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二話 死町村

第二話です

朦朧とする意識のなかで、なにやら話し声が聞こえる。


「おっ!よそ者が嫌そうな顔をしているぞ。悪い夢でも見ておるのだろうか?」

「左様左様。きっと女に捨てられた夢でも見ておるのじゃろう」

「いやいや、きっと化物に襲われておる夢を見ておるんじゃよ」

「いーやいや、きっとおかずに苦手な大根があったんじゃよ」

「おいおい、それはお前の嫌いな物じゃないか!」

「お、いやはや、こりゃ一本取られたわ!」


わははははは!と、そんな笑い声が聞こえ、私は意識をとり戻した。


「ん・・・・・・うん?」

「お!よそ者が起きたぞ」


目をあけると、複数の人が私の周りを囲んで、もの珍しそうに見ていた。

仰向けのまま辺りを見渡すと、大河ドラマでよく見る江戸時代の雰囲気を感じさせる着物を着た老人やら子どもがたくさんいた。

建物の中ではあるが、ここは何処だろうと思い、子供のころ迷子になった時のような、不安な気持ちになった。


「・・・・・・痛っ!」


体を起こそうとすると、頭頂部に鋭い痛みが走った。触ってみると、何かで強く殴られたのだろう、なかなか大きいコブができていた。それに頭を殴られたせいか、少し熱っぽくまだフラフラする。私はそのコブの痛みを和らげようと、さすりながら建物全体を見回した。

高い天井には藁がしき詰められ、等間隔に並んだ竹の骨組みがそれを支えている。

部屋の大半をしめる土壁はところどころはがれ落ち、格子状に組まれた細切りの竹がむき出しに見える。建ててだいぶ経つのだろう、わずかな板張りもところどころ傷んでいる部分が目立ち、ひどいところは隙間ができ光がさしこむ。そこからひんやりとした秋風がながれこみ、少し物悲しく感じる。

奥には棚や囲炉裏があり、たき火で灯りを灯していた。

広さは十二畳ほどで、それほど広くないのに人がたくさんいるため、これくらいしか建物の状況が把握できない。


「え、ここは・・・・・・?」


私は体を起こし、何が起こってここにいるのかを思い出そうとした。


「ッ!」


そして、すぐに思い出して思ったのだ。

樹海に村があるなんて聞いたことがない。

誰だって一番にそう思うだろう。

私は、目が覚めたばかりの頭で今のこの状況を整理して考えた。

ここにいる村人の服装、時代を感じさせる古びた建物、スーツ姿の私を見る好奇心のような表情、現在の日本の文化が伝わっていない生活環境・・・・・・。

ここは、昔あった廃村の生き残りなのだろうと、私はそう結論に至った。

都市伝説のような話で、どこかの山奥に人間は誰も受け入れない村があるとかないとかそんなことを聞いたことがある。

この村は、それと同じようなものなのだろうか?

しかし、この村人たちの表情を見るからに私を快く歓迎しているかのようにも思える。

そこで、私はふと不安になる言葉が頭に思い浮かんだ。


『来る者拒まず去る者追わず』


この言葉自体は単なることわざなのだが・・・・・・もし、この村人たちが去ろうとする私を見つけるとどうなるか?

私を捉え、最終的には・・・・・・。

そう思うと、急に恐怖が湧いてきて全身に鳥肌が立った。


「す、すいません!私、決して怪しいものではありません!だからその・・・・・・い、命だけは!」

「・・・・・・」


自殺をしに来た人が言う言葉ではないが、定番と言ったら定番だろう。

それに、混乱してパニックになっているのだからしょうがない。

言い訳の一つはさせてほしい。


「誰にも言いません!誰にも言いませんから!」


そう言いながら、私は建物の隅っこに逃げてしゃがみこんだ。

隅っこに逃げても意味がないことはわかっているのに、私はそこに駆け込んでしまった。


「あ・・・・・・ああ」


案の定、また村人たちに囲まれていた。

隅っこで囲まれているため、逃げ場が無い・・・・・・。


「う・・・・・・」

見られていることに耐えきれず、私は涙をながし、言葉も出せない状態にまで恐怖を感じていた。


「・・・・・・ぷっ」


そこで、


「わははははははははははははははは!」と、村人たちはみんな大声で笑い始めた。

「え・・・・・・え?」


私は村人たちが笑っていることに理解できず混乱していると、笑っていた老人が言った。


「おいおい!想像以上に怖がっているじゃないか!みんな、あんまりこの者を怖がらせてはいかんぞ!なんたって、この村の初めての客なんじゃからのう!」

「・・・・・・客、ですか?」

「そう、客じゃ。お前さんは、わしらが住んでいるこの村の初めての客なんじゃよ」

「村?ここってやっぱり村なんですか?」

「ああそうだよ、ここは村だよ」


私の質問に成人くらいの男性が答えた。


「もしかして・・・・・・看板に書いてあった、『死町村』って言うのが、この村の名前ですか?」

「そうそう!いやー、さっきはすまなかったな。あんたの頭叩いたのわしなんだよ。見ない奴だったからこれでつい・・・・・・」と、そう言いながら両手用の大きい斧を見せた。

「あ、はあ」

(つい・・・・・・で頭をぶったたくなんてどうかしていると思うけど・・・・・・え、斧!)


