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第十七幕

黒い雲が戦場の上空に渦巻き始める、その様子はまるでこれから起こる災厄を予兆しているようだった。そしてその雲を見上げたランスが小さく呟く。

「ヘルの馬鹿野郎・・・。」

そして四人を護衛するランスの攻撃が一段と荒々しくなった。




「あの大戦を治めた『崩壊の一週間』を作り上げたという三人の一人の魔女、少々弱すぎてがっかりしていたのだがやはり力を隠していたか、これなら楽しめそうだな」

ゲイドは口元を歪めながら黒い瘴気に覆われているヘルの方向を眺めながら呟いた。次第に瘴気は消え失せ一人の女性が立っているのが見え始めた。が、ゲイドは現れた女性、ヘルを見て驚きと苦笑を織り交ぜた顔でヘルの肩に目をやった。肩には引き締まった身体をした黒猫が一匹座っていた。

「ね、猫如きにあの大層なセリフを・・・長ったらしい謝罪を呟いていたのか、ア、アハハハハっ!!」

堪えきれないと言った様子でゲイドは爆笑し始める。

「我を猫と愚弄するのか?人間風情が、少し恵まれた性能があるだけでつけあがりおって・・・」

少しトーンの低い声が辺りの空気を震わせて響く、その声はゲイドのものでもヘルのものでもなかった。

「誰だ?」

ギロリと周りに睨みを聞かせるゲイドだったが周りには二人以外誰もいない。周りを見ているうちに不意にヘルの肩にいた黒猫と目が合い、黒猫がニヤリと口元を吊り上げる。

「何が人間風情だ、下等な猫がっ!!」

叫ぶと同時にゲイドが駆け出そうとするのをヘルが影の短剣を足元に放って牽制する。と同時に言葉をつむぎ出す

「私の召喚に応じていただきありがとうございました。」

その言葉は二つの意味を持っていた、一つは黒猫に対する敬意、もう一つはゲイドの無視及びもはや眼中にないという無言の圧力

「形式的な言葉はよい、して今回が二度目の召喚となるが、お前の決心がついたと考えていいのだな?」

しっかりと頷くヘル、この光景を黙って見ていたゲイドは二人のやり取りに何故か悪寒が走った。

―――フ、フハハ・・・震えが止まらぬわ、待っていた、待っていたぞこの感覚、人魔六神の一之神にやられた肩の傷が疼くぞ・・・。―――

「では、確認するぞ。我との契約前回の時はお前の器としての力を見ると言うことで一週間の間のみしか我が力の全てを宿らせることは出来なかった。だが今回は完璧にその身体に我が力が宿ることとなろう、それは前回とは違い一生の間力を宿らせることとなろう。だがそれにともない前回一週間の間だけだった破壊衝動、殺人衝動そして精神汚染が一生お前について回ることとなる。それを理解したうえで力を求めるならば、契約の言葉を言うがよい」

すると一呼吸置いてヘルは言葉を紡ぐ

「この世の狭間より来たりし奈落の化身よ、その貪欲なる意思と力を我に与えたまえ。」

そしてヘルを中心とした半径五百メートルの世界が、空間が暗転した。




影を操りながらティアスは自分の首に付けてある逆十字のネックレスが怪しく光っているのに気付いた、思い当たることはたった一つだけ、ヘルかランスかその両方が召喚を行ったという事だ。幸い背に隠れているリーンにはネックレスが見えていないらしく気付いていない。

―――だけど・・・召喚をするってことは、かなりやばい状況に陥っているってことか・・・―――

そして頭の中にひとつの単語が浮かび上がる

『崩壊の一週間』

これは三人の罪、自分の使っている力を制御し切れなかった過去の自分の象徴、そして消えることのない傷跡

そこまで考えてティアスはギュッと歯を食いしばる。

「三年前には扱えなかった力、二度と使わないと決めた力、もしそれが開放されるんだとしたら俺は・・・ヘル、ランス、あんた達をリーンの敵と見なして殺さないといけないよ」

その声はいつものような覇気がなく、歳相応ともいえない幼い言葉で、とてもとても弱いか細い声だった。

ふと背後でリーンの温もりを感じる、それが満身創痍のティアスのエネルギー源であり唯一無二の心の拠り所だった。そして少し気が飛びすぎて影が思ったとおりに動いていなかったのか数体のゾンビがすぐ近くにまで迫ってきた、それを足元から出た影の針が刺すのではなく薙いで弾き飛ばす。

「やっぱりさどんなものを捨てても一番だけは護りたいんだ、大切なものはそれこそ星の数ほどあるし誰も本当は殺したくない、昔の俺はこんなことなんて考えもしなかったのにな。」

