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第六幕

アルマが第一ゲートに着いたときには全生徒の用意が整っていた。

アルマはラウとシルフィに支えられながら馬車に乗せられた。

「アルマさんはここで休んでいてください」

そう言うとシルフィとラウは荷物の積み込み作業をしようと皆のところに行こうとした。

「二人ともちょっと待ってくれ」

アルマに呼び止められ二人は振り返る

「どうしたんですか?」

「戦いたいなんて駄目だぜ?」

「いや違う、少しばかり君達に聞きたいことがあってな・・・ルークという青年を知っているな?」

「ルーク?あぁ、あの寝ぼすけのことですか・・・何か失礼なことでもしました?」

「でもルークはいつも寝ているが比較的無害だからそれは無いんじゃないか?」

「知っていると言うことでいいんだな・・・実はルークが魔法を使えないということが本当かどうか知りたいのだ」

「・・・。」

シルフィは無言で押し黙った。

「そういえばそんなこと聞いたことあるな・・・この前の模擬戦も何にも使ってこなかったし、でも今一番ルークの身近な存在はシルフィだしシルフィは何か知らないか?」

「・・・。」

「おい・・・どうした?」

「・・・。」

「なにやら迷っていることがありそうだな」

「・・・。」

「良かったら話してくれないか?」

するとシルフィは言葉を紡ぎ始めた

「これから言うことは、ここだけの秘密と言う約束をしてくださるなら」

二人は頷いた。

「もしかしたら見間違えかもしれないんですが・・・これは、四年前で私とルークが顔見知りではなかった時の話です。当時の私は親の使いで隣村まで行くところでした、その時町外れにあるルークの家の前でルークとルークのおじいさんが話しているのを見ていました。ルークは何かの絵を握り締めてリーンとか言いながら泣いていたんです。その時本当にこれは見間違えかもしれないんですがルークの翠の瞳が黒くなっていたんです・・・。」

「おい・・・それって・・・。」

「ルークの正体が闇の魔法使いということか?」

「核心はありません・・・でも・・・。」

「それと・・・リーンと言っていたのだな?」

「確かに言っていました」

「わかった・・・協力に感謝する、出来ればそちらから探りを入れてもらうとありがたい」

二人は頷いて答えた。

三人が話を終えると荷物の積み込みが終わっており今まさに出発しようとしていた。

「では行きましょう」

というナイアの合図で一行は自分達の村への帰路を進んでいった。

途中ゴブリンと呼ばれる醜い人型のモンスターに襲われたが、まったく問題なく進んでいった。

二日、三日、四日と嵐の前の静けさを思わせるような静寂な日々が続いた。

五日目少し遅くなってしまったが村がそろそろ見えるだろうというところまで来た。

遠くの方で村の方から黒い煙が立ち昇っていたので一行は自分達のために祭りでもやってくれていると思っていた・・・近くに行くまでは、それは村が黙視できるところまで来た時の事だ・・・村の光景に一行は唖然とする、家が潰され、魔法学校は所々に穴が空いておりいつ崩れてもおかしくはない状態で、一番目に留まった光景は真ん中に積み上げられた人の死骸の“塔”だった。

