第五幕
とりあえず五人はアルマの所に戻っていた、先ほど少し無理に動いたので傷が開いてしまっているアルマだったが意外と元気そうだった。
そこにルークが入って来た。
「他の皆は、ここを出る準備が出来たぜ。看病は俺がしてるから荷物の整理でもしてきたらどうだ?」
ルウとメイは護衛の準備は整っているらしく大丈夫と言っていた。
だが他の三人は準備が出来ていなかったらしく荷物を準備しに皆のところへいって行った。
しばらく沈黙が続き・・・ルークは気付いたように喋りだした。
「そういえば自己紹介がまだだったっけ?俺はルーク、さっきいたシルフィって女の子に引きずられるようにここまで荷物持ちやら雑用を任された可哀相な青少年です。一応あいつ等と同じ魔法学校の生徒です」
唖然とした三人だったが不意にアルマが笑い出した。
「くっくっく・・・なかなか愉快な者だな。我はアルマ、姫より聞いていると思うが一応『朱雀』という、二つ名を持っている。もっとも今はただのお荷物の怪我人だがな」
なにやら紹介をしなければいけないような雰囲気になったのでルウとメイも自己紹介をはじめた。
「僕はルウ、レジスタンスのメンバーですがアルマさんを無事にレーデンまで送るようにエルリス様から護衛を任されたものです。」
「私はメイ、ルウと同じでアルマさんの護衛を任された一人です。」
一通り挨拶が終わりルークがおもむろに懐から紙を出した。そこには女の子の絵が書かれていた。
「質問なんですが、この娘を見たことありませんか?名前はリーンっていう娘なんです。あっ!!もしかしたらこの絵よりももう少し成長しているかもしれないですが・・・。」
三人は覗き込むように絵を見た・・・だが首を振った。
「そうですか・・・変なこと聞いてすみませんね」
少し苦笑ぎみに笑ったルークにアルマは話し掛ける。
「その娘・・・リーンとか言ったかな、そのこと君はどういう関係なんだい?」
するとルークは遠くを見詰めるような目をしてゆっくりと語った。
「俺が初めて・・・初めて守りたい、ずっと一緒にいたい、そう思った娘です。」
「わかった・・・レーデンへ着いたら部下に命じて探させよう、だが聞かせてくれもし見つからなかった場合は君はどうする?」
その言葉にルークは即答する。
「何年掛かっても探し出します。その娘を探し出す為なら俺はどんな事だってやってみせる、汚い仕事だっていくらだってやってやる、命差し出せと言われたら差し出してみせる。」
ルークの目に宿った本気の瞳、翠の瞳が一瞬黒くなったように思えた。
「その決意・・・しかと受け取った。その心を忘れるな・・・ところでふと思ったのだが、君は何故紙に書いて見せるんだ?魔法で映し出せばより鮮明に分かるはずだが・・・。」
その質問に困ったように答えた。
「実は俺、魔法が使えないんです。」
ルークの言葉に三人は固まった。無理もないだろう、魔法学校という所は文字通り魔法を教えるところで、詠唱などは始めに系統ごとに教える教員が替わりはするが、映像を映し出したり、動かない物体を宙に浮かせたりするどの系統にも属さずどの系統でも使える基本魔法と呼ばれる魔法は関係なしに教えられるものなのだ、それが使えないと言うことは魔力がない・・・つまり魔法が使えないと言うことであってルークの言ったことは単純明解なわけだ。だが魔法が使えないと言うことは、魔法学校の生徒としては、あってはならないことであり三人は単純に驚いて固まったわけだ。
硬直することおよそ三十秒いち早く精神の世界から帰ってきたアルマはルークに疑問をぶつけた。
「ではどうやって魔法学校に入った!?」
「う〜ん・・・何ででしょうか?」
あいまいな言葉を話すルークにアルマは少し苛立ちを覚えつつもう一度聞こうとしたときだった。
ガチャっという音とともにエルリスが入ってきたのだ。
「アルマ傷の具合・・・ん?どうしたんですか?」
苦笑した青年が一人と青年に少し苛立ちながら喋ろうとするアルマ、その後ろで固まっているルウとメイおおよそ何があったのか見当もつかないエルリスが呆然としていると
「あっ!!エルリスさんが来たみたいですのでお邪魔になるといけないんで帰りますね」
そういい残してルークは素早く部屋から出て行った。
「待てっ!!」
とアルマが言った時には足音がかなり遠のいていた。
「すみませんアルマ・・・状況が読めないのですが」
「気にするな、それよりエルリス何故ここに来た?」
「あぁ伝えたいことがありました・・・また闇の魔法使いが出でました」
「何処に出たっ!?被害は!?」
「出た場所は先ほどの戦闘が行われた場所で・・・被害はこちら側にはありません。」
「こちら側?」
「今回奴の犠牲となった者はブルードラゴン一体で、それも驚いたことに奴はルウ達五人を庇うようにしてブルードラゴンの雷のブレスを防いだそうです。その後奴は傷一つ負うことなくブルードラゴンをたった一人で倒したらしいです。」
「ブルードラゴンをたった一人で・・・傷一つ負わずに・・・と言うことは奴の実力は少なくとも我やお前と同等はあると言う事か・・・。」
「そうみたいですね・・・今部下達に奴の正体について調べさせているところですが、あまり期待はしないほうがいいでしょう」
二人は溜息を吐く
「今のところ奴の行動は不可解すぎるな」
「あぁ・・・私の部下とあなたの部下それらを殲滅したと思ったら、今度は私たちを助ける・・・。」
「敵か味方か・・・あるいはそのどちらでもないか・・・。」
「ですが結論を出すにはまだ早いですね」
「そうだな・・・ところでそこに固まっているお前の部下・・・こちらへ呼び戻さなくていいのか?」
「あっ、忘れてました」
そういってエルリスは二人に近寄ると声をかける。
「二人とも起きなさい・・・というよりも帰ってきなさい」
何度か呼びかけているうちに二人が動き出した。そして動き出すなりルウが声をあげた。
「エルリス様っ!!・・・ル、ルークは何処に・・・。」
「その前に状況を説明して欲しいんですがね」
代わる様にメイが話し始めた。
「ルークが魔法使えなくて、でも魔法学校の生徒で・・・。」
「良く分かりませんが・・・まだ詠唱を覚えてないのでは?」
「違うんですっ!!基本魔法が使えないんです」
”そんな馬鹿な”という目でアルマを見るがアルマは頷くばかりだった。
「それは・・・ありえませんね、どんな魔法学校への入学にしても魔力があることが絶対条件ですし・・・。」
「僕とメイがルークについて皆から聞いてみます。」
「・・・頼みました。ですが決して無理はするんじゃないありませんよ、あなたはもちろんそのルークという青年に対してもね、ではそろそろ荷物を持って第一ゲートへ行きなさい、あなた達以外にはもう伝えましたから」
「「わかりました」」
と息を合わせて返事をして二人は部屋を出て行った。
「さてアルマ、あなたもその青年には注意を払っていてくださいね」
「言われるまでもないわ」
そう言って傷だらけの体を起こしてよたよたとアルマは歩いていった。
「ホントに・・・何も怒らなければ良いんですがね」




