたいなぁ!他の担当教師だって二人指導したんだぞ!?」

「他は他。俺は俺でぇす!」

 ダレンは子供のように舌を思い切り出し、ジョシュにあっかんべをする。


 そんな子供じみた大人たちの言い争いに内心はドン引きはしながらも、フェニスは落ち着いた雰囲気を装い、間に割って入る。


「お待たせしました、先生方。それに、安心してください、ジョシュ先生。生徒会は生徒たちの生活をサポートするもの。手間なんて考えなくてもいいですよ」

「しかしだな…フェニス君、我々教師側も君に、というより、皇族であるフェニス皇子に仕事を増やしてしまうというのはやはり気持ち的に申し訳ないんだ」

「え〜、何を言ってんだよ、ジョシュ。せっかくフェニスがいいって言ってんだから、いいじゃねぇーか」


 ガン!と、ジョシュはダレンを殴りつけてから、冷や汗だらだらでフェニスに謝罪する。


「も、申し訳ございません、フェニス皇子。このバカは後で指導しますので、お許しください」

「いやいや、気にしてないですよ。それに私はここでは国の皇子でもない。生徒会長というただの生徒の一人ですよ」


 あくまでも、フェニスはここ、学校では、生徒会長として学園生活をおくっている。

 生徒会は基本、生徒たちの生活が円滑におくれるため教師とは独立した組織として存在している。

 学園長がトップとし、その下に教師と生徒会で均等に権力が分散しているはず、だ。


 しかし、それは表向きの話し。


 現状、権力は生徒会側に若干ではあるが、偏っている。

 その原因は紛れもなくフェニスが関係している。

 学園では生徒会長としての扱いになっているが、結局は皇族。

 フェニスに真っ向から歯向かおうとする力量がある者は学園長か、よっぽどのバカしかいない。

 それは教師にとっても、また、生徒たちにとっても暗黙の了解となっている。


 真面目なジョシュはそれを分かっているからこそ、フェニスにだけは無下な態度はとらない。

 だからこそ、フェニスを生徒としてフランクに接する数少ないバカ、ダレンの態度に毎度毎度を頭を抱えているのではあるが。


「それに、代表者はちょうど八名いますよ」

「……え?確か七名ではないんですか?」


 フェニスの言葉にジョシュは首をかしげる。

 魔術技芸二名、魔術工芸二名、武芸一名、入学試験新入生代表一名、そして全教師陣推薦、生徒会推薦、生徒会長推薦の一名で七名。


 では、なぜフェニスは八名と言っているのか?

 ジョシュの記憶が正しければ、他に代表者はいなかったはず。

 だが、フェニスに限ってそんなでまかせを言うわけではない。

「まさか……」

 そして、ジョシュは気づく。

 一つだけあるのだ。それを可能にすることが。

 答えは簡単。

 一人増やしてしまえばいい。

 不敵な笑みを浮かべ、フェニスは声高らかに言う。

 まるで盤上をひっくり返すほどのカードを一枚だすような。

 もし、そうだとしたらそのカードはジョーカーだろうか?

 今までの伝統を壊す力をもつフィニスだからこそ使える手札。

 さあ、闘技祭を荒そうではないか。それが吉と出るか凶と出るか分からなくても。

 さあ、改革をしようではないか。それが小さな変化でも大きな変化でも。

 さあ、名乗ろうではないか。その大胆不敵な道化師の名を。


「私、生徒会長フェニス・フレアローズはルーティミリアン・ハルツォーネを推薦します」


 こうして、新入生闘技祭の代表者は確定した。



 新入生代表枠のセレナ・レイン。

 魔術工芸推薦枠のリアン、バガル・パルノール。

 魔術技芸推薦枠のレアン、ダチュラ・ランプスキー。

 武芸推薦枠のロイド・クロス。

 生徒会、兼、全教師陣推薦枠のユーロン・アレクシア。

 そして、生徒会長推薦枠のルーティミリアン・ハルツォーネ。



 ある者は亡国の姫。

 ある者は無口の異国者。

 ある者は世界をまたぐ商人の跡取り。

 ある者は東洋の魔術師。

 ある者は魔術の鬼才。

 ある者は魔術を使えぬ平民。

 ある者は才能溢れる始まりの王族。

 ある者は奇想天外な道化師。


 カードは出揃った。

 最後に残るはどのカードか?


ご精読ありがとうございました!

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