そして生徒達一行が生まれ育った村は・・・壊滅した。

村の魔法学校跡地へ集まった一行・・・生徒達の中には両親を失ったショックで泣きじゃくるものは少なくはなかった。

シルフィは涙こそ浮かべはするものの流すまいと頑張っていた、ラウは黙々と死骸の“塔”の死体を供養して埋めていた。

ナイアとアルマはラウの手伝いをしていた。

全ての死体を埋めるのに殆ど一昼夜使ってしまい暗くなっていた空は明るくなり始めていた。

一晩経ち少し落ち着きを取り戻してきた生徒達を次なる不安が襲ってきた。

それは、帰る場所がないと言うことだった・・・だがもっと恐ろしいこともあった、それはこの村を壊滅させた奴がいつまた責めてくるか解らないという事だった。

落ち着かせようと努力するナイアだが、恐怖に飲まれる者には一切意味がなかった。

そこへシルフィとラウがルウとメイを連れてナイアとアルマのところにやってきた。

「これからどうします?」

「とりあえずレーデンへ皆さんをお連れしようかと思っています」

「そうなんだ・・・そういえばアルマさん・・・ルークの家を見て見ます?一応村はずれだったので無事だと思うんですが」

「見ても大丈夫なのか?」

「ルークは家に居ることなんて滅多にありません」

「では行くか」

「な、何をするつもりなんですかっ!?」

行こうとする五人をナイアが止める

「姫には言っていませんでしたな」

そしてアルマはこれまでの経緯をナイアに話した。

「言っておきますがこれは我等六人のみしか知っていません・・・内密にしていてください」

「そうですね・・・私も彼についてはいろいろと知りたいことがありましたので」

こうして六人はルークの家へ向かった。

ルークの家の中は埃っぽく掃除なんて全くされていないようだった。

「では手分けしてルークに関するものを探そう」

ルークの家は二階建てだったので一階をアルマ、ラウ、ルウの男三人が二階をシルフィ、ナイア、メイの女三人が探すことになった。

男三人組は現在台所を捜索中だった、台所には蜘蛛の巣のかかった食器が置いてあり人が住んでいるとは思えなかった。

「ホントに此処でルークが生活してたのか?」

「話によると二年前におじいさんが死んだらしいからそれから使われていないんじゃないかな?」

「とにかく今は手を動かせ」

そして三人は捜索を続けた。

そのころ女三人組は寝室を調べていた、寝室だけは時々使われているのか底まで汚くはなかった。

シルフィはそこで一枚の基本魔法の投影呪文を永久化させてある紙を見つけた、随分古いものらしくボロボロで色褪せていたがそこには幼いルークと思われる少年とルークと手を繋ぐ銀色の髪と金色の瞳を持った少女がいた。

だがそのルークの瞳は翠ではなく黒だった、だがその黒は幼い純粋さで輝いていた。

シルフィはその紙をばれない様に懐へしまった。

―――何やってんだろ・・・あたし・・・。―――

と毒づいていた。

その時一階で驚きの声があがった。

三人は急いで下に下りると台所の床に隠し通路のような階段が下へ続いていた。

「凄いっ!!こんな仕掛けよく解ったわね」

シルフィは驚嘆するとルウが苦笑気味に答えた。

「いやぁ・・・床が腐ってて抜けただけで・・・」

しばらく唖然としていた女三人だったが

「と、とりあえず下へ行きましょう」

とナイアが言ったので六人は下に向かって行った。

六人は少し広めの石造りの部屋に着いた、部屋はアルマの炎により明かりがともされてその姿が暗闇よりあらわになっていった。

床に書かれた魔方陣、本棚に所狭しと置かれた分厚い本、そして魔方陣の中央に置かれた漆黒の鎧とその首にかけられたブラックダイヤモンドと呼ばれる黒い結晶のついた逆十字のネックレス

「何なんだこの部屋は」

ラウが思わず声を出して聞いてしまう

その時アルマが逆十字のネックレスを見て何かを思い出した。

「ま、まさか・・・だがそんなはずは・・・いやしかしこれなら辻褄が合う・・・確かあの時の少女の名前も・・・」

「どうかしたの?」

ナイアの問いにアルマが初めての表情を見せた。

「なん、でもないで・・・す」

途切れ途切れに言った言葉でますます怪しいといった目で見るナイア

「知っているなら教えなさい・・・これは姫としての命令です」

「くっ!!・・・ですが姫様・・・」

「早く言いなさいっ!!」

いつものナイアではなく姫としてのナイアがそこには在りアルマの口調も丁寧なものになった。

「わかりました・・・姫は三つの瞳という伝承を知っていますか?」

「それは、小さい頃に書庫で見つけて読んだ事があります・・・確か何百年も前に存在した絶大な力を秘めた三つの瞳についてのことで・・・。」

「そうです・・・では何故その伝承について聞いたのか・・・三つの瞳の一つに闇の瞳と呼ばれるものがあるのは知っていますね?実は昔あったことがあるんですよ・・・その闇の瞳を持つ少年に・・・姫はこの地に昔あった国を知っていますか?」

