第八幕
古ぼけた小屋の一室のベットの上でスレイスは目を覚ました、ここは何処だろう?と思って動こうとすると体が動かない・・・無理に動こうとすると先ほどの戦いで受けた傷が悪化してしまいそうになる。ふとスレイスは自分の体を見渡してみた、体にはいかにも頑丈そうな拘束具が何個も着けられていた。
「どうやら・・・捕まったみたいですね」
何か使える者はないかと回りを見渡していると部屋の扉が開いた。
「目を覚ましたみたいですね」
そこには先ほど自分が殺そうとしていた女がいた。
「貴方にはいろいろと聞きたい事があるのですが・・・とりあえず包帯を変えましょう」
そう言って女はスレイスの傷を丁寧に消毒し包帯を巻き始めた。
「貴女の名前は?」
「私ですか?・・・ナイアって言います」
スレイスは少し驚いた顔を顔を見せた
「ナイア!?ということはレーデンの姫だったのですか?」
「形式上ではそうなっていますね・・・ですが殆ど親から見離されたようなものですが」
「見離された?」
「私は第二王女なのですが・・・非公式ですが私の一つ下に弟がいるのです。父上は王位を弟に継がせる気の様で・・・弟は文武に優れていまして魔法にも長けているのです」
「初耳です」
「ですから非公式なんですよ」
とナイアは少し笑ってみせる、スレイスはその顔に少しドキッとした。
「何だか長話になってしまいましたね、退屈させてすみませんね」
「いや、面白い話でした・・・お礼に一つだけいい事を教えてあげましょう、魔王には・・・あなた方がルークと呼んでいる青年にはあまり関わらない方が良いですよ?」
「それは忠告ですか?」
「いえ、ただの怪我人の戯言です・・・さてと、私はこれからどうなるんです?」
「傷が回復して魔法が使えるようになる前にレーデンに連れて行かれると思います」
「そこで・・・尋問というわけですか」
「すみません」
「何謝っているんです?もともと私は貴女を殺そうとしたんですよ?」
「それでも・・・すみません」
「フッフッフ、貴女は本当に面白い、私の部下がこの村を襲った時とは全く違いますね」
「どういうことです?」
「焔と言う火の魔法使いと戦ったでしょう?彼は組織の命令を無視してこの村を襲ったのです
・・・その時の貴女は問答無用で彼に魔法をぶつけたじゃないですか?」
「焔は罪のない人々を殺しすぎていました・・・ただの殺人者にかける情けはありません」
「言っておきますが、私は彼の三倍は人やモンスターを殺していますよ?」
「しかし焔の目はただの快楽殺人者の目であなたの目は確かな意思を持った者の目です」
「流石は姫・・・人を見る目は確かですね」
「誉めても開放はさせてあげられませんからね」
とナイアは意地悪そうな笑みを見せていった
「素直に誉めているんですよ・・・しかし本当に悲しいことですね」
「何がですか?」
「貴女の祖国が三日後に私の組織の大部隊に攻められるということがです」
その言葉にナイアは唖然とした。
「そ、それは本当のことですか!?」
「本当のことですよ・・・ですがここからレーデンまではどう頑張っても五日はかかる道のりですからね」
「そんな・・・父上・・・。」
ナイアはその場に泣き出してしまった。
「泣かないでください・・・女性に泣かれるのは初めてなんです・・・対応に困るじゃないですか」
それでもナイアは泣き続けた。その様子にスレイスは溜息をついた。
「方法がないこともないんですよ?」
その言葉にナイアは泣き止んだ。
「本当に素直な方ですね」
とスレイスは苦笑した。
「あの・・・その方法っていったい・・・。」
「魔王の影を使うんです・・・魔王の影は一種の異世界のようなものになっていてこの世界の何処へでも出口を作ることが出来るのです・・・ですがそれでも時間は遠ければ遠いほど繋げるのに掛かります。しかも作っている間は魔王は自らの魔力を放出し続ければなりませんから・・・耐えがたい苦痛に違いありません。」
「そんなこと頼めません・・・。」
「あなたがどう思おうと勝手ですが・・・そのために犠牲が出ることも考えておいてください」
「でもどうしてこんなことを教えてくれたんです?」
「怪我人の単なる気まぐれですよ」
そしてナイアは「ありがとう」と言い残して部屋から出て行った。
「ありがとう・・・ですか」
スレイスはそう呟いてまた眠った。
ナイアはスレイスから聞いたことを皆に話し探すのを手伝って貰っていた。
シルフィとラウは生き残った生徒にルークがナイアの大事な物を持って何処かへ行ってしまったと嘘の情報を流し探すように促した。
だが一時間経ってもルークの居場所は見つからなかった。シルフィの風の索敵範囲は半径三キロほどだった。それは村をすっぽり軽く覆えるような大きさだったが見つけることが出来なかった。
だがルークが誰にも何も言わずに村を出ることは考えられず途方にくれていた。
そして一度六人は集まった。
「風の索敵に引っ掛からない・・・でも町の外に行ったことは考えられにくいから・・・多分風が無い所にいると思う」
「風が無い所なんてあるか?」
「それもそうだよな・・・風が無いって事は空気が無いって事だし・・・人が生きていけるわけ無いしな」
「もしかして結界魔法でも張っているのではないですか?」
「それはないと思います姫・・・見たところによると闇の魔法は攻撃に特化しているようですし」
「でも未知なる魔法ですしあるかもしれません」
六人が議論を続けていると
「闇の魔法に結界魔法はあるみたいですがその手の結界魔法ではないですよ?」
と背後から声がしたので振り返った、そこにはスレイスの姿があった。
「お前・・・どうやって拘束具を・・・」
「私には一つだけ自慢できることがありましてね・・・傷の直りが常人よりも格段に早いんですよ」
「何のつもりでここに来た・・・。」
「困っているようなので助言をと思いましてね」
とナイアにスレイスはウィンクする。
「風の索敵は本当に素晴らしい能力ですが欠点が三つあります。一つ目は風の無いところは索敵できない、二つ目は一度に風の集めてきた情報を処理できない、三つ目は膨大な魔力を有する者がいる場合魔力によって索敵にモヤがかかり正確に索敵が行えない・・・ようするに魔王の魔力が凄すぎて見つけられないというわけです」
「そんなこと今まで一度も・・・。」
「それは魔王が魔力の源の目を封じていたからでしょう」
「それじゃあもう私じゃルークを探せないの?」
「そんなことありませんよ・・・きっと今貴女がしている索敵は魔王という人物を指定した索敵ですね?では今度は魔力の発生地点を指定して調べてみればいいのです・・・私とそこにいる朱雀以外の場所で魔力が多く発生している場所が魔王のいる場所です」
「何でこんなことを教えてくれるのですか?」
「怪我人の・・・いえもう怪我人ではありませんね、暇人の戯言です・・・そういえば私もレーデンに用があるので連れて行ってください」
連れて行けるかっ!!とアルマが反論しようとした時にナイアがそれを静止した。
「分かりました・・・その代わり手伝ってくださいね」
そしてシルフィの風の索敵が終了すると
「本当だ・・・ここ以外に一箇所だけ魔力の凄いところがある・・・。」
「何処だそこ?」
「ここから少し遠いところ・・・ルークがこんなところに行っているなんて初めて・・・。」
「ではとりあえず行ってみましょう」
そしてスレイスを含めた七人はルークの下に向かって行った。