・・・・・・刃の反対の斧背で叩いたのだろう。


「でも、驚きですね。まさかこんなところに人が住んでいるなんて思いもしませんでしたよ」

「まあ、そうだろうな。しかし、お前さんは何故こんなところまで足を運んできたのだ?」

「えーっと・・・・・・その・・・・・・」

「ん?どうした?」

「あの、そのー、少し言いづらくて・・・・・・」


正直、少しどころかかなり言いづらい。

自殺をしにきたなんてとても言えない・・・・・・


「言いづらいとは、小心者じゃのう!小さいことは気にしないで、いっそのこと全部はきだしてスッキリしてはどうじゃ?」

「で、でも、言ったらきっとびっくりするし、その・・・・・・お、怒るかもしれないですし」

「そんな気にすることじゃないぞ!言ってみろ言ってみろ」

村人の老人が言うと、ここにいる村人のみんなが「そうじゃ、言ってみろ言ってみろ」と繰り返し言い出した。


ここまでのせられて、言わなかった自分の未来に光は無いと思った私は、意を決心してついに言った。


「わ、私は・・・・・・その、死にに来ました」

「・・・・・・」


沈黙が起きた。

村人たちが唖然とした顔で見ているのがわかる。


「死にに来たって、この森でつまり・・・・・・命を絶とうとしていたってことか?」

「・・・・・・はい、そうです」


村人の質問に私は正直に答えた。


「ご存知かと思いますが、この森は富士の樹海と言われまして、自殺の名所としてしられているんです。それでその、私もここで死のうと思っていたところで、少し思わぬハプニングに出会ってしまって、それからいろいろありまして、えーと・・・・・・はい、こうなっちゃったというわけです・・・・・・はい」


私は村人たちを見ず、キョロキョロと下ばかりを見ながら言った。


「・・・・・・なるほど、そうだったのか。なんか、すまないことをしてしまったな」


意外な返事で少しホッとしたが


「い、いえ・・・・・・気にしないでください。どうせ、私はこれから・・・・・・死ぬんですから」


私はそう言い、私はそこはかとない気持ちになった。


「・・・・・・いんや、お前さんが死ぬのはまだ早い」

「え?」


村人の言葉に私は唖然する。


「で、でも、私はここに・・・・・・」

「まあ、まてまて、とりあえずは村長の話を聞いてからでも良いんじゃないかの?」

「村長って、この村の村長ですか?」

「左様、他に誰がいる?」

「そ、そうですよね。わかりました・・・・・・。あ、ちなみに、この村ってなんで死町村って名前なんですか?」

「ん?気になるのか?」

「そりゃあ気になりますよ、凄い名前ですし(変な名前だし)。あ、まさかのここに住んでいる村人全員が幽霊だからだとか・・・・・・ってなんちゃって。失礼なこと言ってどうもすいません」

「いんや、それで当たっているよ」

「・・・・・・はい?」

「だから、今お前さんが言ったとおり、わしらみんな幽霊なんじゃよ」

「へ、変な冗談はよしてくださいよ。ただでさえここに村があるってことに驚いているし、この状況に戸惑っているんですから。それに、幽霊なんて信じていないし・・・・・・」

「だから、本当だよ。ほら、ここにいる者たちをよーく見てみろ。すこーしだけ・・・・・・透けてないか?」


私はそう言われ、村人たちを目を凝らして見てみた。


「・・・え・・・そ、そんな・・・」

(た、確かに、よく見ればこの人たち少し・・・・・・透けている!)

「あ、あ、あ・・・・・・んあぁ」

「・・・・・・ん?おい、こやつ・・・・・・また気ぃ失ったぞ」

「あらら、まったく弱いお客さんだねえ」

「んじゃあ、この者・・・・・・どうすっかの?」

「とりあえず、村長さんのところに運んどくか?目が覚めたら、つれて来いと言われているしの」

「それもそうじゃな。まあ、また気ぃ失ったがの」


村人のみんなが笑う。


「ほれ、じゃあ運ぶぞ。おい、そっち、右足持ってくれんかの・・・・・・。よしいくぞ、せーの・・・・・・」



ありがとうございました。

できたら良い点、直す点、アドバイスなど簡潔でもよろしいのでお願いします。

次話もよろしければ楽しみにしていてください。

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