「知らない・・・。」

「そうですよね・・・これはレーデンがまだ戦闘国家などと呼ばれてない頃の話です・・・。この地には悠久都市『ハーゼンデル』と呼ばれる都市が存在していました。今の今まで忘れていましたがハーゼンデルの城に私も招かれたことがあったのです。そこで二人の子供に会いました・・・一人は漆黒の瞳をした少年名前はティアス・・・チェスの好きな少年でハーゼンデルにいたときは良く相手をさせられました。そしてもう一人リーンというその国の姫たる少女でした。その時の我等の国宰相は傲慢な者で皇帝が病で床についておられる時にハーゼンデルに攻め込みました。当時ハーゼンデルは怪しげな研究をしているということもあり宣戦布告の理由には事欠きませんでした。そして宣戦布告から三日後・・・ハーゼンデルは何の抵抗も見せずに降伏しました。そしてハーゼンデルのリーンという姫以外の全ての国のものは殺されました。」

「し、しかしそのような虐殺があったならば私の耳にも届いているはず・・・。」

「宰相が全てをもみ消したんですよ・・・そのために全てのハーゼンデルの民まで殺して、」

「酷い・・・でもそれとさっきの話の闇の瞳とこの部屋との関係はいったい・・・。」

「その時のハーゼンデルの紋章はそこのネックレスと同じ逆十字だったんです、さっきも言いましたがティアスという少年の瞳の色は伝承にある闇の瞳の色の漆黒、そしてルークの家の隠し部屋にある逆十字のネックレス、そしてルークの名前」

「名前?」

「チェスのルークとはキャスリングと呼ばれる特殊な動きを使うことが出来ます。キャスリングとはキングを守るような形で使うことがあります。彼にとって自分への皮肉なのでしょうね・・・王を守ることが出来なかった自分への戒めの為の名前のような感じがしますから・・・チェス好きの彼が考えそうなことです」

「でもまだ無理矢理ではないでしょうか?」

その時シルフィが下を向いたまま一枚の紙を差し出した。

「ごめんなさい・・・多分これが決定的になると思う・・・。」

「これは・・・私が知っている頃の二人だ・・・何故こんなものを」

「寝室で見つけて・・・。」

「そうか・・・だがこれでハッキリした、闇の魔法使いの正体はルークだ」

それを聞いた瞬間ナイアの目から涙が一粒流れた

「残念ですが感傷に浸っている暇はありません姫様・・・もし本当にルークが闇の魔法使いならレーデンを狙うことは間違いありません」

「そうですね・・・事態を急いで収拾しなければいけませんね」

「とりあえず此処を出ましょう・・・。」




家の外に出るとルークが帰ってきているのか見えた。

「今が聞くチャンスかもね・・・。」

そして六人はルークを囲むように立った。

「な、なんだ皆・・・目が怖いぜ・・・。」

少し引き気味にルークが呟いた

「ルークに聞きたいことがあるんだが」

アルマがそう言うと即答するかのように

「聞きたいこと?学校のことはノーコメントだからな」

「違う・・・ティアス・・・まだ白を切るつもりか」

ティアスという名を聞いた瞬間ルークの顔色が変わった。

「な、何言ってるんだ・・・ティアスって誰だよ?」

「ルークか・・・チェス好きなお前らしいって言えばお前らしいのかもな」

「チェスなんか嫌いだ」

「その名前に縛られている限り前には進めないぞティアス」

そして先ほどの紙を見せ付けた、だがその瞬間ルークの目が黒くなり、回りを殺気が埋め尽くし始めた。

「何を言われてもいいが人の心の奥底に入ろうとするとはよほどその命要らない物と見えるな・・・お前らなど此処で殺してやってもいいのだぞ」

いつものルークからは考えられないほど冷酷な言葉が六人に突き刺さる。

そして一瞬の後殺気が消えて

「だからこれ以上深入りしないでくれよな・・・友達失いたくないからさ」

そう言ってルークは部屋の中に入ろうとした、その時家を中心に魔方陣が展開される。

「なっ!?これは・・・巻き込んじまったか」

と唇を噛むルーク

空がゆがみ始めて空間にぽっかりと穴が空く・・・そしてそこから五人の漆黒の黒衣を着た者が現れる。

最後に紅い鎧に身を包んだ騎士が一人現れ口を開く

「さあ・・・狩りの時間だ」


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