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第十三幕

四大将軍であるザックル、ハザンの敗北はレーデンの兵士達の戦意を喪失させるには十分すぎた、異様な敵、全貌の見えない組織、圧倒的な力、恐怖の種は新たな恐怖を生み経った半日で兵士達の間には嫌な空気が蔓延していた。

ザックルは体には傷を負わなかったのでまだ良かったが問題はハザンの方だった、命に別状は無いものの決して動けるような体ではなかったためレーデンはハザンという、持ち駒を一つ失う事となった。

そして森で陣を構えていたアルマにもその情報は伝えられた。




「馬鹿なっ!!」

怒号とともにテーブルに手を打ち付ける音がテントから漏れる、息の荒い若い男をアルマは黙って見据える。

「馬鹿など言っておらん・・・私は今回襲ってきた奴等が本当に敵だったのか分からないと言っただけだ」

「それがおかしい事だと言っているんですっ!!現にこちらには怪我人も出ているんですよっ!!」

若い男は幾分頭が冷えてきたのか声の大きさがだんだん絞られてくる。だがそれでもアルマに対して抗議の眼差しを止め様とはしない。

「ヘイルお前の言っていることがわからないと言っているわけじゃないぞ、ただもう少し情報を正確に掴み取れといっているだけだ」

「話は・・・もう終わりですか・・・。」

「いや、兵士達にすぐに闘える用意をしとくように言っておいてくれ・・・私の勘だと・・・敵がくるのは夜だ」

「分かりました・・・。」

ヘイルと呼ばれた若い男は一礼してテントから出て行った、アルマはそれを見届けるとテントの脇に置いてある槍を手に取った。

「我が部隊は五百・・・敵はどの位だろうか・・・。」

そう呟くとアルマもテントから出て行った。




ナイアはシルフィとラウを連れて地下の収容施設に来ていた、目的はスレイスに会う為だ。

警備をしている兵士に一回一回丁寧に挨拶をしてナイアは進んでいった。

案内されたのは、白い大きな部屋だった。責任者のような兵士に待つように言われて待つこと数分、突然前方の扉が開き五人の兵士に連れられるようにしてスレイスが出てきた。

「しかし姫様は何故このようなところへ?」

と言う責任者のような兵士の質問に対して

「私用です」

と簡単に答えた。

「こんにちはナイア嬢、この私に面会とは物好きですね」

「物好きで結構ですよ・・・さて、本題に移ります。これから貴方をここから出します、約束でしたしね。しかしここを出るにあたって三つの制約がかせられうことになりました。一つ目は、私の監視下に入ること、二つ目は、無断での魔法の使用を禁ずること、三つ目は、無断での戦闘行為を禁ずること・・・これらを守っていただけますか?」

「フッ・・・守らないと出られないのでしょう?なら守りますよ」

とスレイスは微笑を浮かべて答えた。

その後ナイア、シルフィ、ラウ、スレイス等四人は各種の手続きを分担して済まし城外へ出て行き街へ向かった。




街の中央にある宿屋の一室に青年が一人死んだように眠っていた、青年の周りには心配そうな顔を浮かべる者が三人いた。

「ティアス・・・目を覚まさないね」

ヘルがか細い声で言った、その言葉にランスとリーンが俯いた。

「私の・・・私のせいです・・・私が不用意に近づかなかったら・・・。」

「姫様のせいじゃないぜ・・・ティアスだってすぐに目を覚ますさ」

そして部屋に沈黙が訪れる、誰一人として喋らない空間がこのまま続くかに思えたときだった。

「うぅ・・・ん?ありゃ?何で宿で寝てるんだ?」

その言葉にリーンは顔を輝かせる、そしてヘルとランスが安堵の表情を浮かべる。

「ティアスっ!!良かった・・・本当に良かった、死んじゃうかと思ったよ・・・。」

リーンが嬉しさのあまり抱きついてきたので、ティアスは固まる・・・そして身体中の血液が顔に集まったのではないかというくらい顔を赤く染めた。

「リ、リーン・・・ち、近いぞ」

全ての力を振り絞って言った言葉にリーンは冷静さを取り戻し改めて自分の行動を考えてみる・・・身体は密着し顔はかなり近く相手の息が届く・・・今度は逆にリーンが顔を真っ赤にし後ろに飛び退いた。その光景を「微笑ましいねぇ・・・。」とヘルとランスが笑っていた。

その後リーンがご飯を買ってくると言って、護衛にランスが着いていった。ヘルと二人っきりになると突然ヘルがティアスの包帯を変え始めた。

「ティアス・・・姫様を思うのはいいけど痛いときは痛いって言わないと・・・」

そして包帯の背中の部分にはかなりの量の血が滲み出ていた。

「何時から気付いた?」

「あのねぇ・・・姫様に抱きつかれた時に脂汗を垂らしてたら誰だってわかるでしょ」

そう言いながらヘルはティアスの包帯を替え終える。

「今回の戦い、言いたいことはたくさんあるけど・・・その傷なんだから無理だけは、しちゃ駄目だよ」

「分かってる・・・だけど、リーンに危険が及んだ時は・・・。」

その時ティアスの目に何かが宿ったのをヘルは見逃さなかった。

「大丈夫・・・そうなったら私・・・優しさを捨てるから」

と言葉の裏に大きな悪意を隠してヘルが答えた。

そして扉が開く音がした。

「美味しそうなものがいっぱいあったよっ!!」

とリーンが嬉しそうに語った、見ていたティアスとヘルの顔も自然に緩んだ。

遅れてランスがやって来た時には、夕食が始まっていた。

そして食べ終わった四人はさっきまでとはうって変わって真剣な顔つきになる。

「組織の行動パターンから敵が現れるのは零時だと思う」

ヘルの言葉に三人は頷いた。

「零時まで後三分・・・一体何が起きるんだろうな」

ランスが生唾を飲み込みながら問うが答えは誰からも帰ってこない。

「では行きましょう」

リーンの言葉に三人は頷き、四人は宿屋を後にした。




そして零時・・・轟音がこの地域を包み込んだ。


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