十一話 謝るのは簡単にできる事ではありません
十一話です。
今回は少し長かったので、分割して投稿させてもらいます。
少し短いと思いますが、ご了承ください。
あと、簡単にですが、ネタバレにならない程度に人物紹介も載せときます。
工藤康 元サラリーマン 現無職
高木一 元政治家 現無職
掛布雅 元? 現?
秋山慎吾 元? 現?
鈴木健太 (; ・`д・´)
「死町村とは、物騒な名前だな」
「まあ、ここにいる村人はみんな幽霊ですからね」
「それとこれとは別だろ」
「た、確かにそうですよね」
「この村の名前は、村長がつけたのですよ」
私の高木の話に、彼女も入ってきた。
「そ、そうなんだ」
「ここの村長はなかなかのセンスをもっているな」
「そうなのです!村長はすごい人なのですよ!」
「いやいや、褒めてないよ」
「え、そうなのですか?」
私たちは何気ない会話をしながら村へ入り、みんなに村長を紹介するため、村長のいる家に向かっていた。
「・・・・・・あれ、秋山さん。どうしたんですか?」
そこで、驚きを隠せない表情で村を眺めている秋山に気付き、私は声をかけた。
「あ、いや・・・・・・本当に、樹海にこんなところがあったなんてね・・・・・・びっくりしたよ。あんたの言っていたことは本当だったんだな」
「いやー、私もはじめは驚きましたよ。樹海に村があるなんて、誰も信じないと思っていましたし、仕方ないですね。私なんて、この村を見つけた時は頭を殴られて気絶しちゃいま・・・・・・」
「工藤・・・・・・」
秋山は立ち止まり、私の方を向いて頭を下げた。
「え・・・・・・ちょ、秋山さん?」
みんなが秋山の行動に驚いた。
「疑って・・・・・・すいませんでした」
「え?い、いいんですよ謝らなくても!気にしてないですし、そもそも疑うのが当たり前じゃないですか。こんな話」
「・・・・・・俺は、最初からずっとあんたを信じていなかった」
「え?」
秋山は話を続けた。
「最初会った時、俺はあんたの国を救うって言葉に信じたフリをしてあんたの行動をうかがっていたんだ。今だって、あんたが怪しい行動をしないかとずっと警戒をしていた。それに俺は・・・・・・あんたに暴力をふるおうともした」
「・・・・・・」
「本当に、申し訳ないと思っている」
そう言って、秋山は再び頭を下げた。
「・・・・・・工藤」
私がなんて言おうか考えている時に、高木が言った。
「こういう時は、素直に謝罪を受け入れるべきなんだよ」
「え、でも」
「いくら自分に謝られる権利がないと思っていても、秋山には罪悪感があって謝罪をしている。だからお前は、謝罪を受け入れなきゃいけない」
「・・・・・・」
高木は話を続ける。
「わかるだろ?謝るというのはなかなかできるもんじゃない。真剣になればなるほどな・・・・・・。『俺は悪くない』『謝らない』っていうプライドが崩れることを恐れ、自分自身で反射的にストッパーがかかるもんなんだよ。だから、秋山はすごいと俺は思うよ・・・・・・」
「・・・・・・そう、ですよね」
確かに、高木の言うとおりだった。
私は、仕事をしている時のことを、ふと思い出した。
差別され、上司には理不尽な理由で怒鳴られる。それに私は、プライドを保ちながらもひたすら謝り続けた。
何度も・・・・・・何度も。
秋山はそんな私に謝ったのだ。
私の過去を知らないのはわかっているが、自殺をしようとした人の過去なんてたかが知れている。
そんな私に謝った秋山を、私はすごいと思った。
心から感心した。
だから、私は言ったのだ。
「秋山さん、顔をあげてください」
秋山は顔をあげた。
「・・・・・・ありがとう」
私はそう言って、頭を下げた。
私の行動に、みんなは驚いた。
「ッ!工藤・・・・・・?」
「頭を下げるのは、謝罪とは別にもう一つ意味があります」
私は顔を上げた。
「尊敬している人に対しての示しです」
「尊・・・・・・敬」
「秋山さんの謝る素直な姿勢に、私は心から尊敬しました。高木さんが言いましたが、謝るのは簡単にできる事ではありません。こんな私みたいな人相手に謝るなら・・・・・・尚更です。本気で反省しているなら、上げた時の顔を見ればわかります」
「・・・・・・」
「だから、ありがとうなんです。そして、こんな私を、これからもよろしくお願いします」
そう言って、私は改めて頭を下げた。
『あなたを尊敬しています』と、意味を込めて・・・・・・。
頭を上げると、秋山は私を見て呆然としていた。
「あ、あれ?」
何かまずいことでもしちゃったのかと思ったとき、秋山は右手で目を覆い泣き始めた。
「秋山さん?」
「・・・・・・くそっ!なんで・・・・・・なんで今頃になって、こんな人に出会ってしまうんだよ・・・・・・」
「秋山さん・・・・・・」
「工藤みたいないい人に出会えたのが嬉しかったんだよ。なっ!秋山」
掛布が笑顔でそう言って、秋山と肩を組んだ。
秋山は言葉では言わずとも、何度も頷いていた。
「・・・・・・ありがとうございます」
もらい泣きしそうになるのを抑えながら私が言うと、秋山は涙を拭いた。
「礼なんて言われるほど何もしてねーよ。これから・・・・・・やっていくんだよ」
「・・・・・・そうですね。じゃあその時に、改めてお礼を言わせてもらいます」
「ああ、そうしてくれ」
私と秋山は笑顔でそう言った。
「それではみなさん、気を取り直して行きましょう!」
そして私たちは、村の奥へと歩いていった。
ありがとうございました!
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