その言葉は周りにいるリーンやゾンビに当てられたものではなかった。

「あぁ、確かに昔の俺は本当に弱かったさ、それこそ一般人と変わらないほどにね。なあゲオルド、俺は君と言う力を手に入れたからこそこんな事を考えるようになったし、少し前までは君の身体を剣という形にして使っていたから君を身近に感じていたんだと思う。それでも君は一番じゃなかった、だって一番は彼女って決まっていたからね、だから俺は一度君を捨てて彼女の為に頑張ったんだ。確かに君という最大戦力を失ったのは俺にとっても苦しくて悲しくてとても辛かった、でもそれ以上に彼女との約束を護ることの方が俺には意味があるように考えられた・・・でも、いつからだろうな自分の力不足に嘆き始めたのは、魔眼と称されるこの闇の瞳に更なる力を求め始めたのは、ホントにきっかけは偶然だったね。勝てるはずのない戦い、倒れていく仲間だった人達、こんな極限の状況下だったからこそ全てを犠牲にしてでも生きたいって思ったんだと思うね。だってそうじゃなかったら本当の君を姿を見ようと考えることはなかったと思うからね。で、あの時から俺には罪を背負う為の二つ名が付いたんだと思う『魔王』っていう二つ名がね。なあゲオルド・・・君はどう思う?剣であり固有の個体である君が返答してくれるなんて思うほど流石の俺も狂っちゃいない、だけどもし今の俺の考えを聞いて答えてくれるとしたら君は何て答えるかな?この『全てが欲しい、そのために力を使いたいけど一番がそれを嫌っている』なんて他愛ない質問をさ・・・。」

一人で話し続けるティアスに不安を感じたリーンはティアスを振り向かせようと肩に手をかけた、ところがティアスはいきなり不気味に笑い始めた。

「クックック・・・そうだよね。剣には意思がない、だがそれを振るう者そのものの意思こそが剣の意思、単純なことだけどすぐ忘れる。なら俺はもう迷わないよ。善も悪も関係ない俺の前、俺の前に立っている全てのモノが俺の破壊対象なんだよね」

そこまで呟き終わるとティアスは振り返りリーンの額に指をつける。

「リーン・・・少しの間だけ目を瞑っていてくれ」

そしてリーンの反論を聞かないうちに指先は淡く光りリーンは眠った。

「さてと、答えはもう出た。俺は君と同じで強欲で掴みきれないって分かっていても掴んでしまうからね、じゃあ来てくれ魔剣『ゲオルド』」

するとトプンと水に何かが落ちるような音とともに影から一本の漆黒の両手剣が現れた。

―――俺の予想ならランスは召喚なんて馬鹿な事はしない、ランスもきっと気付いてるその時にあっちにいる奴らにリーンを任せて、二人でヘルを止めに行くっ!!―――

そこまで考え両手用の剣である魔剣を片手で振り上げる、その動作の途中に物凄い量の魔力が刀身の玉の一つに注がれた、そして刀身についている小さな玉の一つが紫に淡く光る。と同時に振り上げた魔剣を強引に地面に振り下ろす、その瞬間魔剣の先端から黒い三日月型の衝撃波がゾンビ達を蹂躙する。一瞬の沈黙の後その場には荒々しく地面が抉れた後しか残っていなかった。

魔撃二式まげきにしき・・・。」

小さく呟くと傍らに眠らせたリーンをまるで割れ物を扱うように優しく抱きこみランスのいるであろう場所に走っていった。




「じょ、冗談じゃない・・・情報じゃ魔王は傷だらけって聞いていた。それなのにたった一振りで僕のゾンビ達を駆逐してしまうなんて・・・。」

遠くの方でゾンビの視界を通してティアスを見ていたドニオンは唸るように言った。

「しかし何なんだあの剣?あんなの魔王のデータには載っていなかった・・・!?もしかしてあれが『崩壊の一週間』を作り出した・・・たった五十人の魔法使い達が組織に敵対する国の二万の軍勢との交戦で戦力差を一気にひっくり返したと言われる三人の中で最強称される魔王の秘密なのか!?」

そこまで考えてドニオンは思考を中断させる。

「人魔六神に応援を求めなければ・・・こちらが負けてしまうかもしれない・・・。」

そこまで考えドニオンは一体のゾンビに走り書きした手紙を渡し影で組織に送った。

「しかしこれで分かるかもしれないな・・・何故あの三人が闇系統の魔法使いの中で群を抜いているのか、これが分かれば僕の実力も神に近づけるかもしれない・・・。」

そしてドニオンは醜悪な笑みを浮かべた。

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