十二話 できるかできないかは二の次
十二話です
工藤康 元サラリーマン 現無職
高木一 元政治家 現無職
掛布雅 元? 現?
秋山慎吾 元? 現?
鈴木健太 (; ・`д・´)
「おい、おっさん。いい加減どいてくれよ。重いし歩きづらい」
「いいじゃないか!仲間なんだぜ?これを機に仲良くしようじゃないか!」
「俺はおっさんと仲間になったつもりはないぞ」
「おいおい、そんなこと言うなよー。さっきの可愛い泣き顔が台無しだぞ?」
「なっ!うっせえ!早く手どかせよ!」
秋山は恥ずかしながらも掛布を振り払おうとしているが、掛布はニヤニヤしながら秋山から離れようとしなかった。
私が微笑みながら秋山と掛布を見ていると
「とても良い仲間に巡り合えましたね」
まだ名前のない彼女は、笑顔でそう言ってくれた。
「うん、自分でもびっくりだよ」
「それでその・・・・・・」
「ん?」
「ほ、本当に・・・・・・できるのですか?」
彼女はしぶしぶ聞いた。
「あー・・・・・・んー」
「ご、ごめんなさい!困らせる事を言ってしまって!他のみんなが言うものだから、私まで不安になってしまって・・・・・・その」
「いやいや、不安で当然だよ。私だって、やる気はあるけど今もずっと不安なままだよ」
「・・・・・・そうなのですか?」
「うん、まあ今は仲間を集めただけで、何をするとか具体的なことは何も決まってないからね」
「いえ!仲間を集めただけでもすごいですよ!」
「あはは、ありがとう。でも、あまり時間は使えないからね・・・・・・。できるだけ早くとりかからないと・・・・・・」
「時間がないのですか?」
「ないわけじゃないけど、今もどこかで、自殺をしようとしている人がいるかもしれない・・・・・・。そう思うと、のんびりしていられないんだ」
「・・・・・・そうですよね。でも、無理はしないでくださいね」
彼女のその言葉に私はすぐに返した。
「いや、無理はするよ」
「・・・・・・えっ?」
「なんで?って顔をしているね」
彼女の予想通りの反応に、少し間をあけて言った
「村長が言ったんだ。『死ぬ気があるなら、死ぬ気で動け』ってさ」
「・・・・・・」
「この言葉のおかげでさ、何が何でもやってやるって思うようになったんだ。できるかできないかは二の次にして、どんどん挑戦していこうって向上心が芽生えてきたんだ」
「村長が、そんなことを・・・・・・」
「・・・・・・人生の中で、一番心に染みた言葉だったよ。村長に出会って、本当に良かったって思っている。あ、もちろん君にもね」
そう言うと、彼女は恥ずかしがり、下を向きながら「あ、ありがとうございます」と言った。
「工藤さん、工藤さん」
そこで、健太が私を呼んだ。
「ん、どうした?」
「あの、村人が」
健太の指を指した方を見ると、村人が私たちに気付き集まってきた。
「ありゃ?お前さん戻ってきたのか?」
「あ、どうも。おかげさまで」
頭に布を巻いた男性の言葉に、私は軽いあいさつで返事をした。
「その・・・・・・この者たちはなんぞ?」
村人は四人を見て聞いた。
「この人たちは、国を救うための私の仲間です」
その言葉に、村人はみんな驚いた。
彼女の言っていた通り、私が放り投げて逃げ出したと思っていたからだ。
「おおっ!そうかそうか!お前さん、やってくれるんだな!」
「はい、自分のできる限りの事はやっていこうと思っています」
村人は笑顔で私たちを迎えてくれた。
「いやー、わしはお前さんがやってくれると信じておったぞ」
「何を言うか!お前さんがはじめにあいつは逃げ出したに違いないーとか言うてたじゃないか!」
「はあ?お前さんの方が先に言うてたんじゃろうが。忘れてしまったんか?まったく、これだから年寄りは・・・・・・」
「なっ!お前さんだってじじいじゃないか!」
「じじいっていうな!おじいちゃんと呼べ!」
「なにかわいくさせようとしとるんじゃ、どう呼んでもたいして変わらんじゃろうが」
「なーにーをおおお!」
そう言って、二人の老人は取っ組み合いをはじめ、周りの村人は盛り上がりはじめた。
私が取っ組み合いの様子を微笑ましく見ていると、「なあ」と掛布が私に聞いた。
「この村人たち全員、その・・・・・・幽霊・・・・・・なんだよな?」
「はい、そうですよ。よーく見てみたらわかりますよ。みんな透けていますから」
掛布は目を細めながら言った。
「・・・・・・た、確かに透けてるな」
「でしょ?」
「まったく、とんでもねえとこに来ちまったな」
「誰も信じてくれなかったからでしょ」
「そりゃあ、普通信じねぇぞ?あんな話」
「それもそうですよね。あははっ」
「まあ、今はお前の事・・・・・・信じてるぜ」
「・・・・・・ありがとうございます」
掛布はニッと笑い、私の背中を叩いた。
「頼りにしてるぜ」
「・・・・・・はい」
掛布のその言葉が素直に嬉しくて、私は密かに微笑んだ。
「・・・・・・ん?おい工藤、こっちに歩いてくるあの綺麗な姉ちゃんは誰だ?」
「え?」
掛布の言葉でその方向を見た。
それと同時に声が聞こえた。
「こらこらやめんか、客人の前で喧嘩などみっともないぞ」
村人の取っ組み合いが中断し、みんなが声のする方を見た。
「予想していたよりだいぶ早かったが、なにか成果があったみたいだな・・・・・・工藤」
村長は村人があけた道を通り、私の前に来た。
「はい、紹介します。私の仲間です」
そう言うと、四人は村長の視線に緊張しながらも軽くおじぎをした。
「・・・・・・ふむ、そなたらの話を聞きたい。ここじゃなんだし、私の家にこい」
村長はそう言うと、踵を返し家に向かって歩いた。
「わかりました。みなさん、行きましょう」
そして私たちは、村長の家に向かった。
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